テスラの欧州唯一のEV組み立て工場(24年12月、独ベルリン郊外)=AP
【フランクフルト=林英樹】
欧州で米テスラの販売が低迷している。域内最大市場のドイツの1月の販売台数は前年同月比で6割減った。英国やスウェーデンでも大幅減だった
。法人販売が減っているほか、極右政党支持を表明するイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の政治的言動が影響した可能性がある。
独連邦自動車局(KBA)によると、1月のテスラ販売は1277台だった。購入補助金停止の影響で電気自動車(EV)需要が低調に推移していたが、1月のEV販売全体は54%増の3万4498台で、テスラの一人負けとなった。
英国でも同様だ。英自動車工業会(SMMT)によると1月のEV販売全体は42%増だったが、テスラは12%減だった。スウェーデンは44%減、ノルウェーも38%減だった。
法人向け販売が苦戦
原因のひとつは法人向け販売の苦戦だ。値引きによって新車のリセールバリュー(再販価値)が下がり、一定期間後に中古車市場に売却する社有車やレンタカー会社の保有車でテスラ車を避ける動きが広がった。
独レンタカー大手Sixtは24年にテスラ車の新規購入を取りやめた。他のレンタカー会社も保有するテスラ車を売却している。供給増から中古車価格が下落し、新車が売れにくくなるという悪循環が起きている。
モデルチェンジの影響もある。テスラは25年1月から多目的スポーツ車(SUV)「モデルY」の改良版の受注を始めており、欧州で買い控えの動きが強まった。
一部で不買運動も
無視できないのがマスク氏の政治的言動に対する反発だ。2月23日のドイツ総選挙を前に、マスク氏はドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の支持を表明した。
マスク氏がAfDのワイデル党首とX(旧ツイッター)上で対談した1月9日以降、ドイツの大学・研究機関は相次ぎマスク氏が経営するXの利用停止を表明した。
テスラは独ベルリン郊外にある欧州唯一のEV組み立て工場で拡張を計画するが、水資源への悪影響を懸念する地元住民や環境団体の反対運動が続いている。

英国でもマスク氏は右派政党「リフォームUK」への支持を表明している。極右活動家の釈放を求め、スターマー政権への批判を繰り広げている。ポーランドの閣僚はテスラの不買運動を呼びかけた。
「労働組合嫌い」を公言するマスク氏はスウェーデンで同社従業員の賃金・福利厚生に関する労働協約の締結を拒否し、23年11月から修理工場でのストライキやテスラの不買運動が続いている。
テスラ忌避の動きはEV先進地域である北欧全体に広がっており、影響は小さくない。