4-(2)からの続きです。
○ 最終日は阿蘇山へ
くまもと滞在最終日のこの日。朝食を食べながら、どこに行こうかと話します。
さっちゃんは「熊本には、いい古墳も多いよ~」と推してくれました。
オプサン・チプサンなんていう、不思議な名前の古墳があるそうです。
結局「この前、阿蘇方面には行ったけど、山の上に行ってないね」と、草千里に向かうことにしました。
帰りの空港がルート途中にあるため、旅行トランクを引いて出発します。
空は曇っていて、湿気が高くて蒸し暑い日。
忘れ物をしたため一旦戻って、電車に乗り遅れないように早歩きしていくと、汗が出そうなほどに暑くなりました。
○ ムサシの地名
この辺りの地名は、武蔵ケ丘といいます。
(武蔵なんて、東京みたいだなあ)と思ったら、宮本武蔵の晩年の地で、お墓があるのだそう。
そういえば彼は、熊本の金峰山の洞窟で『五輪書』を執筆したんでしたっけ。
東京の武蔵とは関係ありませんでした。
豊肥本線には、SuicaやSUGOCAの使えない非電化区間があるため、光の森駅では、電車が到着すると改札に駅員さんが立ちます。
今ではなかなか見かけなくなった光景。
手作りの花があちこちに飾られた、温かい雰囲気の駅です。
○ 晴れから雨に
電車に乗っている間に、雨が降ってきました。
数日前に阿蘇を訪れた時は快晴でしたが、この日車窓から見えるのは、煙るような幻想的な景色です。
途中の立野駅で、またもやワクワクのジグザグ・スイッチバック体験をし、その先の阿蘇駅で降りました。
○ シックな阿蘇駅
この前通り過ぎた阿蘇駅。真っ黒でかっこよく、映画のセットのよう。
「ぽっぽや」みたい~。(あれは北海道)
駅のロッカーにトランクを入れて、山の上に行く阿蘇火口線バスに乗りました。
やってきたのは大型観光バスですが、乗客は私たちと外国人夫婦の2人のみ。
雨がぽつぽつ降ってきたからかもしれません。
おじさんの運ちゃんが、走り始めるとともに「ウェルカム・トゥ・アソ・ボルケーノーゥ」とすらすらと英語でアナウンスを始めたので、(おお!)と驚きました。
ここは国際的な観光地なんですね。
○ 米塚はどこ?
バスはどんどん山を上がって行きます。高度が上がるにしたがって、雨がどんどん強くなり、霧が濃くなりました。
草千里の辺りに差し掛かりましたが、なんだかよく見えません。
米塚の近くに行きたいとバスに乗ったのですが、ますます霧は濃くなって、丘陵の影しかわからなくなってきました。
「あの形、きっと米塚だよね」と、2人で激写しましたが、その後しばらくしてから、米塚紹介のアナウンスが入ったので、撮影したものはどうやら違うものでした。
もはや、脳内妄想で補てんするしかありません。
○ 草千里レストハウス
バスは阿蘇山のロープウェイのところまで行きますが、私たちは途中の火山博物館前で降りました。
同乗のカップルも降りたため、そこから先のバスは無人になりました。
この日は上まで登っても、展望は望めなさそうですからね。
火山博物館の建物に入り、「博物館見る?時間は大丈夫かな」と話していた私たちの横をすり抜けて、外国人カップルは博物館には目もくれずに、カフェへと入っていきます。
山の上まで、お茶しに来たの?
