その1からの続きです。
● ガイドツアー
ひとしきり自分たちで周った後、13時半からのガイドツアーに参加しました。
学芸員さんが、来館者に選ばれた去年の人気ベスト10の作品を紹介してくれるといいます。
この膨大な作品数の中から選ばれし10枚って、どんな絵なのか、気になる~!
先ほどのシスティーナホールに集合し、ぞろぞろとガイドさんについて出発します。
だだっ広い館内を効率的に周るため、ランク順の紹介ではありませんでしたが、ここでは1位から発表します。
● ゴッホのひまわり
栄えある第1位は、ゴッホのひまわり!
(ふーん、みんなゴッホ好きなんだなあ)と、ちょっと薄い反応で向かいました。
でも、ひまわり部屋に一歩入ると、完全にその場に圧倒されました。
そこにはゴッホが描いたひまわりの絵が、ずらりと並んでいたのです。
壮観・・・圧巻!
ダントツの人気というのも、うなずけます。
東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館に常設展示されているひまわりなら、訪れるたびに観ていますが、ほかのひまわりはほとんど見慣れていません。
ゴッホの全ひまわりの全体的な解説を受けるのは、これが初めてでした。
ゴッホのひまわりが全作揃う機会なんて、現実ではもうありえません。
7枚のうちの1枚は、すでに現存していないからです。
なんですって? いったいどこで? どうして?
なんと、それは日本でのことでした。
2番目に描かれたひまわりで、武者小路実篤の依頼で購入し、芦屋の山本顧彌太邸にありましたが、阪神大空襲で焼失してしまったそうです。
残念ですが、人命第一。空襲ならば、やむをえませんね。
失われた幻の1枚を含めた7枚のひまわりに囲まれた部屋。
強烈な黄色に吸い込まれそうになって、クラクラしてきます。
原画焼失したひまわり
ひまわりを4枚描いた後の作品3枚は、4枚目の模写なんだそう。
4枚目までは背景が青、それ以降は黄色い背景に変わっています。
ゴッホがひまわりを描いたのは、アルル時代のこと。
ゴーギャンを黄色い家に招くためだったそうです。
そばにいた参加者の一人がガイドさんに「何か香りがしませんか?」と尋ねました。
「柑橘系の香りです。よく気がつきましたね」とガイドさん。
そうなの?
それを聞いて、母と鼻をヒクヒク。
たしかに、ほのかにライムのような爽やかな香りがします。
ただ、言われなければ気が付かないほど、かすかなものでした。
五感で美術鑑賞ができるようにしているんですね。すごいことです。
● 叫びとモナ・リザ
同率2位の2作は、ダ・ヴィンチの【モナ・リザ】とムンクの【叫び】。
時代もタイプは違えど、どちらも知らない人がいない名作です。
ムンクの叫びは、”夕焼けを観て「きれい」ではなく「空が血まみれになってる」と思い、恐怖で髪が抜け落ちた様子”と解説してもらいました。
ムンク自身も絵の説明をしており、あながち外れてはいませんが、かなり大胆な表現。
いつもガイドをしている方ならではでしょう。
● 真珠の耳飾りの少女
3位が飛んで、第4位はフェルメールの真珠の耳飾りの少女。
人気が高いですよね。アートコスプレの作品でしたが、なりきりたい方々が男女を問わず列を作って並んでいるのを見て、やめておきました。
フェルメールの描く絵は、ほとんど左から右に光が入っているのだそう。
ほかの作品も、注意して観てみよう!
