[中村→大歩危→かずら橋→大歩危峡→岡山→神戸]
この日は落ち着いた宿でくつろげましたが、日中あまりに暑い思いをしたせいか、思ったよりもあまり寝つけませんでした。
朝も急がないことにしたため、のんびり過ごして、9時前に車で駅まで送ってもらい、お茶目な女将さんとお別れしました。
香港ガールズは、もう一泊するとのこと。ジョージは、早朝足摺岬に向かったとのことで、もういませんでした。
さようなら、中村駅~。
○ 大歩危駅
バースデーきっぷではグリーン車も乗れるため、大歩危までグリーン車に乗って行きました。
快適~。
途中、山あり海あり川ありの風光明媚な景色をたくさん通り抜け、高知駅に止まります。
高知駅の龍馬・慎太郎・半平太像を、電車の窓からパチリ。
後ろ向きですが、大きな像なので、かなり近くに見えました。
後ろを向いたら、隣のホームにはトラトラ柄の電車が留まっていました。
目にも鮮やかなタイガース電車!
なぜ四国を走っているんでしょう?安芸にキャンプ場があるからでしょうか?
高知駅を出てから、後免駅にも止まりました。
今度はアンパンマン電車が止まっていました。
「ごめん」と謝るアンパンマン…。高知の電車って、バリエーション豊かで面白いですね。
徳島の大歩危駅まで、乗り換えなしで向かいました。
ホームには、ミニかずら橋がかかっており、待合室には何人も人がいました。
バス停の時間を見ていたら、おじいさんが顔を出して「それじゃなく、向こうの表示だよ」と教えてくれたため、てっきり駅員さんかと思いきや、ここは無人駅とのこと。
おじいさん、あなたは土地の人だったの?
バスで祖谷まで向かいます。すごい急カーブの道を、かなりのスピードでぐいぐい走っていき、走行中に立つとよろめいてしまうほど。
室戸岬へのバスでも思ったけれど、四国のバスはスピード狂のように、ガンガン攻める感じ。
フルスロットルのような速度のままにバスは山の中へ。
みるみるうちに、山奥へと入りこんでいき、車窓の変わりように驚きました。
この、慣れない者には強引とも無茶とも思える運転で、どんどん秘境へと入りこんでいく感覚に、覚えがあります。
それはマチュピチュへと向かう山道の中。
ガードレールがないくねくね山道をガンガン走っていくバスには、肝を冷やしたものです。
つまりここは、日本のマチュピチュなのかも!
○ かずら橋
30分ほどバスに乗り、かずら橋で降りました。バス停を降りたところからは橋は見えず、川沿いへと少し歩いていきます。
谷向こうには、コンクリの巨大な建物が見えて、観光地っぽいなと、なんだかがっかりしました。
視線を横から前にずらすと、どこかで見たような人物が。
暑さによる蜃気楼かしら。いいえ、リアルのようです。
あっ、昨日の観光バスで一緒だった、個性的なラブラブ関西カップル!
まさか今日もバッタリ会うなんて!
驚いてユキと固まりました。
今日も昨日に劣らない、強烈なファッションでした。
でも、ツアーじゃなく、フリーで周っているところに、気概(?)を感じます。
ようやくかずら橋に着きました。ああ、今日のハイライト。
楽しみでなりません。浮き立つ心のままに、橋のたもとへと向かいました。
でも、橋の上だけ激混みで、芋の子を洗うようなラッシュ状態。
これまで四国で、人混みを見たことがなかったので、あっけに取られました。
若者のグループが写真撮影に興じて、ずっと前に進まずにいたり、ふざけて橋をユサユサ揺らしたりしているためでした。
あとからの人たちで、どんどん橋が混んできます。
せっかく、混雑を避けようと、休日ではなく平日を選んで来たのに、こんなに混んでいるなんてー。
私は、先が進まないのをいいことに、じっくりと橋を堪能することができてよかったと思いましたが、後ろからは「こんなに人が乗ったら橋が落ちちゃう~」という悲鳴も聞こえてきました。
見晴らしはとってもいいんですが、この橋、隙間が空きすぎなんですね。
そこがこわいんです。ちゃんと板の上に足を載せ、踏みしめて進まなくちゃ、とみんな足元を見ながら歩くため、ソロソロになってしまうんでしょう。
これは、ミッキーマウスのように、足が大きい人ほど、恐怖が和らぎますね。
私のスニーカーは、ぎりぎり踏み外さずに済む大きさでした。危なかったー。
子供靴だったらスポスポ隙間に足が入り込んでしまうでしょう。
水面に映った橋の影から、板がスカスカなのがおわかりいただけるでしょう。
多少なりとも揺れるため、バランスをとるために、みんな橋にしがみつきながら、そろそろと歩いていくのです。
太いかづらが、何重にも編まれており、平家の落人たちがこうやって世を忍んで生きていかなくてはならなかったんだと思うと、切なくなります。
下の水は透明度が高く、きれいですが、ごつごつした岩場のため、うっかり落ちたら、流血沙汰になりそう。それはイヤだわ~。
私たちが渡り終わった頃には、橋の混雑もすっかりなくなっていました。まあ、タイミングが悪かったのね。
でもその分長い間、橋の上にいられました。
本当は、すぐそばにある琵琶の滝にも行って、涼を取りたかったんですが、「ここで残念なお知らせです。バスの時間まであと20分しかありませーん」とユキが教えてくれたため、急いでバス停へと戻りました。
「さっきのカップルにまた会ったりして」「まさかあ。前のバスに乗ってるでしょう」と笑っていたら、本当に二人はバス停にいたため、「一緒のバスを待ってるんだ」と気づきます。
二人の世界を壊さないように、少し離れたところでバスを待ちました。
それにしても人が多すぎて、辺境のつり橋という冒険的な雰囲気を堪能しきれなかったのが残念。
吊り橋好きは私ですが、ユキも「奥祖谷にも行きたーい!」と言っています。
もちろん私もー!
「だけど、暑くない時にね」というのが共通意見でした。
○ 大歩危峡川下り
またバスに乗り、今度は駅を越えて、大歩危峡へと向かいます。
ここから川下りをしました。オレンジのライフジャケット着用が義務付けられており、(そんなに激しいの?)と少し不安になりましたが、まったくおだやかな川面でした。
船頭さんが腕カバーをしているのが珍しく、男性では見るのは初めだったので、ついちらちら見てしまいました。
吉野川の両岸にそびえるダイナミックな巨岩を眺めながら、舟景色を楽しみます。
川底にも大きな岩が見え、運転する場所を間違ったら、岩に激突してしまうだろうとひやひやします。
前にTVで紹介した時には、川の水量が多くて運航停止になっていました。
川の流れ次第で、危険になるんでしょうね。
私は昨日の四万十川下りの方が好きですが、ユキは吉野川がとても気に入ったようでした。
昨日の佐田沈下橋でもそうでしたが、台風による洪水が、相当高いところまでやってきたようで、その時の写真を見て、戦慄を感じました。
この土地の人々は、荒々しい自然と共に生きているのでしょう。
遊覧船乗り場から数百メートル離れた道の駅まで歩いていきましたが、ほんの少しの距離だったのに、暑さにすっかり参ってしまいました。
でも、念願の祖谷そばを食べられて、満足しました。
今度は間違えずに、熱いものではなく、ざるそばにしました。
う~ん、これがこの場所でしか食べられない秘境の味ね。
ざるそばはしっかりコシがありましたが、つゆ蕎麦はほぼコシがないということで、ユキと食べ比べっこしました。
食事を済ませたら、さらに駅まで歩いていき、暑さにのぼせました。
途中、「国境山岳武士の里」という看板を発見。
国境山岳武士!なんだかとってもカッコヨイんですけど。
どんな人たちなのかしらー?会ってみたーい。
さらに進むと「伝説の里」という表示を発見しました。
これも謎めいているわー。私たち、ドラクエの世界に迷い込んだ勇者なのかしら?
