その1からの続きです。
● 静かな本村地区
海沿いにある直島の本村地区。
のぞき込むと、透けるように美しい海です。
美しさに惹かれて、浜辺に出ました。
南の島に来たみたい。ここもまあ南ですけど。
ゆるやかな風が吹き、ゆっくりと波が打ち寄せるだけ。
町はとても静かです。どの道を曲がっても、人の気配がありません。
みんな、消えたわけじゃないわよね?
ちなみにこれが、地区一番のメインストリート、バス通りです。
役場があるこのエリアは、島の行政の中心地ですが、やっぱり人けはありません。
● 直島八十八か所巡り
小さい島ですが、神社やお寺が結構あり、島民の信心深さを感じます。
小豆島のように、直島にも八十八か所巡りができるようになっています。
ここがその第一札所。直島で1番大きなお寺、極楽寺です。
お堂の前で、こんなやさしいお顔をした羅漢さんが迎えてくれました。
お賽銭箱の場所にあるからか、コインがちょっと入っています。
でももともとは、火鉢だったんじゃないかなあと思います。
● タレルと忠雄
うねうね歩いていると、シンプルで大きな漆黒の木造建築館の前に着きました。
看板を見て、これは家プロジェクトの一つ「南寺」だとわかります。
内部にアメリカのアーティスト、ジェームズ・タレルのインスタレーション・アートを設け、それに合わせた寸法で安藤忠雄が建物を設計したとのこと。
つまり、安藤忠雄とジェームズ・タレルの合作なんですね!
現代美術はよくわかりませんが、「光の芸術家」と呼ばれるタレルの作品は好きです。
かつて新潟県十日町にある、彼デザインの「光の館」に泊まったこともあります。
うーん、この建物の中もどうなっているのか、知りたいわ~。
興味津々ですが、今は会期外なので、中は見られません。残念。
南寺
そのすぐ近くにあるはずの安藤忠雄ミュージアムを探しましたが、まったく気づかずに通り過ぎてばかり。
通りを何度か往復して、ようやく見つけました。
安藤忠雄ミュージアム
見るからに普通の家っぽいので、ほかの周りの家や景色にとけ込んでいて、気がつきませんでした。
ここも月曜休館。閉まってる~。
● ツバメと私
近くの軒下のツバメを見て(あ、生物がいた)と心を慰めます。
人間に全然会わないので、この世にいるのはこのツバメと私だけなんじゃないかという気にもなってきます。
板壁や扉にホワイトで縁取りや文字を描きこんで、POP感を出しています。
手作りアート感満載の島。
これは・・・ピカチュウはじめ、いろいろなものが草間彌生バージョンになっています。
赤カボチャと黄カボチャの、直島仕様ですね。
ドットを描きこむだけで草間彌生っぽくなるのが、彼女のすごさだわ~。
港の近くの、カフェ・コンニチワ。
ありそうでない名前です。
● フェリー乗り場へ
さて、そろそろ桟橋でフェリーを待とうと、本村港に向かいました。
もくもくと巨大な泡が立っているような場所があります。あそこがフェリー乗り場?
今にも爆発しそうです。
中をのぞいてみました。でも誰もいません。
中から外をのぞいてみました
そろそろフェリーが来る時間なので、誰かしら待っていてもいいのに。
そんなに小さな乗り場なのかしら。
● のがした・・・!
貼られたフェリー時刻表を見ると、13時台の発着時間はなく、12時半と書かれています。
えっ、どうして?
驚いて腕時計を見ます。時間は12時40分。
出発は13時だと思いこんでいましたが・・・私のチェックミスのようです。
10分前に、フェリーは行ってしまいました。
海を見ても、もう影も形も見えません。
ああ、どうしよう。
落ち着いて考えようと思いますが、次のフェリーは17時。
東京行きのフライト時間よりも後になるため、これはありえません。
となると、来るときに下船した宮浦港に戻るしかありません。
宮浦港発の便で、間に合うものがあるかはわかりませんが、とにかくここにいても可能性はゼロ、事態は改善しません。
イチかバチかの可能性にかけなくては。
● バスに飛び乗る
とすると、宮浦港まではバスに乗らなくては!
バスもそうそう来るわけではありません。
バスの時刻表を見ると、12時43分に最寄りの本村港バス停前を通るとのこと。
今は42分!あと1分!!
脱兎のごとく、ダッシュします。
足がだるいなんて、言っていられません。
しかし、最寄りのバス停がどこにあるのか、よくわかりません。
バス通りに出てきょろきょろしていると、宮浦港行きバスがやってきました。
えー、どうしよう!バス停見えないよ!
