福島第1原子力発電所を訪問したIAEAのグロッシ事務局長(7月)=ロイター
【ウィーン=田中孝幸】国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は22日、日本政府が24日の開始を決めた東京電力福島第1原発の処理水放出について「アプローチと活動は関連する国際安全基準に合致していると結論付けている」とする声明を公表した。
IAEAとして放出開始後も公平で客観的な安全審査を続けることを約束したと指摘。「IAEAの職員は安全基準に適合しているかどうかを監視・評価できる」と述べ、現場で得られた監視データを速やかに公開する方針を示した。
IAEAは7月に出した包括報告書で、処理水放出に関し「人々と環境への放射線影響は無視できる程度だ」と評価した。グロッシ氏は今後数十年に及ぶ放出作業を見届ける考えを表明していた。
原発処理水 東京電力福島第1原子力発電所からは2011年の東日本大震災に伴う事故の影響で、放射性物質を含む汚染水が出る。この汚染水から浄化処理で大半の放射性物質を取り除いた水を処理水という。地下水や雨水などが建物内の放射性物質に触れたり、事故で溶け落ちた核燃料を水で冷却したりするため、高濃度の放射性物質を含む汚染水が1日平均で130トン程度発生している。原発処理水は敷地内の1000基を超えるタンクで保管され、廃炉作業の妨げとなっている。
<2022年5月19日掲載>
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日経記事 2023.08.22より引用