でも、看板の向こうは、普通の私有地のようでした。なおさら気になるぅ~。
大歩危駅近くから。土讃線と並行して、吉野川は走っており、窓からも見えて楽しめます。
橋の上からも川底が見える、澄んだ清流に見とれました。
電車に乗り込み、車内の駅員さんの検札を待って、グリーン車に移動します。
いつのまにか徳島から香川に入り、琴平を通りました。
今日、早い電車に乗ったら、高松まで行って、そこからフェリーに乗る予定でしたが、今回は残念ながら、香川は素通り。
金毘羅さんにも行きたかったのですが、この季節、とても石段を登りきる自信がありません。
でも讃岐うどんは食べたかったー!昨日土佐で食べたあのうどんは、讃岐じゃないと思うし。
まさに通るだけ~。車窓から眺めるだけ~。ジャスト・ルッキング、サンキュウ。
うとうとしていた私、琴平の次に多度津で目覚めて、(いけない、このままだと、香川の写真が一枚も無いままだわ)と、写真をかろうじて一枚撮りました。
そして再び寝入ってしまい、宇多津で目覚めた時には、半分寝ぼけながら、駅の表札を見て
「う・た・づ。ここはうたづ?うだつじゃないの?」と聞きました。
ユキの「違うよ」という答えを聞いて、「そうなんだ、ムニャムニャ」とまた眠り、再び目を開けた時には、電車は瀬戸大橋を渡っていました。
うわあ、きれいな瀬戸内海。静かに凪いでいます。
やっぱり内海は穏やか。室戸の荒々しさとは対照的でした。
というか、「たどつ」「うたづ」「うだつ」この辺の駅名、わかりづらいですよね。
あ、うだつは駅名じゃなかったかしら。お粗末さま~。
児島までいったん降りました。バースデーきっぷの有効範囲はここまでなので、ここから先は切符の買い足しが必要となります。
岡山の友人は「児島はなにもない駅だよ」と言っていましたが、海がのぞめる、いい雰囲気のホームでした。
さらに、日本食研のポスターを見つけて、浮足立ちました。
「あーっ、宮殿工場だー!」
♪~宮殿、宮殿、焼肉のタレ~♪本当に宮殿で作ってる~♪ の、アレですよ。
はじめは、この宮殿工場のホテルに泊まって、工場見学をしようとも計画していた私たち。
最後に絵だけでもみられて、嬉しくなりました。
ここで乗り換えて、岡山まで行き、そこから新幹線で新神戸まで向かいました。
車内はかなり混んでいたのが、意外でした。人の多さに、もはや四国ではないと実感します。
ホームに止まっているまだ真新しい新幹線を見て、「あ、さくらだ、乗ってみたいなあ」とユキ。
私は初めて見たため、(いつか乗る時があるかしら…)と、しげしげと見つめました。
本州に戻って、ほっとしたようなつまらないような感じ。
四国はあまりにダイナミックで、なんだかすごかったです。
訪れた場所のどこも、想像の範疇をはるかに越える迫力でした。
○ 大倉山
新神戸に着いた頃には、もう夕方になっていました。
ユキにつきあってもらって、メトロで大倉山駅まで向かいます。
東横線の大倉山駅と記念館をこよなく愛している私。
神戸にも同名の駅があることを知り、かねがね訪れてみたいと思っていたからです。
駅だけでなく、公園があるところも一緒。
やっぱり横浜と神戸は共通点が多いのね。
ここは神戸の中心地で、県庁そばの、神戸大学の最寄り駅。
公園も、横浜の大倉山よりもはるかに大きく、モダンでした。
「これはかなわない」と衝撃を受けたせいか、ほかの画像はどれもブレブレになってしまいました。
三宮で食事をして、旅の解散。ユキは阪急で大阪に帰り、私はバスで東京に帰りました。
本州へ戻ってしまえば、夢のように思える四国の旅。
毎日ワクワクしてとても楽しく、自然たっぷりで刺激的な三日間でした。
○ 貝と石
歴女は(おおむね)封印して、龍馬にも長宗我部にも目を向けず、ダイナミックな自然ばかり追っていた今回の四国旅行。
気がつけば、お土産店にさえ寄りませんでしたが、私の手には、室戸岬の貝と、四万十川の小石が残りました。
ロクシタンの半円デザインのシアバターハンドクリーム30mlとほぼ同じ大きさの小石。
じっと握りしめると、たしかな重みとともに、旅の思い出がよみがえります。
そして、サガン『悲しみよ こんにちは』の一フレーズが、思い出されます。
私は海の底に水色とバラ色の美しい貝のような石を見つけた。
私はそれを採るためにもぐった。
私は昼食まで、優しいすりへらされた石を手の中ににぎっていた。
私はそれが幸福のマスコットで、夏じゅうこれを離さないでいようと思った。
私がどうしてこの石を失くさなかったかわからない。
なぜなら、私は何でもみんな失くしてしまうから……。
今日、この石は桃色に、暖かく私の手の中にあって、私を泣きたくさせる。
繊細な文章と、自分の思い出が重なっていきます。
素晴らしい自然の織りなす四国にまた行きたいわ!今度はぜひとも、暑くない時に!!
(追記)
今回、私たちがとりわけ暑さが苦手だったために、暑い暑いと書きすぎてしまったような気がします。
夏の四国も、いいものでした。(これは本当)
どこまでも突き抜けるような空の青さが海や川に映えて、それは美しかったです。
なので、暑さが好きな人には、この季節をお勧めしまーす。
この日は落ち着いた宿でくつろげましたが、日中あまりに暑い思いをしたせいか、思ったよりもあまり寝つけませんでした。
朝も急がないことにしたため、のんびり過ごして、9時前に車で駅まで送ってもらい、お茶目な女将さんとお別れしました。
香港ガールズは、もう一泊するとのこと。ジョージは、早朝足摺岬に向かったとのことで、もういませんでした。
さようなら、中村駅~。
○ 大歩危駅
バースデーきっぷではグリーン車も乗れるため、大歩危までグリーン車に乗って行きました。
快適~。
途中、山あり海あり川ありの風光明媚な景色をたくさん通り抜け、高知駅に止まります。
高知駅の龍馬・慎太郎・半平太像を、電車の窓からパチリ。
後ろ向きですが、大きな像なので、かなり近くに見えました。
後ろを向いたら、隣のホームにはトラトラ柄の電車が留まっていました。
目にも鮮やかなタイガース電車!
なぜ四国を走っているんでしょう?安芸にキャンプ場があるからでしょうか?
高知駅を出てから、後免駅にも止まりました。
今度はアンパンマン電車が止まっていました。
「ごめん」と謝るアンパンマン…。高知の電車って、バリエーション豊かで面白いですね。
徳島の大歩危駅まで、乗り換えなしで向かいました。
ホームには、ミニかずら橋がかかっており、待合室には何人も人がいました。
バス停の時間を見ていたら、おじいさんが顔を出して「それじゃなく、向こうの表示だよ」と教えてくれたため、てっきり駅員さんかと思いきや、ここは無人駅とのこと。
おじいさん、あなたは土地の人だったの?
バスで祖谷まで向かいます。すごい急カーブの道を、かなりのスピードでぐいぐい走っていき、走行中に立つとよろめいてしまうほど。
室戸岬へのバスでも思ったけれど、四国のバスはスピード狂のように、ガンガン攻める感じ。
フルスロットルのような速度のままにバスは山の中へ。
みるみるうちに、山奥へと入りこんでいき、車窓の変わりように驚きました。
この、慣れない者には強引とも無茶とも思える運転で、どんどん秘境へと入りこんでいく感覚に、覚えがあります。
それはマチュピチュへと向かう山道の中。
ガードレールがないくねくね山道をガンガン走っていくバスには、肝を冷やしたものです。
つまりここは、日本のマチュピチュなのかも!
○ かずら橋
30分ほどバスに乗り、かずら橋で降りました。バス停を降りたところからは橋は見えず、川沿いへと少し歩いていきます。
谷向こうには、コンクリの巨大な建物が見えて、観光地っぽいなと、なんだかがっかりしました。
視線を横から前にずらすと、どこかで見たような人物が。
暑さによる蜃気楼かしら。いいえ、リアルのようです。
あっ、昨日の観光バスで一緒だった、個性的なラブラブ関西カップル!
まさか今日もバッタリ会うなんて!
驚いてユキと固まりました。
今日も昨日に劣らない、強烈なファッションでした。
でも、ツアーじゃなく、フリーで周っているところに、気概(?)を感じます。
ようやくかずら橋に着きました。ああ、今日のハイライト。
楽しみでなりません。浮き立つ心のままに、橋のたもとへと向かいました。
でも、橋の上だけ激混みで、芋の子を洗うようなラッシュ状態。
これまで四国で、人混みを見たことがなかったので、あっけに取られました。
若者のグループが写真撮影に興じて、ずっと前に進まずにいたり、ふざけて橋をユサユサ揺らしたりしているためでした。
あとからの人たちで、どんどん橋が混んできます。
せっかく、混雑を避けようと、休日ではなく平日を選んで来たのに、こんなに混んでいるなんてー。
私は、先が進まないのをいいことに、じっくりと橋を堪能することができてよかったと思いましたが、後ろからは「こんなに人が乗ったら橋が落ちちゃう~」という悲鳴も聞こえてきました。
見晴らしはとってもいいんですが、この橋、隙間が空きすぎなんですね。
そこがこわいんです。ちゃんと板の上に足を載せ、踏みしめて進まなくちゃ、とみんな足元を見ながら歩くため、ソロソロになってしまうんでしょう。
これは、ミッキーマウスのように、足が大きい人ほど、恐怖が和らぎますね。
私のスニーカーは、ぎりぎり踏み外さずに済む大きさでした。危なかったー。
子供靴だったらスポスポ隙間に足が入り込んでしまうでしょう。
水面に映った橋の影から、板がスカスカなのがおわかりいただけるでしょう。
多少なりとも揺れるため、バランスをとるために、みんな橋にしがみつきながら、そろそろと歩いていくのです。
太いかづらが、何重にも編まれており、平家の落人たちがこうやって世を忍んで生きていかなくてはならなかったんだと思うと、切なくなります。
下の水は透明度が高く、きれいですが、ごつごつした岩場のため、うっかり落ちたら、流血沙汰になりそう。それはイヤだわ~。
私たちが渡り終わった頃には、橋の混雑もすっかりなくなっていました。まあ、タイミングが悪かったのね。
でもその分長い間、橋の上にいられました。
本当は、すぐそばにある琵琶の滝にも行って、涼を取りたかったんですが、「ここで残念なお知らせです。バスの時間まであと20分しかありませーん」とユキが教えてくれたため、急いでバス停へと戻りました。
「さっきのカップルにまた会ったりして」「まさかあ。前のバスに乗ってるでしょう」と笑っていたら、本当に二人はバス停にいたため、「一緒のバスを待ってるんだ」と気づきます。
二人の世界を壊さないように、少し離れたところでバスを待ちました。
それにしても人が多すぎて、辺境のつり橋という冒険的な雰囲気を堪能しきれなかったのが残念。
吊り橋好きは私ですが、ユキも「奥祖谷にも行きたーい!」と言っています。
もちろん私もー!