あせっておろおろしているうちに、バスは無情にも私の前を通り過ぎました。
ああ、間に合わない、行っちゃう・・・。
悲しい気持ちでバスの後ろ姿を目で追っていると、25mほど先に行ったところで、バスが停まりました。
あ、あそこがバス停だったんだ。今停まってるのなら、もしかしたら乗れるかもしれない!
一縷の望みを持って、バスに向かって走り出します。
バスは、私が乗るまで待っていてくれました。
バス停でほかの人が待っていた様子はありません。行きの時は、誰かが降車ボタンを押さない限り、無人のバス停に停まることはなかったので、バスの運ちゃんは、私が乗りたがっていることを察知して、停まって待っていてくれたことになります。
私の必死の形相からメッセージを読み取ってくれたのかもしれません。
ありがとう!!助かりました!!!
そんなこんなで、ラッキーなことに、ちょうどやってきたバスに乗れたので、スムーズに宮浦港に戻ることができました。
ただ、宮浦港発のフェリーは、12時45分に行ったばっかり。次の便は13時25分です。
岡山駅で少し空き時間を設けてあるので、そこで遅れを調整できればいいのですが、問題は直島フェリーが着く岡山の宇野港から岡山駅までの電車の便。
1時間に1本ほどしか通らないのです。なので、1本遅れたら致命的。
港への島内バスは滑り込みセーフでしたが、岡山へのフェリー、港から岡山駅までの電車、そして岡山駅から空港までのリムジンと、自分のフライトに間に合うかどうかの息詰まる調整はまだまだ必要です。ああ、生きた心地がしません。
● インフォメお兄さん
自分で空港までの交通ルートを調べても、とにかく気が動転していて頭が周りません。
困って、フェリー乗り場にある観光案内所のブースに行き、ヘルプをしました。
係の人は「岡山駅に行くルートは、電車のほかにバスもあるので、調べてみますね」と言ってくれました。
その間が、とても長く感じました。
もし行けるルートがなかったらどうしよう。今回のフライトはJALの「どこかにマイル」で、変更がきかないものだったはず。ああ弱ったな。
昨日参拝してきたばかりの金比羅さんに、心の中で助けを求めます。
(さっそく?)(こんなことで?)とどこからか声が聞こえてきそうですが、私にとっては一大事です。
自分が青ざめているのがわかるし、蛇を絞めたような声しか出なくなっていますが、観光案内所の人はすこぶる落ち着いています。
これまでいろいろな旅人のアクシデントを目の当たりにし、修羅場を見ているので、あわてないのでしょう。
少しして、係の人が「港到着10分後に、岡山行きの特急直行バスが出ます。それだと大丈夫です」と教えてくれました。
ああ、よかった。係の人のおかげで、バスがあるとわかりました。
ネットが通じるとはいえ、頭の中が真っ白の時にはいいアイデアなんて浮かばないもの。
第三者のおちついたアドバイスが、本当に助かりました。
● I💛湯
次の出航時間まで少し間があるので、その間に平常心に戻ろうと、辺りを散策することにします。
港のすぐそばにある「I💛湯」という銭湯を見に行きました。
I💛湯
南国っぽい、なんとも独特な、遊び心いっぱいの場所。
内装も面白いらしいのですが、月曜日はお休みで、シーンとしていました。
この日はこればっかり…。
● 高速船
これ以上船に乗り損ねると、もうあとはないので、早めに乗り場に向かいます。
次に乗るのは、フェリーではなくぐっと小さな高速船。フェリーには車や自転車も詰めますが、高速船は人しか乗れません。
いの一番に乗船しましたが、客室内には入らず、出口の一番近くに座ります。
高速船
フェリーよりも速度を出せるのか、5分早く15分で岡山に着きます。
船旅は楽しいものですが、さきほどのショックから抜け出せません。
値千金の打開ルートを教えてもらえたものの、まだ緊張が解けない浅い息のまま海を越えて、岡山の宇野港に到着。
実は、もともと予定に入れていた宇野港駅発の電車が、13時41分に出ます。
高速船は宇野港に40分に到着予定。
さすがに1分は厳しすぎるだろうと思いましたが、高速船は予定より2分速い、38分に着きました。
電車の発車まで3分あります。もしかしたら、間に合うかもしれません。
● 駅に猛ダッシュ
乗り慣れた人たちが下りる手順にならって船を下り、そこからダッシュ。
駅に向かって、猛然と走り出します。
といっても、昨日こんぴらさん参拝をして弱った足で、おみやげで行きより重くなった全荷物をしょってのことなので、大した追い込みはかけられません。
それでも足は止められません。
初めての場所ですが、地図を見る必要もないほどわかりやすい道だったので、助かりました。
駅が見えてきたので、ラストスパートをかけます。改札でPasmoが使えるのも、追い風となりました。