● 最後の晩餐
第5位は、レオナルド・ダ・ヴィンチの最後の晩餐。
乾いた漆喰にテンペラで描かれた壁画のために損傷が激しく、一人の女性修復士が20年間、こつこつと修復しました。
部屋の壁2面に、修復前と修復後の両方が再現されており、比較して観ることができます。
『最後の晩餐』・修復前
全体的に薄暗くて、目を凝らして見ても細部はよくわからなかったなあ。
当時の人が塗りつぶしてしまったそうです。
『最後の晩餐』・修復後
修復された作品から、ダ・ヴィンチが描いたオリジナルの様子がようやく判明しました。
キリストの口が開いており、何か話している最中だったとわかります。
きっと「この中に私を裏切った者がいる~」というシーンですね。
キリストや弟子たちのテーブル下の足が見えるようになりました。
ユダは財布を持っているので、弟子の中から見つけやすくなりました。
実際には、一人一人の表情や手の動きまで描き分けられ、テーブルクロスのたたみ跡の凹凸までも表現されていたんですね。
修復後に判明した、ダ・ヴィンチの精密さに、ため息が出ました。
オリジナル作品は限られた時間しか見学できませんが、ここでは心ゆくまで間近で見ることができます。
● モネの大睡蓮
クロード・モネの大睡蓮は、屋外エリアに設置されている環境展示です。
モネの「作品を自然光のもとで見てほしい」という願いをかなえる形をとっているとのこと。
額に入らない大きさのものを「大睡蓮」というのだそう。
パリのオランジュリー美術館地下の大睡蓮を外に出したような感じです。
モネは1867年のパリ万博で日本庭園が気に入り、自分の家の庭に池をこしらえました。
当時、持ち歩きできるチューブの絵の具が登場し、画家たちは外で描けるようになりました。
それがきっかけで、彼の睡蓮シリーズは誕生したと言えます。
つまり、時代が生んだ名作というわけですね。
● ピカソのゲルニカ
パリ万博のスペイン館に展示する絵を依頼されたピカソ。
全く違うものを描く予定でしたが、スペイン内戦中のドイツ空軍によるゲルニカ爆撃を知り、この題材に着手したそうです。
内戦中、この絵は外国を渡り歩いて展示され、内戦後にスペインに戻されましたが、その時には、ピカソはもう亡くなっていたそうです。
マドリードのプラド美術館別館に展示されていた時に、観に行きました。
当時もなお破壊したがっている人が多い取り扱い危険作品という扱いで、入るまでの手荷物チェックが厳しく、ガードマンが目を光らせる中で緊張して鑑賞しました。
今はソフィア王妃芸術センターに移されていますが、先日観に行ったという友人に聞いたところ、今でも手荷物検査はとても厳重だそうです。
普通、戦争画といったら血の色を連想させる赤を多用しますが、この作品では全く用いずに、戦争の怖さを描いています。
モノクロだからこそ、押し寄せる恐怖と虚無感。
絶望的な絵ですが、アネモネが咲いていると、ガイドさんに教えてもらいました。
花言葉は「希望」。ピカソの思いが込められていたんですね。
● システィーナ礼拝堂
第8位にランクインしたのは、ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂。
この美術館の顔ですからね。
ミケランジェロは30歳で天井画を手掛け、30年後の60歳になってから壁画『最後の審判』に着手したそうです。
そんなにタイムラグがあったとは。すべて30歳の時に作り上げたのだと思っていました。
だって、見るからに重労働ですからね。かつての60歳は結構な高齢。よく仕上げたなあと思います。
● クリムトの接吻
第9位に、クリムトの接吻が入りました。
クリムト作品は、ゴージャスなタイルを埋め込んだように見えますが、イタリア・ラヴェンナのモザイク画を元にスタイルを確立させたそうです。
接吻にうっとりとする恋人たち。足元には楽園の花が咲き乱れていますが、二人は崖っぷちにいる、どこか不安感のある絵です。
● ミレーのオフィーリア
第10位となったミレーのオフィーリアは、初めて人気ベスト10入りを果たした作品だそう。
「先日亡くなった樹木希林のエッセイの表紙のモチーフとなったのが原因ではないか」とガイドさんは推測していました。
姫が溺れいく哀しいシーンですが、緑に囲まれた水面の女性という構図は美しい仕上がりになっています。
郊外でスケッチした自然の景観に、人物を描き加えて仕上げたそうです。
第2位 ムンクの【叫び】とダ・ヴィンチの【モナ・リザ】
第4位 フェルメールの【真珠の耳飾りの少女】
第5位 ダ・ヴィンチの【最後の晩餐】
第6位 モネの【大睡蓮】
第7位 ピカソの【ゲルニカ】
第8位 ミケランジェロの【システィーナ礼拝堂】
第9位 クリムトの【接吻】
第10位 ミレイの【オフィーリア】
● 男性が選ぶ美女
たしかにこの画家の描く聖母さまは、少女のようなあどけなさと清らかさに満ちていて、私も好き~。
● 女性が選ぶハンサム
でも、いまいちピンときません。イケメンの絵、あったかなあ。
どうも、ルイ14世のゴージャス感のインパクトが強くて、あの王様しか思い浮かばないのです。
美脚だけど、顔はどうかしら~(←失礼)
ん? ちょっとまって。どんな絵だったかしら。
絵の前まで連れて行ってもらわないと、わからない、それほど有名ではない作品です。
でもこの絵、男性の顔が見えないわ。
なのになぜ、ハンサムってわかるのー?