「だけど、暑くない時にね」というのが共通意見でした。
○ 大歩危峡川下り
またバスに乗り、今度は駅を越えて、大歩危峡へと向かいます。
ここから川下りをしました。オレンジのライフジャケット着用が義務付けられており、(そんなに激しいの?)と少し不安になりましたが、まったくおだやかな川面でした。
船頭さんが腕カバーをしているのが珍しく、男性では見るのは初めだったので、ついちらちら見てしまいました。
吉野川の両岸にそびえるダイナミックな巨岩を眺めながら、舟景色を楽しみます。
川底にも大きな岩が見え、運転する場所を間違ったら、岩に激突してしまうだろうとひやひやします。
前にTVで紹介した時には、川の水量が多くて運航停止になっていました。
川の流れ次第で、危険になるんでしょうね。
私は昨日の四万十川下りの方が好きですが、ユキは吉野川がとても気に入ったようでした。
昨日の佐田沈下橋でもそうでしたが、台風による洪水が、相当高いところまでやってきたようで、その時の写真を見て、戦慄を感じました。
この土地の人々は、荒々しい自然と共に生きているのでしょう。
遊覧船乗り場から数百メートル離れた道の駅まで歩いていきましたが、ほんの少しの距離だったのに、暑さにすっかり参ってしまいました。
でも、念願の祖谷そばを食べられて、満足しました。
今度は間違えずに、熱いものではなく、ざるそばにしました。
う~ん、これがこの場所でしか食べられない秘境の味ね。
ざるそばはしっかりコシがありましたが、つゆ蕎麦はほぼコシがないということで、ユキと食べ比べっこしました。
食事を済ませたら、さらに駅まで歩いていき、暑さにのぼせました。
途中、「国境山岳武士の里」という看板を発見。
国境山岳武士!なんだかとってもカッコヨイんですけど。
どんな人たちなのかしらー?会ってみたーい。
さらに進むと「伝説の里」という表示を発見しました。
これも謎めいているわー。私たち、ドラクエの世界に迷い込んだ勇者なのかしら?
でも、看板の向こうは、普通の私有地のようでした。なおさら気になるぅ~。
大歩危駅近くから。土讃線と並行して、吉野川は走っており、窓からも見えて楽しめます。
橋の上からも川底が見える、澄んだ清流に見とれました。
電車に乗り込み、車内の駅員さんの検札を待って、グリーン車に移動します。
いつのまにか徳島から香川に入り、琴平を通りました。
今日、早い電車に乗ったら、高松まで行って、そこからフェリーに乗る予定でしたが、今回は残念ながら、香川は素通り。
金毘羅さんにも行きたかったのですが、この季節、とても石段を登りきる自信がありません。
でも讃岐うどんは食べたかったー!昨日土佐で食べたあのうどんは、讃岐じゃないと思うし。
まさに通るだけ~。車窓から眺めるだけ~。ジャスト・ルッキング、サンキュウ。
うとうとしていた私、琴平の次に多度津で目覚めて、(いけない、このままだと、香川の写真が一枚も無いままだわ)と、写真をかろうじて一枚撮りました。
そして再び寝入ってしまい、宇多津で目覚めた時には、半分寝ぼけながら、駅の表札を見て
「う・た・づ。ここはうたづ?うだつじゃないの?」と聞きました。
ユキの「違うよ」という答えを聞いて、「そうなんだ、ムニャムニャ」とまた眠り、再び目を開けた時には、電車は瀬戸大橋を渡っていました。
うわあ、きれいな瀬戸内海。静かに凪いでいます。
やっぱり内海は穏やか。室戸の荒々しさとは対照的でした。
というか、「たどつ」「うたづ」「うだつ」この辺の駅名、わかりづらいですよね。
あ、うだつは駅名じゃなかったかしら。お粗末さま~。
児島までいったん降りました。バースデーきっぷの有効範囲はここまでなので、ここから先は切符の買い足しが必要となります。
岡山の友人は「児島はなにもない駅だよ」と言っていましたが、海がのぞめる、いい雰囲気のホームでした。
さらに、日本食研のポスターを見つけて、浮足立ちました。
「あーっ、宮殿工場だー!」
♪~宮殿、宮殿、焼肉のタレ~♪本当に宮殿で作ってる~♪ の、アレですよ。
はじめは、この宮殿工場のホテルに泊まって、工場見学をしようとも計画していた私たち。
最後に絵だけでもみられて、嬉しくなりました。
ここで乗り換えて、岡山まで行き、そこから新幹線で新神戸まで向かいました。
車内はかなり混んでいたのが、意外でした。人の多さに、もはや四国ではないと実感します。
ホームに止まっているまだ真新しい新幹線を見て、「あ、さくらだ、乗ってみたいなあ」とユキ。
私は初めて見たため、(いつか乗る時があるかしら…)と、しげしげと見つめました。
本州に戻って、ほっとしたようなつまらないような感じ。
四国はあまりにダイナミックで、なんだかすごかったです。
訪れた場所のどこも、想像の範疇をはるかに越える迫力でした。
○ 大倉山
新神戸に着いた頃には、もう夕方になっていました。
ユキにつきあってもらって、メトロで大倉山駅まで向かいます。
東横線の大倉山駅と記念館をこよなく愛している私。
神戸にも同名の駅があることを知り、かねがね訪れてみたいと思っていたからです。
駅だけでなく、公園があるところも一緒。
やっぱり横浜と神戸は共通点が多いのね。
ここは神戸の中心地で、県庁そばの、神戸大学の最寄り駅。
公園も、横浜の大倉山よりもはるかに大きく、モダンでした。
「これはかなわない」と衝撃を受けたせいか、ほかの画像はどれもブレブレになってしまいました。
三宮で食事をして、旅の解散。ユキは阪急で大阪に帰り、私はバスで東京に帰りました。
本州へ戻ってしまえば、夢のように思える四国の旅。
毎日ワクワクしてとても楽しく、自然たっぷりで刺激的な三日間でした。
○ 貝と石
歴女は(おおむね)封印して、龍馬にも長宗我部にも目を向けず、ダイナミックな自然ばかり追っていた今回の四国旅行。
気がつけば、お土産店にさえ寄りませんでしたが、私の手には、室戸岬の貝と、四万十川の小石が残りました。
ロクシタンの半円デザインのシアバターハンドクリーム30mlとほぼ同じ大きさの小石。
じっと握りしめると、たしかな重みとともに、旅の思い出がよみがえります。
そして、サガン『悲しみよ こんにちは』の一フレーズが、思い出されます。
私は海の底に水色とバラ色の美しい貝のような石を見つけた。
私はそれを採るためにもぐった。
私は昼食まで、優しいすりへらされた石を手の中ににぎっていた。
私はそれが幸福のマスコットで、夏じゅうこれを離さないでいようと思った。
私がどうしてこの石を失くさなかったかわからない。
なぜなら、私は何でもみんな失くしてしまうから……。
今日、この石は桃色に、暖かく私の手の中にあって、私を泣きたくさせる。
繊細な文章と、自分の思い出が重なっていきます。
素晴らしい自然の織りなす四国にまた行きたいわ!今度はぜひとも、暑くない時に!!
(追記)
今回、私たちがとりわけ暑さが苦手だったために、暑い暑いと書きすぎてしまったような気がします。
夏の四国も、いいものでした。(これは本当)
どこまでも突き抜けるような空の青さが海や川に映えて、それは美しかったです。
なので、暑さが好きな人には、この季節をお勧めしまーす。
[高知→中村→四万十川・沈下橋]
朝6時前に起床。ユキはまだ寝ており、一人で朝風呂に入りに行きました。
露天風呂につかり、さっぱりして支度をすませ、急いで朝食をとってチェックアウト。
出口で、『功名が辻』の顔はめパネルを見つけた私、はたと立ち止まります。
「写真に撮ってー!」
迷わず山内一豊の方から顔を出した私に、「そっちかーい!」とユキはすかさず突っ込みを入れました。(さすがのナニワ道)
この旅館は、高知市内で唯一温泉が出ることのほかに、第15代土佐藩主山内容堂公の下屋敷跡に建っている、由緒正しいお宿。
敷地内には国重要文化財の旧山内家下屋敷跡長屋があり、重厚な門構えでした。
でも私、山内一豊に駆逐された、悲劇の長宗我部派なんですよね~。(ハイ、歴女です!)
なんだか敵の陣地に泊まってしまった気分。
ちなみに長宗我部元親の居城跡は、桂浜にあります。
目の前には、昨夜ライトアップされていた高知城が見えました。
高知市街を一望できる場所にあるんですね。
路面電車を乗りついで、駅まで行きました。
「快適だけれど、あまり高知駅に行く人がいないね」とユキ。
官庁街は別の方面にあるのかしら。
私は乗客数よりも、出口の狭さが気になりました。
太った人はここを通過できないんじゃない?