でも2時過ぎていたので、私たちも食事をすることにしました。
博物館カフェでは食事が出ないため、外に出て少し歩いたところにあるレストハウスへ移動します。
「隣の建物ですよ」と教えてもらいましたが、すでに霧は濃くなり、隣の建物さえよく見えなくなっています。
真っ白だわ~。
こんな時に外にいると、不安になってきます。
○ 大きな火山弾
外に火山弾が展示されていて、立ち止まりました。
さっちゃんと私の頭ふたつ分くらいあります。
こんな大きなものが飛んできたなんて、当たったら痛いどころではすまないわ。
○ 火の国ラーメン
レストハウスの入り口を見つけて、ほっとしました。
電車に乗るまでは蒸し暑かったのに、標高が高いところなので、すっかり冷えて震えています。
防寒具も持っていないので、身体を温めなくては。
そういえば熊本は火の国ラーメンだっけ、と思い出して、とんこつラーメンを頼みました。
さっちゃんは高菜ラーメン。
「じゃんがらラーメンとは違うのかな?」と考えましたが、よくわかりませんでした。
後で調べてみたら、じゃんがらラーメンって九州発ではないんですね。
九州系とんこつラーメンで、本店は秋葉原でした。知らなかったー。
会計時にICカード払いができるということでPASMOを出したら、レジの人は「これを見るのは初めてだよ」と、じーっとカードを眺めていました。
こういう時には、温かいラーメンで、身体を温めましょう。
九州といったら、とんこつ~。
ランチ時間からは少し外れていましたが、食堂にはほかに10名ほどのお客さんがいました。
私たちのそばでは、写真サークルの学生のような男性4人が、武器になりそうなほどゴッツイカメラを横に置いて、カツの乗った活火山カレーや大盛りちゃんぽんをもりもり食べていました。
向かいのテーブルには、ヨーロッパ人一家がいて、全員活火山カレーを食べていました。
カレーが一番人気のよう。ドーナツ型におかれたライスは外輪山、5切れのカツは阿蘇五岳を表し、中央のくぼみのカルデラからルゥをあふれさせて、マグマ風にしているそうです。
ここは阿蘇山の中腹の、
草千里レストハウス。
天気が良ければ、目の前には草千里、後ろを振り返ると間近に迫った阿蘇中岳と立ち上る噴煙といった雄大なパノラマが見えるはずなんですが、どっちを向いてもなんにも見えません。
○ 雨は蕭蕭と降っている
窓際に陣取って、霧が晴れるのを待ちますが、晴れるどころかどんどん濃くなっていきます。
まさに三好達治の詩『大阿蘇』そのまんまの光景。逆に感激します。
「雨は蕭蕭と降っている」
中学の国語の授業で習いましたね。「しょうしょう」の漢字を覚えるのに手こずりました。
書くと、やけに漢字が大きくなっちゃうんですよね。
「もしも百年が この一瞬の間にたったとしても なんの不思議もないだろう」
この詩は、雨の中、黙々と草を食べる馬がいる草千里の光景を歌っていますが、「馬のりば」と屋根に書かれた小屋に、馬は一匹もいませんでした。
この視界不良の中で乗る人はいないでしょうし、そのまま別世界につれていかれそうですからねー。
しかも、雨が降るだけならいいんですが、霧が押し寄せています。
視界いっぱいに緑の草原が広がるはずですが、じわじわと緑が靄の中に飲み込まれていき、そのうち、辺り一面乳白色の世界になりました。
「なにも見えなくなっちゃったねー」と言って、ミルキーな世界を眺めていたら、そろそろ駅に戻るバスの時間が近づいてきたので、草千里の景色を堪能しないまま、戻ることにしました。
かつて天気の良い時に訪れたことがあるので、落ち着いていますが、初めて訪れてこの景色だったら、「ヤダヤダー、緑の草千里を見たいー!」とダダをこねたことでしょう。
○ みんなブルブル
バス停に向かうと、なにやら霧の向こうに黒い影が。
キャー、映画『ミスト』みたい。こわいよー(観てないけど)
近寄ってみると、そこには結構な人数の人がいました。
先ほどレストハウスにいた人たちと、全員そこで再会します。
行きで一緒だった外国人カップルもいます。
みーんな、帰りのバスを待っていたのね。
強い風が吹き、霧雨が降り続けているため、傘を差していてもあまり意味がありません。
レストハウスからバス停までは、ほんの100mほどの距離しかありませんが、外にいるだけで、ミストシャワーを浴びたようになりました。
待ってるみんなはぬれねずみになり、首をすくめて黙りがち。
外国の人たちは、Tシャツ短パン裸足の軽装スタイルが多くて、見るからに寒そうです。
二十人ちょっといたバス待ち客は、ほぼ全員外国人。
日本人は、運転手と私たちだけのようです。
外国人観光客に私たちが混ざっているインターナショナルなバスの中でしたが、みんな阿蘇の雨にやられたためにファンキーさはなく、とても静かな車内でした。
○ 黒い阿蘇駅
阿蘇駅まで降りてくると、雨はかなり小降りになりました。
山の天気ですからね。
駅のホームには、大人も入れるくらいに大きなクロの駅長室がありました。
クロとは、阿蘇の観光電車
「あそボーイ」の、犬のキャラクター。
家主はおらず、留守中をいいことに私たちが中に入って遊びました。
クロといい、くまモンといい、熊本城のひごまるといい、熊本には黒いキャラが多い気がするけど、どうなのかな?