電車はまだホームに停まっています。転がるように駆け込みました。
● 予定通りに
あー間に合ってよかった。ほっとして、空いている席に座ります。
すぐには息切れは収まらず、しばらく肩で息をしながらハーハー言っていましたが、落ち着いて辺りを見回すと、周りに座っているのは、かなりの確率で外国人観光客だとわかりました。
みんな、直島など瀬戸内の島からの帰りでしょう。
先ほどの高速船からダッシュしたのは私一人。おそらく、私が乗り損ねた本村港発のフェリーか、一本前の宮浦港発フェリーで宇野港に着いた人たちでしょう。
間に合って安心しました。これでプラン通りになりました。
こんぴらさん、どうもありがとうございます。
● 原因判明
今回、こんなハプニングに見舞われたのは、私が本村港発のフェリーの逃したのが原因です。
それは、出航時間を間違えたからだと思いましたが、そうではありませんでした。
私が持っていたパンフのフェリー時刻表には、13時発と書かれているのです。
ただ、実際は12時半発でした。
今は月初めなので、6月になったタイミングか、芸術祭がお休み期間になったタイミングで、フェリーの時間が変わったのではないかと思います。
旅行前に時刻表をプリントしていましたが、5月中のことで、古い情報だったのかもしれません。
電車やバスは、ネットで日時を指定したルート検索ができますが、フェリー用にそうした機能はないため、最新の時間をチェックするのは難しいものですね。
パンフには、時間が変更になる予定だとは書かれていませんでした。
もちろん、私が本村港に着いたときに、まずフェリー乗り場に行って時間を確認しなかったのが、一番いけなかったのですが。
まさか時間が変更になっているなんて思わなかったからで、そこに大きな落とし穴がありました。
ああ、恐ろしい思いをしました。今後フェリーに乗るときには、時間には要注意です。
● JR乗り換え
さて、ドタバタの果てにめでたくプラン通りになり、JRに乗りながら落ち着きを取り戻しているうちに、終点の茶屋町に着きました。
茶屋町って、大阪にありそうな駅名ですが、たぶん天下茶屋が頭にあるからでしょうね。
ここで電車を乗り換えます。これまた時間の組み合わせにより、スムーズに行かないときもあります。
乗り換えた瀬戸大橋線も1時間に2本。私の乗る電車の次は、快速マリンライナーがやってきます。
高松から瀬戸大橋を超えてくる電車です。
両方の駅を結ぶのは、これが一番速くて便利なルートですが、今回のようなゆったりを楽しむ旅の場合、便利さは味気ないですからね。
ゆっくりのフェリー旅を選びました。(今回のように1本逃したら大惨事ですが)
● 岡山駅フリータイム
あっという間の時間のようでしたが、それは私が気が動転していたからで、実際には50分ほど乗って、岡山駅に到着。
さて、本当なら、初日に食べ損ねたフルーツパフェを食べに行くところですが、ちょっと考えが変わりました。
空港バスの発車時間まで40分。その間に喫茶店へ行き、フルーツパフェを注文し、作ってもらい、食し、また駅に戻って、チケットを買って、バスに乗る。
これを40分でやるとなると、相当せわしなくなります。
時間に気を取られて肝心のパフェを味わえなさそうだし、無関係の人まで急がせることになったらご迷惑。
なので、パフェはやめることにしました。
でもせっかく果物王国に来たので、フルーツはあきらめたくありません。
● フルーツのお勧め
そこで、初日と同じ観光案内所に行きました。
2日前と同じおばさまが応対してくれました。ほかにもスタッフはいるのに、当たりがよすぎ・・・。
「30分間で岡山のフルーツを味わえる場所、近くにありませんか?」
すると「飲むのなら、そこの駅ビルを入ったところにフルーツジュース店があります」と教えてくれました。
私もチェックしている花いちご。
やっぱりここなのね。よし、ここにしましょう。
● キムラヤのパン
パフェをあきらめたことで少し時間が出来たため、キムラヤのパンも買うことにします。
空港にキムラヤパンコーナーがあると聞き、同僚へのおみやげパンはそこで買うつもりでしたが、ここで買ってもいいわけで。
同僚たちにはリクエストを受けたたくあんと高菜、自分には肝を冷やして血糖値が下がった気がするので、チョコクリームとアップルデニッシュを。
香川では毎日うどんを食べていましたが、岡山ではフルーツよりも毎日キムラヤパンを食べています。
● メロン生ジュース
さて、パンをゲットしたのちは、花いちごへ。
赤肉メロン、イチゴ2種、桃、ミックスジュースなどが並ぶ中で、メロンにしました。
初日に食べ損ねたフルーツパフェに大きなメロンが乗っていたからです。
甘くておいしーい🍈💛