おなかをひっこめれば、意外となんとかなるもの?
車両内には行き先パネルが何枚かあり、「ごめん」行きのパネルを持って、写真に撮ってもらいました。
今度、あやまりづらいことがあったら、この写真を黙って見せよう。そうしよう。
実は、NPO出版の『高知遺産』という写真集をこの前読み、モデルがこのパネルを抱えているのを見て、(このポーズ、私もやってみたい)と思っていたのでした。
念願、一つクリアです。
○ 特急あしずり
高知駅には、風鈴の下にはりまや橋と鳴子を模したオブジェがありました。
来週のよさこい祭りに向けて、町全体が盛り上がっている感じ。
そういえば「高知には鳴子の自販機がある」と聞いてワクワクしていましたが、まだ見かけていません。
本当にあるのかな~?
8時20分発の特急あしずりに乗りました。
指定席を取った時に「バースデーきっぷの方には、こちらを差し上げております」と渡されたのが「JR SHIKOKU 2012 YEAR BOOK」。
見るからにマニアック。これは女性にはピンとこないだろうなあ。
私も正直、まったくグッときません。
でも喜ぶディープな友人がいそうなので、ありがたくいただきました。
席は2列目。ユキは「1列目だとよく見えたのにね~」と残念そう。
1列目に乗っていたおじさんの手にも、先ほどの冊子があり(この人も今月お誕生日なんだ。いっしょ★)と思います。
発車前の時間を、ホームで撮影にいそしむ男性、つまり鉄ちゃんが何人もいました。
この電車も単線。長距離特急なのに。どこかで鉢合わせしたりしないものなのねえ、と、まだ単線感覚になじめない私。
本当なら、窪川駅で降りて予土線に乗り換え、江川崎駅からレンタサイクルをして四万十川を40km下っていくというプランでしたが、昨日あまりに容赦ない暑さを体感した私たちは、恐れをなし、いさぎよく予定を変更することにしました。
こういう面で話が合う人って、一緒に旅してとても助かるわ。
○ 中村駅
そこで、終点中村駅まで行きました。
リノベーションされた待合室は、明るいウッディな空間でとてもいい感じ。
先日、宿毛市のリノベーションプロジェクトを請け負った都市空間デザイナーと知り合ったことを思い出しました。
ここからはレンタカーで移動しようと話していましたが、駅前にあったお店二社とも、車はフル貸し出し中とのことで、借りられず。
月曜日なのに満員御礼なのね―。
観光案内所に相談したら、沈下橋を訪れる午後発の観光バスがあると教えてもらったので、さっそく予約を入れました。
集合まで少し時間があるため、江川崎駅で借りる予定だったレンタサイクルを、ここでちょっとだけしてみることにしました。
予定を丸潰しするのもなんだか残念だったので。
しかし、この好奇心が仇となるのであった…。
○ りんりんサイクル
自転車で、観光案内所の人に勧めてもらったトンボ王国に向かうことにします。
貸してもらうのは、マウンテンバイク。
乗る段階になって、マウンテンバイクに乗るのは初めてだと、気が付きました。
ユキもだそう。私たち、大丈夫かしら?
まず、サドルに腰掛けられずに、四苦八苦します。
さらにハンドルを固定できず、方向が定められずに、グラグラ。
普通のチャリとは、重心のかけ方やバランスのとり方が、ちょっと違うものなんですね。
たぶん、後ろから足を振り上げて乗るのが正解なんですが、ママチャリのように、前側から足を伸ばしてみたため、また弁慶の泣き所をぶつけてしまいました。
昨日、室戸岬の自転車でぶつけたところと一緒~。い、痛い~。
自転車なので、帽子をかぶっても、風ですぐにぬげてしまいます。
前かごがないため、後ろの荷台に置いたバッグが、バランスを崩して何度も落ちたり(紐も借りるんでした)、帽子をおさえたり、なにやかにやともたもたしているうちに、日焼けを気にしないユキは、ハンドリングのコツをつかんで、すいすい先に行ってしまいました。
もう後ろ姿が見えないー。おーい、私地図持ってないのよー。
少しペダルをこいだだけで、汗だくになります。今日も半端ない暑さ。
ユキに追いつこうと、せっせとペダルをこぎ続け、ようやくおおきな川にかかった赤い鉄橋にさしかかりました。
これが四万十川なのね~。
想像していたよりも雄大です。山々に囲まれているから、自然そのままの川の流れが際立つのでしょうか。
ゆったりとした川の流れに、しばし暑さを忘れました。
トンボ王国に到着。ここは、約5.7ヘクタールの広さがあり、ナショナル・トラストによる世界初のトンボ保護区なんだそうです。
青森で蝶を研究している、チョウ博士の叔父のことを思い出しました。
叔父がここに来たら、大興奮するだろうなあ。
ここは地元の人々の好意で土地を提供してもらい、今はWWFによって管理されているそうです。
たしかにパンダのロゴがありました。
蓮が美しく花開いていました。
奥へと続く道に入っていきましたが、行けども行けども道は続き、どんどん原野に入り込んでいきます。
台風の名残で道はぬかるんでおり、水たまりにはまってハンドルやペダルをとられないようにするのが精いっぱい。
草に車輪を取られて走りづらくなってきた頃、ケータイが鳴りました。
(こんな人里離れたような場所でも、通じるんだ)と驚くと、それはイトコからのメール。
次に訪れる旅程についての質問でしたが、まったく余裕がない時だったため、「田舎の中にいるので、またあとで~」と写メを返して、来た道を引き返しました。
王国そばの橋の欄干4隅には、巨大なトンボの像がありました。
橋の名前も「やんまばし」。本当にトンボ王国です。
それから、町なかへ戻って、一条神社をお詣りしました。
応仁の乱で京都から逃れてきた一条教房を奉る神社。古めかしく、歴史を感じました。
彼がこの地を京都風に造ったため、碁盤目状に街並みが広がり、祇園、京町、鴨川、東山といった地名があるために、中村は土佐の小京都と呼ばれるそうです。
境内からは、お城が見えました。
高知城・・・じゃなくて、中村城跡に建てられた歴史資料館だそうです。
本当は、安並の水車群を訪れたかったのですが、これ以上サイクリングを続ける気力体力ともになく、時間も押してきたため、観光案内所に戻って自転車を返しました。
大汗をかき、ぐったりしましたが、涼しい場所で昼食をとって一息つきます。
青のりの釜たまにしました。青のりのうどんは初めて。
(ここは高知の南だけれど、これは讃岐うどんかしら?)などと考えていたら、うっかり熱い麺を頼んでしまいました。
ユキは、ぶっかけ青のりうどんにしていました。
○ 沈下橋
ひと心地ついてから駅へ移動し、観光バス「しまんと・あしずり号」に乗り込みました。
現地なまりで解説をしてくれるバスガイドさんが、なかなか新鮮。
まずは佐田の沈下橋へ向かいます。
今回とっても楽しみだった、四万十川の沈下橋。
実際に見るのは初めてです。実際に歩くことができて、感動しました。
本当に欄干がないんです。流れの上にかけられた、まっすぐな道。
とてもステキで、見ているだけでワクワクします。
ただ、この日は台風接近のために天気が荒れており、水かさが増してあまり水も澄んでいなかったのが残念。
ほとんど流れがなさそうなイメージを持っていましたが、橋からのぞく水流は、かなりの速度です。
河口近いため、ここは一番長い沈下橋だとのこと。
300mという長さは、たしかに結構あります。
端から端まで渡っていきました。私はわくわくドキドキ、踊り出したい気分。
♪ Sur le pont d'Avignon L'on y danse, l'on y danse~♪
吊り橋を渡る時のようなときめきを感じます。
反対に、ユキは怖がって、蒼ざめてこわばった表情。
橋歩きをあまり楽しめていないようです。
川面へぐっと身を乗り出した写真を撮ってもらおうと、ポーズをとったら、周りから「キャー」という悲鳴が上がりました。
・・・沈下橋への反応がおかしいのは、ユキではなく私の方?
橋は、人だけでなく車も通ります。
軽トラックがやってきて、おっかなびっくり歩いているツアーのおばさまが「端に寄れないわ、ギャーこわい!」と私にしがみついてきましたが、車も最徐行しているので、大丈夫。
時々、橋の真ん中に、石が埋め込まれています。
ここを基点に、対向車同士がすれ違うんだとか。
これはすごい!怖そうですねー。その光景を見てみたかったのですが、対向車は通りませんでした。
この辺りでは、沈下橋を通れなければ、運転免許は取れないんだそうです。レベル高いわ。
せせらぎを身近に感じることができる沈下橋。
なぜ身近にないのか、心から残念でなりません。
時間が許す限り、何度でも橋の上を行ったり来たりしたかったです。
川面が近く、ざあざあいう流れに耳を預けて、緑の山々に見とれました。
橋の上からの動画も撮ってみました。
水量が多いのがお分かり頂けるかと思います。
○ しまんと・あしずり号
それから集合時間になり、バスは発車しました。
ガイドさんから、四万十川で結婚式が行われる話を聞きました。
4月10日は四万十の日とされ、抽選で選ばれたカップル3組の結婚式が4万10円(普段は12万円以上)で行われるとのこと。
人気が高くて、毎年、全国から50組程度の応募があるそうです。
地元以外の応募者も多く。これまでで一番遠いのはLAのカップルだということ。
すてきだわー。
花嫁行列が沈下橋の上をしずしずと渡っていく様を想像して、うっとりしていたら、おもむろにガイドさんのケータイが鳴り、現実に引き戻されました。
電話に出て「え?うそっ、どうしようー!」と頭を抱えて叫び出すガイドさん。
乗客たちは「なんだなんだ?」とざわざわしはじめます。
なんと、乗客2名を沈下橋に置き忘れてきてしまったんだそうです。
それってありえないー!人数確認をしなかったのね!