○ 佐田の海の取組
電車で肥後大津駅へ戻り、ここから空港ライナーに乗り換えます。
もう雨は降っていません。道路もからりと乾いています。
この日の天気は、晴れ・雨・曇りと変わってばかりでめまぐるしいわ。
駅併設の大津町ビジターセンターのTVでは、大相撲名古屋場所が放映されていました。
さっちゃんは相撲好き。最近では相撲が好きな女子をスージョというそうな。
スモジョじゃないの?数学好きの女子はなんていうのー?
佐田の海が土俵に上がったのを見て、前に熊本出身のスージョ(さっそく使ってみよう)が「同郷人だから応援してる」と言ったことを思い出しました。
熊本県熊本市出身の力士の取組を現地で観るなんて、オツだわ~。
郷里では、みんなさぞ熱心に応援するのだろうと思いましたが、ほかにTVを見ている地元の人がいなかったので、そのあたりのことはわかりませんでした。
そして熊本の力士は、ブルガリアの碧山に負けちゃいました。残念!
空港ライナーがやって来ましたが、お客さんを下ろして「ちょっと待っていて下さいね」と私達に言うと、スーッと何処かへ行ってしまいました。
(まだ発車時間には間があるからかな)と遠ざかる車を見ていたら、さっちゃんが「おやつの時間なんだよ」というので、吹きました。
くまモンといい、おもてなし武将隊といい、熊本はおやつタイムが大事な場所なのかも(笑)!
少しして再びやってきたライナーの車体には、大きくくまモンが描かれています。
行きの時には、さっちゃんが座席上部のでっぱりに頭をぶつけ、帰りは私が頭をぶつけました。
運転手さんが「頭上に気を付けて下さいね」と言っているそばから!
さっちゃんがぶつけた箇所を注意していたら、ほかにもでっぱりがあったんですねー。
広大な水田が空港への道の両側に広がり、さらに向こうをぐるりと山が取り囲んでいます。
ダイナミックで気持ちがいい光景。
雨が止んで、晴れ間が出てきました。
阿蘇ではあんなに天気が悪かったのに。
○ 終わりのない会話
空港に着いて、お土産を買います。往路便で重量制限に引っかかったので、軽めのものを選びました。
帰りのジェットスターは少し遅延しており、空港内のカフェでケーキセットを頼みました。
フライトの時間ギリギリまで話をしていたのに、まだ話し足りない感じ。
5日間ずっと一緒にいても、語りつくせないなんて。友達っていいですね。
ハグをして、お別れしました。
旅の間中ずっと二人で行動していたので、5日ぶりに一人に戻ると、急に寂しさがこみ上げます。
夜のタラップって、なんか好きなんですよね。非現実感っぽくて。
30分遅れで、フライトは飛び立ちました。使用機材の到着遅れだそう。どういうことかな。
LCCは狭いといいますが、私はそれほどこたえません。ただ大柄の男性は窮屈かもしれません。
成田には22時半過ぎに到着しました。夜遅めの便が遅れたため、乗客はみんな急ぎ足でそれぞれの交通機関へと向かいます。
Y-cat行きのリムジンバス最終便に滑り込み、1時過ぎに帰宅しました。
○ epilogue
旧友と一緒に過ごした5日間。
訪れる前の熊本の印象は、お城とくまモンくらいでしたが、阿蘇の自然の素晴らしさに魅了されました。
霧に隠されて、火口の煙がたなびく様子を見なかったため、活火山だという印象は持ちませんでした。
海にも山にも行き、暑かったり寒かったりしたのと、おしゃべりのしすぎで(これが一番の原因)、旅行から帰っ時には声がガラガラになっていました。
それからは、黒いポルシェを見ると、熊本宣伝部長のクマのことを思い出してしまうようになった私。
似てませんか?この赤い
そんなこと、持ち主には言えませんけど(笑)!
熊本の自然を満喫できた、リフレッシュの旅でした。