「たしかに男性の顔は見えませんが、男性を見つめる女性の顔がとても明るく幸せそうですよね。それで、女性にそんないい表情をさせているこの彼は、とてもかっこいいに違いないと、想像してのことだそうです」
確かに、この女性、本当に彼を愛してやまないと伝わってくる、素敵な笑顔をしています。
なるほど~。なんて小粋な選び方なんでしょう。
これぞ、大人のチョイスだわ。
ガイドさん、おもむろに「私も50年前は、夫に向かってこういう顔を見せていたんだろうなと思いますが、もう今は・・・」と語りだしました。
ちょ、ちょっと、どうなさったんですか(笑)? 大丈夫ですよ!
そんなこんなで、楽しくためになるガイドツアーでした。
最後に、展示作品の額縁について、教えてもらいました。
基本的に、陶板画にしてもいいとの許可をもらったときの額を再現しているそうです。
ルイ14世の額は、3000万円もするそうですよ!
たっか!! すべてゴージャス!!!
● 私のお気に入り
押しも押されぬ名画10選は、それは満足度の高いものでした。
どの作品も迫力満点だったので、逆にささやかな絵が観たくなり、ツアーの後に、自分の好きな絵のところに行きました。
サージェントの『カーネーション、リリー、リリー、ローズ』。
夕暮れ時、白い服を着た2人の少女がランタンに火を灯しています。
少女たちの周りには、淡い色の花々が咲き乱れています。
かわいらしい、夢の1シーンのような光景です。
● ミュージアムカフェ
美術館に着いてから、ランチをとばしてずっと歩き回っていたので、さすがに足がくたびれてきました。
母も、よく体力がもっていると思います。
好きなものを前にすると、謎のパワーが出るものですが、それでもそろそろひと息つこうと、カフェに向かいました。
館内にはレストランやカフェが何軒もあります。
入ったのは、池の側にある「カフェ・ド・ジヴェルニー」。
季節限定という「おいしぃぃぃ~と叫ぶ ムンクのどら焼きセット」が気になります。
そんな叫びなら、してみたーい!
寒い日だったので、お茶とどら焼きがいいかなと思いましたが、メロンパフェも気になり、悩んだ末に二人ともパフェをチョイス。
モネの絵画のようなスイレンの池を眺めながら、パフェをいただきました。
「おいしい!!」 「これにして正解!」
ここだったら、どら焼きよりパフェの気分になりますよね~。
絶品パフェ
肌寒い日だったので、周りは、ムンクどら焼きにした人たちばかり。
でも誰も、おいしさを叫んではいませんでした。
ここでほっと一休み。
名画のオンパレードをひたすら無我夢中で観まくってきたので、頭が飽和状態になっています。
● 信楽の陶板画
陶板画は、普通の絵画よりもはるかに保存期間が長く、後世に残ります。
絵画に比べて取扱いも楽で、触っても痛みません。
ただ、やはり発色の限界はあるようで、オリジナルとは色が違う作品もあります。
また、性質上、光沢があり、光って反射します。
まあ、陶板画の技術も、今後どんどん上がっていくことでしょう。
いずれにしても、名画を後世に伝えるという人類の壮大なミッションを担う大塚国際美術館の姿勢には、敬服する限りです。
昨日滋賀で観た、朝ドラ「スカーレット」のポスターが、ここにも貼られていました。
私も、首だけ出したら、こんな仕上がりになっちゃいました。
笑ってやってください。
これは、モデルというよりも、着物の刺繍を見せることが大切ですが、なかなかうまくいきません。
さらに、モデルが持っているはずの扇子が行方不明。小道具どこにいったの~?