まだ乗客の個体判別がついていないため、誰もがきょろきょろしましたが、言われてみると確かに、空席が2つありました。
なによりもガイドさんがパニックになっているため、誰も何も言えません。
もうかなり遠くまで来てしまいましたが、もちろん乗客を置きざりにすることはできないため、バスはUターンして、急いで元の場所に向かいました。
置いてかれたお客さんは、当然ながら憮然としていましたが、ガイドさんが平謝りして、ようやくバスの中にホッとした空気が漂いました。
このことがきっかけで、はじめはよくわからずにいた他の乗客が、次第に個体認識ができるようになってきました。
全員で20名弱。見た目が強烈に浮いている関西のラブラブカップルがいたり、いつも宙を見つけてほほ笑んでいる、一人参加のオタクっぽい青年がいたり。
不思議な面々です。
バスは、近道をして遅れた時間を挽回していきました。
車道はくねくねとした急カーブ。(酔わないかな)と心配になって隣を見ると、ユキも不安な顔をしていたので、同じことを考えているのかと思ったら、
「レンタサイクルしたら、この道を通ることになったんじゃない?こんなバスすれすれの急カーブを」と青くなっていました。
どうなんでしょう?考えたら怖くなるから、そういうことを考えちゃだめよ!
途中、三里沈下橋の近くを通りました。
予定では、ここから飛び込むつもりだったので、夢が破れた恨めしげなまなざしを向けてみましたが、橋には誰一人いませんでした。
おそらく雨上がりで増水しているからでしょう。
見るからにかなりの急流で、たしかに飛び込むにはちょっと怖い気がしました。
○ 屋形船
さらに上流の方へと上って行き、屋形船に乗り替えました。
ここから、舟で四万十川下りをします。
ゆるやかな流れにのって進み、水面に近い目線から見る四万十川。
川面を渡る風が心地よく、ボートに乗っているようです。
すっぽりと川に包まれているようで、とても雄大な気持ちになり、深くリラックスできました。
本当は、高瀬沈下橋の下を通るはずでしたが、水かさが増しており、船が橋の下を通れないからと、中止になりました。
残念です。そのかわり、舟はもっと上流へ行きました。
カヌーに乗って自然体験をしている人たちが大勢おり、私たちの舟に向かって、カヌーに乗ったままで水につかっては起き上がり、くるくる回るデモンストレーションを見せてくれました。
腹筋力がない私がやったら、身体を起こせずにそのままブクブク沈んでしまいそう。
みんなで拍手喝さいしました。
川に浮かんでいると、流れがそのまま自分の中に入り込んできて、身体を通過して行くような気になります。
そうして自分が浄化される感じ。
自分が川と一体化したようで、とにかく気持ちがいいのです。
○ 蛇紋岩探し
舟から降りた後、河原に行き、小さなマグネットを片手に、磁石にくっつくという蛇紋岩を探しましたが、全く見つけられず。
ユキは、ダムを作るのが好きだと、磯遊びをしていましたが、四万十の澄んだ水面が、川底を動かしたことですっかり崩れてそこだけ濁っていました。
ガーディアン・エンジェルズに言いつけるわよー!
早々に蛇紋岩をあきらめた私は、普通の石を探しはじめ、たくさんの石の中から気に入ったものを一つ見つけて、持って帰ることにしました。
バスに戻ったら、ガイドさんに「蛇紋岩は見つけられましたか?」と聞かれました。
当然見つからなかったよ、と言おうとしたら、何人も見つけた人がいたので、「アレ?」と思いました。
結局あとで、ガイドさんに蛇紋岩と磨き紙ヤスリセットをいただきました。
バスの中は、冷房が効いていますが、強い日差しが差し込むと、それだけで汗が出てきそう。
今回はつくづく、一日レンタサイクルにしなくてよかったと思います。
とてもじゃないけど、暑さで耐えられなかったことでしょう。
○ 民宿せせらぎ荘
中村駅でバスを下りてから、宿の女将さんに車で迎えにきてもらいました。
昨日の大きな温泉旅館とはうって変わって、この日は小さな民宿に泊まります。
初めて会う人、初めて乗る車なので、緊張していたら、女将さんはとても気さくで、すぐに弾丸おしゃべりが始まりました。
オーストラリアと香港のお客さんが来て、話が伝わらず、困っていたとのこと。
四国に来てから、ほとんど外国人姿を見ていませんでしたが、ちゃんとインターナショナルなんですね。
宿に着いたら、ワーホリで来日中のオーストラリア人のジョージが立ちつくしていたので、さっそく布団の敷き方やお風呂の使い方を伝えました。
○ 味劇場ちか
私たちが通されたのは、茶の間のある部屋で、ベランダからは四万十川が見えました。
とにかく汗だくになった身体をさっぱりさせたくて、荷物を置いたらすぐお風呂に入りました。
お風呂から上がり、しばし涼んでから、夕方、女将さんに味劇場ちかに車で連れて行ってもらいます。
そこで夕食を食べました。
鯨の筋煮込み↓
ウツボのたたき↓
ウツボのたたきや鯨の筋煮込みなど、メニューには変わったものがいろいろ書かれており、海の幸の恵みを感じます。
「せっかく土佐に来たんだから」と、いろいろ食べてみました。
どれも文句なしにおいしかったです。
ウツボは、おっかなびっくりでしたが、白身でササミのようにあっさりした食感でした。
お店でゆっくり過ごし、地元の海産物を存分に味わいました。
サワー一杯ですっかり酔っぱらったため、宿まで歩いて帰ることに。
迷うかなと思いましたが、ユキのナビのおかげで何とか無事に辿りつきました。
昼に自転車で通った赤い鉄橋にさしかかったので、橋の真ん中まで行って、下をのぞいてみました。
夜の四万十川。多摩川や鶴見川のようにライトで明るく照らし出されてはおらず、真っ黒な水面となっていたため、ユキが怖がります。
川沿いに住んでいる私は、夜の川も見慣れているため、見えづらさに多少緊張はしますが、それほど怖くはありません。
「こわいこわい」としきりにおびえるユキに「落ちたら落ちたでその時だし、あなたが落ちたら助けるから」となだめたら、「イケメンだね☆」と言われました。
イケメンってほめられちゃった!今度は男前って言って!(なんか違う)
帰宅したら、宿の女将さんと旦那さんにすぐにつかまり、玄関先で身の上トークタイムに。
一緒に写真を撮り、旦那さんがその場でプリントしてくれました。
話に取り込まれて、なかなか圧倒されますが、気さくに接してもらえて、なんだか親戚の家に遊びに来たような気分になりました。
それからまたお風呂に入りました。隣の部屋の香港3人娘と、順番を譲り合いながら。
私たち以外のお客さんは外国人ばかり。それで女将さんは集中して私たちに話しかけてきたのね~、と気が付きました。
お風呂上がり、腕が日焼けして、真っ赤になっているのを見つけて、キャー!と悲鳴を上げそうになりました。
レンタサイクルの時でしょう。腕カバーをはめていましたが、だんだんずり落ちてきて、直すゆとりもなかったので。
日焼け止めを塗りきれていなかったんだわー。
なんだか腕輪のように、一か所だけ焼けてしまいました。
ここ数年、まともに日に焼けたことがなかったため、なかなか衝撃的でした。
前日は、移動の日でしたが、この日はほぼ中村で一日過ごしました。
明日は早起きして、7時の電車に乗る予定でしたが、最終日だし無理せずゆっくり行こうと、出発の時間を変更することに決め、二人で夜更かしして、いろいろとお喋りしました。
2時半ごろに就寝。
朝6時前に起床。ユキはまだ寝ており、一人で朝風呂に入りに行きました。
露天風呂につかり、さっぱりして支度をすませ、急いで朝食をとってチェックアウト。
出口で、『功名が辻』の顔はめパネルを見つけた私、はたと立ち止まります。
「写真に撮ってー!」
迷わず山内一豊の方から顔を出した私に、「そっちかーい!」とユキはすかさず突っ込みを入れました。(さすがのナニワ道)
この旅館は、高知市内で唯一温泉が出ることのほかに、第15代土佐藩主山内容堂公の下屋敷跡に建っている、由緒正しいお宿。
敷地内には国重要文化財の旧山内家下屋敷跡長屋があり、重厚な門構えでした。
でも私、山内一豊に駆逐された、悲劇の長宗我部派なんですよね~。(ハイ、歴女です!)
なんだか敵の陣地に泊まってしまった気分。
ちなみに長宗我部元親の居城跡は、桂浜にあります。
目の前には、昨夜ライトアップされていた高知城が見えました。
高知市街を一望できる場所にあるんですね。
路面電車を乗りついで、駅まで行きました。
「快適だけれど、あまり高知駅に行く人がいないね」とユキ。
官庁街は別の方面にあるのかしら。
私は乗客数よりも、出口の狭さが気になりました。
太った人はここを通過できないんじゃない?