今回の旅は、岡山空港発着なのに、気づけば香川メインの旅程になっていたので、これが貴重な岡山体験です。
フルーツ王国を味わうためには、ジューススタンド利用するのも気軽でいいかも。
● 空港バス
メロンジュースを片手に、空港バスの乗り場へ向かいます。
バスはすでに到着しており、一番に乗り込みました。
発車時間が来てもそれほど人はおらず、乗客5人で出発。
予定よりも一本速い便に乗りました。
最後の最後で空港に遅れるわけにはいきませんからね。
行きとは違うバス会社で、ICカード払いはできないものの、シャンデリア風ライトがある、贅沢感のある車内です。
岡山ではあまり写真を撮りませんでした。
車窓越しにすてきな景色が見えないかと、最前列でスマホを握りしめていましたが、特段何もないまま、空降に到着。
● 空港パンコーナー
早めに着いたので、気持ちに余裕があり、おみやげ屋さんをゆっくりチェックします。
キムラヤパンのコーナーをのぞいてみると、なんと残念なことに、主要ものは全て売り切れ。
バナナクリームも高菜もたくあんもありません。
変わりものお総菜系ながら、やはり人気があるのね・・・
画像をつけて、粛々と同僚たちにメール報告します。
「なぜだろう。地元の人が買っていくのかしら」とあやしむ同僚たち。
駅で買っておいて、よかった。ここをあてにしていたら、買えずに悔しい思いをするところでした。
● 岡山みやげ
岡山では、焼ままかりを買いました。
● 香川みやげ
香川では、朝食に出ておいしかったしょうゆ豆を買いました。
初めて食べた香川フードで、甘くない黒豆のような味です。
小豆島でそうめんが有名だと知らなかったので、それも買いました。
香川に来たら、讃岐うどんを買うのが王道でしょうけれど、横浜でもいろいろな種類が買えます。
でも小笠原そうめんは、あまり見る機会がありません。
それにこれから暑くなるので、うどんよりそうめんですね~。
ちなみに、ソーメン二郎さんと知り合いです。
よそさまには、お土産らしいものを選びましたが、今回自分用に買ったのは、このしょうゆ豆・小豆島のそうめん・そして焼ままかり。
なんだか地味~!キラキラ感ゼロ!
そこはかとなく漂う呑兵衛のチョイス!まあお酒のおつまみ、好きですけど。
どれも家に帰ってから食べるのが楽しみ~♬
● 非常口座席
搭乗手続きに入ります。いよいよ岡山からもさようなら。
小さい空港なので、JAL便とANA便が隣り合わせのゲートになっており、先に離陸するANAの人が、JAL便待ちのソファの方まで来て、「お間違えのないように~」と声がけしていました。
機内に入ると、私の座席の列にスチュワードさんがいました。
今回は、非常口座席を選んだので、簡単な説明を受けます。
座席の間がゆったり開いているため、足を伸ばせて楽チン。
この席はちょうどウイングのところにあり、緊急時には窓についているハンドルを動かして、外に出られる場所になっています。
そういった緊急事態が起こらないよう、祈りながら!
うとうとしているうちに、羽田が近づき、着陸態勢になりました。
窓の外に、海に伸びる長ーい道路が見えてきました。
海ほたるです。独特な形なので、地方出身の友人が「あれを見るたびに、何なのかすごく気になってた」と言っていました。
「でも、着陸モードだからFAさんに聞けず、空港に着いたらもう忘れているの繰り返しで、ずっとわからなかった」そう。
● 到着ゲート
非常口を開ける必要もなく、羽田に戻ってきました。
帰りも行きと同じ5Aゲートに到着したので(やはりここは、岡山便が出るところ?)と思い、後日福岡出身の人に聞いてみると「搭乗ゲートは、毎回変わるよ」とのこと。
福岡便は頻繁に出るため、おそらくひとつのゲートだけではたちゆかず、いろいろなゲートを使っているのだろうとのことです。
たしかに、行き先の都市によって、たくさん飛んでいるところとそうでないところとありますからね。
ということで「行き先によってゲートは決まっている」説は無効と判明!
乗客の便宜を図って、行き先によってよく使われるゲートはあると思いますが。
そのまま帰途につきました。
● epilogue
JALの「どこかにマイル」で、偶然岡山に行くことになった今回の旅。
瀬戸内の島や高松も訪れて、初夏の小旅行を楽しみました。
初日と3日目はフェリーで島、2日目は電車で山へ。
フェリーで島に渡るって、それだけで非日常。
静かな瀬戸内海に、荒波が立つこともなく、穏やかな島時間を過ごしました。
といいながら、のんびりしすぎて乗るフェリーを逃して青くなったけど!!
なんとかつじつまが合ったので、とりあえず結果オーライ!
普段は忘れていることですが、日本そのものが大きな島国で、私たち全員、島の民。
汐風や寄せる波に心安らぐのは、海の記憶がDNAに刻まれているのかもしれませんね。