そこで、背景のうちわを持っている風にしてみました。
でも、そこに気を取られていたため、結局着物の柄はうまく撮れませんでした。
そして・・・なんといっても、モデルに比べて背が小さく、着物を着こなせていない感バリバリ。ジャポネーズなのに・・・。
でも意外と難しかったです。
黒いベストの下は白シャツだと思っていたら、白いたすきだったとは。
ポーズを決めたつもりが、何かが違う・・・うーん、コスプレって奥が深いわ。
そのためなのか、モナ・リザの絵はやけに巨大で、しかも2枚並んでいます。
どうしてかしら?衣装がおとな・こども合わせて4着あったので、大勢で撮るためかしら?
よくわからなかったので、2枚の巨大画の間でポーズを取りました。
両方の女性の真似をしてみました。
、もう一人の女性はブルー系のドレスでしたが、次に並んでいる人がいたので、別のドレスに着替えるのはやめました。
けっこうコスプレしまくりましたね~。
それでも、館内には28着のコスプレ用衣装が用意されていたとのことです。
きちんとした衣装だと思ったら、そうち12着は京都造形芸術大学芸術学部の学生さんが製作したそうです。
「ガチでルイ」キャンペーンに参加できて、ガチで嬉しい!
ここにない名画って、あるかしら~?
ウンウン考えて、ひとつ思い付きました。
ルノワールの『イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ )』 がありませんでした。
今でもコレクションは増えているということなので、いずれ所蔵作品に加わるかもしれません。
● 帰りのバス
5時間ずっと美術館の中にいて、外に出た時には、もう夕暮れ時でした。
帰りのバスも人でいっぱい。不便な場所にあるので、車がない人にはバスがたよりです。
一日曇りがちの日でしたが、きれいな夕焼け空でした。
神戸の夜景も見たかったのですが、寝落ちしてしまって見逃しました。
● 電車と接触放送
大阪駅でバスを降り、新大阪駅構内で早めの夕飯を食べて帰ることに。
先ほどパフェを食べて、それほどおなかが空いていないため、そば屋で軽くすませることにします。
クリスマス仕様のビリケンさん
阪和線といったら、大阪と和歌山を繋ぐ路線。けっこう長いですね。
「電車と接触した」というので、てっきりホームで乗客が車体に触れた程度だと思いましたが、JR西日本では人身事故のことをそう表現すると、あとになってから知りました。
思っていたよりはるかに深刻ー! それじゃあ運転見合わせになりますね。
よくわからず浪花(新大阪?)ナントカといううどんにしたら、全のせレベルの具だくさんのものがきました。
母も、「よくわからずエビ天を2つ頼んだら、なんかすごいことに…」ととまどった様子。
それでも完食しました!
この日は旅行3日目。あっという間に最後の夜です。
ミュージアムショップにはたくさんのグッズが売られており、レジには長い列ができていました。
そんな中、バスの時間前に母が急いで買ったものは何かというと…
鳴門のワカメ!
「おいしいのよ~。それに鳴門は、三陸の次にワカメが採れるんだから」
「あ、そうなの」
「お友達へのお土産にね。だってほかに買うところ、なかったじゃない」
確かにそうですが、美術館で買うものではないような…。