おなかをひっこめれば、意外となんとかなるもの?
車両内には行き先パネルが何枚かあり、「ごめん」行きのパネルを持って、写真に撮ってもらいました。
今度、あやまりづらいことがあったら、この写真を黙って見せよう。そうしよう。
実は、NPO出版の『高知遺産』という写真集をこの前読み、モデルがこのパネルを抱えているのを見て、(このポーズ、私もやってみたい)と思っていたのでした。
念願、一つクリアです。
○ 特急あしずり
高知駅には、風鈴の下にはりまや橋と鳴子を模したオブジェがありました。
来週のよさこい祭りに向けて、町全体が盛り上がっている感じ。
そういえば「高知には鳴子の自販機がある」と聞いてワクワクしていましたが、まだ見かけていません。
本当にあるのかな~?
8時20分発の特急あしずりに乗りました。
指定席を取った時に「バースデーきっぷの方には、こちらを差し上げております」と渡されたのが「JR SHIKOKU 2012 YEAR BOOK」。
見るからにマニアック。これは女性にはピンとこないだろうなあ。
私も正直、まったくグッときません。
でも喜ぶディープな友人がいそうなので、ありがたくいただきました。
席は2列目。ユキは「1列目だとよく見えたのにね~」と残念そう。
1列目に乗っていたおじさんの手にも、先ほどの冊子があり(この人も今月お誕生日なんだ。いっしょ★)と思います。
発車前の時間を、ホームで撮影にいそしむ男性、つまり鉄ちゃんが何人もいました。
この電車も単線。長距離特急なのに。どこかで鉢合わせしたりしないものなのねえ、と、まだ単線感覚になじめない私。
本当なら、窪川駅で降りて予土線に乗り換え、江川崎駅からレンタサイクルをして四万十川を40km下っていくというプランでしたが、昨日あまりに容赦ない暑さを体感した私たちは、恐れをなし、いさぎよく予定を変更することにしました。
こういう面で話が合う人って、一緒に旅してとても助かるわ。
○ 中村駅
そこで、終点中村駅まで行きました。
リノベーションされた待合室は、明るいウッディな空間でとてもいい感じ。
先日、宿毛市のリノベーションプロジェクトを請け負った都市空間デザイナーと知り合ったことを思い出しました。
ここからはレンタカーで移動しようと話していましたが、駅前にあったお店二社とも、車はフル貸し出し中とのことで、借りられず。
月曜日なのに満員御礼なのね―。
観光案内所に相談したら、沈下橋を訪れる午後発の観光バスがあると教えてもらったので、さっそく予約を入れました。
集合まで少し時間があるため、江川崎駅で借りる予定だったレンタサイクルを、ここでちょっとだけしてみることにしました。
予定を丸潰しするのもなんだか残念だったので。
しかし、この好奇心が仇となるのであった…。
○ りんりんサイクル
自転車で、観光案内所の人に勧めてもらったトンボ王国に向かうことにします。
貸してもらうのは、マウンテンバイク。
乗る段階になって、マウンテンバイクに乗るのは初めてだと、気が付きました。
ユキもだそう。私たち、大丈夫かしら?
まず、サドルに腰掛けられずに、四苦八苦します。
さらにハンドルを固定できず、方向が定められずに、グラグラ。
普通のチャリとは、重心のかけ方やバランスのとり方が、ちょっと違うものなんですね。
たぶん、後ろから足を振り上げて乗るのが正解なんですが、ママチャリのように、前側から足を伸ばしてみたため、また弁慶の泣き所をぶつけてしまいました。
昨日、室戸岬の自転車でぶつけたところと一緒~。い、痛い~。
自転車なので、帽子をかぶっても、風ですぐにぬげてしまいます。
前かごがないため、後ろの荷台に置いたバッグが、バランスを崩して何度も落ちたり(紐も借りるんでした)、帽子をおさえたり、なにやかにやともたもたしているうちに、日焼けを気にしないユキは、ハンドリングのコツをつかんで、すいすい先に行ってしまいました。
もう後ろ姿が見えないー。おーい、私地図持ってないのよー。
少しペダルをこいだだけで、汗だくになります。今日も半端ない暑さ。
ユキに追いつこうと、せっせとペダルをこぎ続け、ようやくおおきな川にかかった赤い鉄橋にさしかかりました。
これが四万十川なのね~。
想像していたよりも雄大です。山々に囲まれているから、自然そのままの川の流れが際立つのでしょうか。
ゆったりとした川の流れに、しばし暑さを忘れました。
トンボ王国に到着。ここは、約5.7ヘクタールの広さがあり、ナショナル・トラストによる世界初のトンボ保護区なんだそうです。
青森で蝶を研究している、チョウ博士の叔父のことを思い出しました。
叔父がここに来たら、大興奮するだろうなあ。
ここは地元の人々の好意で土地を提供してもらい、今はWWFによって管理されているそうです。
たしかにパンダのロゴがありました。
蓮が美しく花開いていました。
奥へと続く道に入っていきましたが、行けども行けども道は続き、どんどん原野に入り込んでいきます。
台風の名残で道はぬかるんでおり、水たまりにはまってハンドルやペダルをとられないようにするのが精いっぱい。
草に車輪を取られて走りづらくなってきた頃、ケータイが鳴りました。
(こんな人里離れたような場所でも、通じるんだ)と驚くと、それはイトコからのメール。
次に訪れる旅程についての質問でしたが、まったく余裕がない時だったため、「田舎の中にいるので、またあとで~」と写メを返して、来た道を引き返しました。
王国そばの橋の欄干4隅には、巨大なトンボの像がありました。
橋の名前も「やんまばし」。本当にトンボ王国です。
それから、町なかへ戻って、一条神社をお詣りしました。
応仁の乱で京都から逃れてきた一条教房を奉る神社。古めかしく、歴史を感じました。
彼がこの地を京都風に造ったため、碁盤目状に街並みが広がり、祇園、京町、鴨川、東山といった地名があるために、中村は土佐の小京都と呼ばれるそうです。
境内からは、お城が見えました。
高知城・・・じゃなくて、中村城跡に建てられた歴史資料館だそうです。
本当は、安並の水車群を訪れたかったのですが、これ以上サイクリングを続ける気力体力ともになく、時間も押してきたため、観光案内所に戻って自転車を返しました。
大汗をかき、ぐったりしましたが、涼しい場所で昼食をとって一息つきます。
青のりの釜たまにしました。青のりのうどんは初めて。
(ここは高知の南だけれど、これは讃岐うどんかしら?)などと考えていたら、うっかり熱い麺を頼んでしまいました。
ユキは、ぶっかけ青のりうどんにしていました。
○ 沈下橋
ひと心地ついてから駅へ移動し、観光バス「しまんと・あしずり号」に乗り込みました。
現地なまりで解説をしてくれるバスガイドさんが、なかなか新鮮。
まずは佐田の沈下橋へ向かいます。
今回とっても楽しみだった、四万十川の沈下橋。
実際に見るのは初めてです。実際に歩くことができて、感動しました。
本当に欄干がないんです。流れの上にかけられた、まっすぐな道。
とてもステキで、見ているだけでワクワクします。
ただ、この日は台風接近のために天気が荒れており、水かさが増してあまり水も澄んでいなかったのが残念。
ほとんど流れがなさそうなイメージを持っていましたが、橋からのぞく水流は、かなりの速度です。
河口近いため、ここは一番長い沈下橋だとのこと。
300mという長さは、たしかに結構あります。
端から端まで渡っていきました。私はわくわくドキドキ、踊り出したい気分。
♪ Sur le pont d'Avignon L'on y danse, l'on y danse~♪
吊り橋を渡る時のようなときめきを感じます。
反対に、ユキは怖がって、蒼ざめてこわばった表情。
橋歩きをあまり楽しめていないようです。
川面へぐっと身を乗り出した写真を撮ってもらおうと、ポーズをとったら、周りから「キャー」という悲鳴が上がりました。
・・・沈下橋への反応がおかしいのは、ユキではなく私の方?
橋は、人だけでなく車も通ります。
軽トラックがやってきて、おっかなびっくり歩いているツアーのおばさまが「端に寄れないわ、ギャーこわい!」と私にしがみついてきましたが、車も最徐行しているので、大丈夫。
時々、橋の真ん中に、石が埋め込まれています。
ここを基点に、対向車同士がすれ違うんだとか。
これはすごい!怖そうですねー。その光景を見てみたかったのですが、対向車は通りませんでした。
この辺りでは、沈下橋を通れなければ、運転免許は取れないんだそうです。レベル高いわ。
せせらぎを身近に感じることができる沈下橋。
なぜ身近にないのか、心から残念でなりません。
時間が許す限り、何度でも橋の上を行ったり来たりしたかったです。
川面が近く、ざあざあいう流れに耳を預けて、緑の山々に見とれました。
橋の上からの動画も撮ってみました。
水量が多いのがお分かり頂けるかと思います。
○ しまんと・あしずり号
それから集合時間になり、バスは発車しました。
ガイドさんから、四万十川で結婚式が行われる話を聞きました。
4月10日は四万十の日とされ、抽選で選ばれたカップル3組の結婚式が4万10円(普段は12万円以上)で行われるとのこと。
人気が高くて、毎年、全国から50組程度の応募があるそうです。
地元以外の応募者も多く。これまでで一番遠いのはLAのカップルだということ。
すてきだわー。
花嫁行列が沈下橋の上をしずしずと渡っていく様を想像して、うっとりしていたら、おもむろにガイドさんのケータイが鳴り、現実に引き戻されました。
電話に出て「え?うそっ、どうしようー!」と頭を抱えて叫び出すガイドさん。
乗客たちは「なんだなんだ?」とざわざわしはじめます。
なんと、乗客2名を沈下橋に置き忘れてきてしまったんだそうです。
それってありえないー!人数確認をしなかったのね!
まだ乗客の個体判別がついていないため、誰もがきょろきょろしましたが、言われてみると確かに、空席が2つありました。
なによりもガイドさんがパニックになっているため、誰も何も言えません。
もうかなり遠くまで来てしまいましたが、もちろん乗客を置きざりにすることはできないため、バスはUターンして、急いで元の場所に向かいました。
置いてかれたお客さんは、当然ながら憮然としていましたが、ガイドさんが平謝りして、ようやくバスの中にホッとした空気が漂いました。
このことがきっかけで、はじめはよくわからずにいた他の乗客が、次第に個体認識ができるようになってきました。
全員で20名弱。見た目が強烈に浮いている関西のラブラブカップルがいたり、いつも宙を見つけてほほ笑んでいる、一人参加のオタクっぽい青年がいたり。
不思議な面々です。
バスは、近道をして遅れた時間を挽回していきました。
車道はくねくねとした急カーブ。(酔わないかな)と心配になって隣を見ると、ユキも不安な顔をしていたので、同じことを考えているのかと思ったら、
「レンタサイクルしたら、この道を通ることになったんじゃない?こんなバスすれすれの急カーブを」と青くなっていました。
どうなんでしょう?考えたら怖くなるから、そういうことを考えちゃだめよ!
途中、三里沈下橋の近くを通りました。
予定では、ここから飛び込むつもりだったので、夢が破れた恨めしげなまなざしを向けてみましたが、橋には誰一人いませんでした。
おそらく雨上がりで増水しているからでしょう。
見るからにかなりの急流で、たしかに飛び込むにはちょっと怖い気がしました。
○ 屋形船
さらに上流の方へと上って行き、屋形船に乗り替えました。
ここから、舟で四万十川下りをします。
ゆるやかな流れにのって進み、水面に近い目線から見る四万十川。
川面を渡る風が心地よく、ボートに乗っているようです。
すっぽりと川に包まれているようで、とても雄大な気持ちになり、深くリラックスできました。
本当は、高瀬沈下橋の下を通るはずでしたが、水かさが増しており、船が橋の下を通れないからと、中止になりました。
残念です。そのかわり、舟はもっと上流へ行きました。
カヌーに乗って自然体験をしている人たちが大勢おり、私たちの舟に向かって、カヌーに乗ったままで水につかっては起き上がり、くるくる回るデモンストレーションを見せてくれました。
腹筋力がない私がやったら、身体を起こせずにそのままブクブク沈んでしまいそう。
みんなで拍手喝さいしました。
川に浮かんでいると、流れがそのまま自分の中に入り込んできて、身体を通過して行くような気になります。
そうして自分が浄化される感じ。
自分が川と一体化したようで、とにかく気持ちがいいのです。
○ 蛇紋岩探し
舟から降りた後、河原に行き、小さなマグネットを片手に、磁石にくっつくという蛇紋岩を探しましたが、全く見つけられず。
ユキは、ダムを作るのが好きだと、磯遊びをしていましたが、四万十の澄んだ水面が、川底を動かしたことですっかり崩れてそこだけ濁っていました。
ガーディアン・エンジェルズに言いつけるわよー!
早々に蛇紋岩をあきらめた私は、普通の石を探しはじめ、たくさんの石の中から気に入ったものを一つ見つけて、持って帰ることにしました。
バスに戻ったら、ガイドさんに「蛇紋岩は見つけられましたか?」と聞かれました。
当然見つからなかったよ、と言おうとしたら、何人も見つけた人がいたので、「アレ?」と思いました。
結局あとで、ガイドさんに蛇紋岩と磨き紙ヤスリセットをいただきました。
バスの中は、冷房が効いていますが、強い日差しが差し込むと、それだけで汗が出てきそう。
今回はつくづく、一日レンタサイクルにしなくてよかったと思います。
とてもじゃないけど、暑さで耐えられなかったことでしょう。
○ 民宿せせらぎ荘
中村駅でバスを下りてから、宿の女将さんに車で迎えにきてもらいました。
昨日の大きな温泉旅館とはうって変わって、この日は小さな民宿に泊まります。
初めて会う人、初めて乗る車なので、緊張していたら、女将さんはとても気さくで、すぐに弾丸おしゃべりが始まりました。
オーストラリアと香港のお客さんが来て、話が伝わらず、困っていたとのこと。
四国に来てから、ほとんど外国人姿を見ていませんでしたが、ちゃんとインターナショナルなんですね。
宿に着いたら、ワーホリで来日中のオーストラリア人のジョージが立ちつくしていたので、さっそく布団の敷き方やお風呂の使い方を伝えました。
○ 味劇場ちか
私たちが通されたのは、茶の間のある部屋で、ベランダからは四万十川が見えました。
とにかく汗だくになった身体をさっぱりさせたくて、荷物を置いたらすぐお風呂に入りました。
お風呂から上がり、しばし涼んでから、夕方、女将さんに味劇場ちかに車で連れて行ってもらいます。
そこで夕食を食べました。
鯨の筋煮込み↓
ウツボのたたき↓
ウツボのたたきや鯨の筋煮込みなど、メニューには変わったものがいろいろ書かれており、海の幸の恵みを感じます。
「せっかく土佐に来たんだから」と、いろいろ食べてみました。
どれも文句なしにおいしかったです。
ウツボは、おっかなびっくりでしたが、白身でササミのようにあっさりした食感でした。
お店でゆっくり過ごし、地元の海産物を存分に味わいました。
サワー一杯ですっかり酔っぱらったため、宿まで歩いて帰ることに。
迷うかなと思いましたが、ユキのナビのおかげで何とか無事に辿りつきました。
昼に自転車で通った赤い鉄橋にさしかかったので、橋の真ん中まで行って、下をのぞいてみました。
夜の四万十川。多摩川や鶴見川のようにライトで明るく照らし出されてはおらず、真っ黒な水面となっていたため、ユキが怖がります。
川沿いに住んでいる私は、夜の川も見慣れているため、見えづらさに多少緊張はしますが、それほど怖くはありません。
「こわいこわい」としきりにおびえるユキに「落ちたら落ちたでその時だし、あなたが落ちたら助けるから」となだめたら、「イケメンだね☆」と言われました。
イケメンってほめられちゃった!今度は男前って言って!(なんか違う)
帰宅したら、宿の女将さんと旦那さんにすぐにつかまり、玄関先で身の上トークタイムに。
一緒に写真を撮り、旦那さんがその場でプリントしてくれました。
話に取り込まれて、なかなか圧倒されますが、気さくに接してもらえて、なんだか親戚の家に遊びに来たような気分になりました。
それからまたお風呂に入りました。隣の部屋の香港3人娘と、順番を譲り合いながら。
私たち以外のお客さんは外国人ばかり。それで女将さんは集中して私たちに話しかけてきたのね~、と気が付きました。
お風呂上がり、腕が日焼けして、真っ赤になっているのを見つけて、キャー!と悲鳴を上げそうになりました。
レンタサイクルの時でしょう。腕カバーをはめていましたが、だんだんずり落ちてきて、直すゆとりもなかったので。
日焼け止めを塗りきれていなかったんだわー。
なんだか腕輪のように、一か所だけ焼けてしまいました。
ここ数年、まともに日に焼けたことがなかったため、なかなか衝撃的でした。
前日は、移動の日でしたが、この日はほぼ中村で一日過ごしました。
明日は早起きして、7時の電車に乗る予定でしたが、最終日だし無理せずゆっくり行こうと、出発の時間を変更することに決め、二人で夜更かしして、いろいろとお喋りしました。
2時半ごろに就寝。
[東京→なんば→和歌山→徳島→室戸岬→高知]
○ prologue
吊り橋の魅力に目覚めてからというもの、こまめに近郊の吊り橋を訪れるようにしています。
でもやっぱり気になるのは、日本三大奇橋の一つ、徳島のかずら橋。
どれほどのものなのか、いつか渡ってみたーい、と願っていたところ、ユッキーナから「一緒に四国に行ってみる?」と声をかけてもらったので、二つ返事で行くことにしました。
ツアーではなく、フリーで行くことにしましたが、二人とも四国は初めて。
四国旅行をした人の話を収集すると、電車よりも車で移動する方がだんぜん便利そうですが、私たちは、見知らぬ土地の細い山道を運転するのがとても不安だったので、電車とバスを使っての旅にしました。
四国には白装束のお遍路さんが大勢歩いているでしょうからね。ドライブも敬意を払って、気をつけないと。
大阪のユキとの待ち合わせは、南海なんば駅に朝7時。
前日まで抜けられない仕事があったため、前泊はできず、それほど早朝に着く飛行機も新幹線もなかったため、深夜バスで向かいました。
カーテンで仕切られる3列なので、バスの中はとても静か。
耳栓をしたら、ぐっすり眠れて、途中2回のSA休憩にも全く気づくことなく、大阪に着いたという朝の放送で起こされました。
寝ぼけていたので、あわてて降りる人の後について自分も降り、専用ラウンジで名前を言いました。
するとそこは梅田で「あなたの降車予定場所と違うがいいか?」と聞かれ、はたと間違いに気付いて、またあわてて走りかけたバスに戻りました。
黒ひげ危機一髪。
まあ、旅にハプニングはつきものですからね。
○ 待ち合わせ
なんばで降り、ラウンジでひと呼吸ついてから、すぐ近くのなんば駅に向かいました。
まだ朝なのに、すでにアスファルトから立ち上る暑さを感じます。
駅ではユキが待っていてくれました。無事待ち合わせができて、よかった~。もう旅の半分は成功した気分。
南海なんば駅は、とても大きくてキョロキョロします。
バスが早く着いたからよかったものの、予定時間ピッタリの到着だったら、電車発まで10分しかなく、かなりの綱渡りだったんだなあとひやりとしました。
特急サザンからは通天閣が見えました。つうてんかく!実際に見たのは初めてで、テンションがあがります。
一日前に大阪に着けていたら、浪速の友人ヒトミちゃんに花火に連れて行ってもらえたので、ちょっと残念。
彼女に「今着いたよ!」と新今宮駅からの画像を送りました。
快調に電車は進み、終点の和歌山港駅に8:13到着。
その前に和歌山市駅もあり、なんだかネーミングが気になりました。
和歌山市には、この駅しかないような印象を受けてしまいます。港と区別しているんでしょうけれどね。
駅はフェリー乗り場に接続しており、よくわからず通路を歩いていたら、そのまま舟に乗り込めました。
○ 南海フェリー
フェリーには、大きな萌えキャラの絵が描かれていました。きららちゃんとまいちゃんです。
事前にサイトを見ていたので、知ってはいましたが、それでもびっくり。
普通にかわいくて、思っていたほどイタさは感じませんでした。
それでも、フェリー内に、浴衣姿の「魔法の天使クリィミーマミ」の鳴門阿波踊りのポスターが貼られていたので、驚きました。
ちなみに、徳島阿波踊りのポスターは、また別のアニメデザインでした。
「Fate/Zero」と「テイルズオブ」だとか。
あとで、徳島に詳しい知人に聞いたところ、「ここ数年、阿波踊りはアニメとコラボしており、この時期になるとアニメファンが続々と上陸している」とのこと。
なんと、四国(徳島限定?)は知られざるアニメアイランドだったんですね~。
徳島までは2時間ほどの船旅。私は夕べ飲んだ酔い止めがまだ効いていますが、フェリーに乗った途端にユキが「あ、この揺れ、酔いそう」と言ったため、薬を渡しました。
薬のおかげで、二人ともフェリーでぐっすり熟睡。お互い朝が早かったし、待ち合せがそれぞれに不安だったため、ひと安心しました。
こんなに旅の待ち合わせで不安だったのは、以前パリのシャルル・ド=ゴール空港で、バングラデシュ航空で私の10日後にやってくるサオリと待ち合わせをした時以来だったわ。
酔うことなく快適に、無事に初四国に上陸しました。
徳島は蒸し暑く、南に来たなあという感じ。駅までのバスに乗ると、まだエンジンがかかっておらず、冷房のない暑さを感じました。
ずいぶん長くバスは走ります。港から駅までは思ったよりも遠い様子。
駅前は開けていてそごうがあり、思ったより都会でした。
駅前の郵便ポストの上に乗っているのは、阿波踊り。
青森のポストには、ねぶたが乗っています。お国柄ですね。
○ 徳島ラーメン
電車の時間まで少しあったため、食事をすることに。やっぱり、東京では食べられない、徳島ラーメンに挑戦したいものです。
お兄さんが店の前で客引きをしていた、駅ビルの「岩国」というお店に入りました。
お店の入り口には、お遍路さんの菅笠が置かれてあり、「おお」と思います。
細麺で、醤油味にとんこつ風味?そして豚バラ肉?初めての感じでしたが、発車時間が迫ってきたため、急いで食べました。
思ったよりもあっさりと食べられたのは、量が少なめだったから。
徳島ラーメンはご飯のおかずと見なされており、本来はライスと一緒に食べるものだと、後で知りました。
○ 四国バースデーきっぷ
駅の窓口で四国バースデーきっぷを購入。
誕生月の人を対象にした、3日間有効のJRのお得な切符です。今回は、これで四国を巡ります。
同行者も同じ値段で購入できるのが、嬉しいところ。
誕生月チケットを取り扱っているのは、鉄道ではJR四国だけだそうです。
改札で出したら、駅員さんがそれを見て「おめでとうございます♪」と笑顔で言ってくれました。
駅員さんに改札でお祝いされるなんて、完全に予想外。
初めてのことだったので、びっくりしましたが、うれしかったです。
ホームには、「四国遍路を世界遺産にしよう!」ポスターが何枚も貼られていました。
雄大な構想ですが、サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路も、紀伊山地の霊場も、世界遺産に認定されているので、なってもおかしくなさそうですね。
○ 牟岐線
やってきたのは、たった一両のみの列車。驚いて目をパチクリさせますが、これに乗りました。
各駅停車ですが、一両きりなので結構混んでおり、ようやく座れました。
車両を増やせばいいのに。込んでいるのは、この辺りだけなのかしら。
線路は一車線。走行中には電車とすれ違わないということですね。
まあ、県庁所在地の、徳島一大きな駅から、こんなにかわいらしい電車が走っているとは。
電車に乗る時に「回数券をお取り下さい」と放送されていました。たしかに、乗降口には回数券が出ています。
「ええっ、回数券が必要なの!?」と驚いたら、「この都会人め!」とユキに言われました。
ののしられても、理解できなーい! どういうこと? 私って都会人なのね(笑)
今回は旅程をユキが、宿探しを私が担当しました。
電車は酔う割に好きな方ですが、名前を覚えるのが苦手で「あれ、ムギ線だっけ?サギ線だっけ?」と間違えてばかりの私に、忍耐強く「トキ線!」と教えてくれるユキ。
「この線に乗ってみたかったー」と嬉しそうでしたが、その割にすやすやお休みしており、私の方が、鉄っちゃんに混じって、空いてきた車両内のあちこちに移動しては、熱心に写真を撮っていました。
シーサイドラインと言われる割には、なかなか海が見えず、行けども行けども山ばかり。
途中、少しだけ、浜辺が見えるところがありました。それでも、グリーンラインの方が合うのに。
前の駅名が「ゆき」、次の駅名が「きき」って、なんだかカワイイ響きですね。
乗っている間、大雨が降ったりやんだりします。
ちょうど今、台風が近づいている時で、天候もあやふや。
雨になるたびに不安になりながら、空を見守りました。
2時間ほど乗り、終点の海部駅に到着。
乗りこんだ時には大混雑していた車両内も、数名のみとなっていました。
始発駅から乗り倒したのは、私たちくらいではないかしら?
○ 阿佐海岸鉄道
そのまま、隣のホームに止まっている阿佐海岸鉄道に乗り換えます。
こちらも一両のみ。
入った瞬間、和風の風鈴列車になっていて、なんだかリゾート感覚。
走りだすと、たくさん飾られた風鈴がリンリンと鳴り始め、とても納涼感にあふれます。
すだれもかかり、投稿の和歌も飾られ。手作り感満載の暖かい雰囲気なのに、乗客は私たちを含めたったの3名。
そしてこの鉄道は、運行距離がたったの2駅しかないのです。切ないわー。
2駅先の終点、甲浦駅で降りる時には、駅員さん2名がうちわをくれました。
運営が大変な赤字ローカル線なのに、こんなグッズを作ってくれるなんて、申し訳なくて、とてもじゃないけど捨てられないー。
家までちゃんと持って帰ります。
○ 御厨人窟(みくろど)
甲浦駅からは、もう電車はありません。
本当ならば、室戸岬経由で四国の海岸を電車でつなぐ計画があったそうですが、バブルがはじけて、頓挫してしまったそうです。
それで、第3セクターが2駅間のみの鉄道を運営していたりするわけですね。
ここからは、バスに乗り換えて室戸岬へ向かいます。
海岸線をくねくねと走っていくため、ほどよい揺れに今度は私が寝こけ、ユキに声をかけてもらいました。
さっきまで大雨で「"室戸岬はすごい嵐です!"ってレポーターごっこしなくちゃ」と話していましたが、今ではすっかり止んで、夏の空高く、日差しがカンカンに照りつけています。
それに加えて、大雨の名残ですさまじく湿気が高く、蒸し暑さが身体にこたえます。
南アジアに来ているみたい。
観光案内所で自転車を借り、御厨人窟まで行ってみました。
案内所にいたのは、ファンキーな話好きのおばさま。
「ここ、潮水ですぐ錆びちゃうから、ペダルも重いけど堪忍ね」と言われた通り、サドルの高さの合わない重いママチャリを必死にこいでいきます。
海沿いの強風にあおられて、日傘も帽子もつけられないまま、カンカン照りの暑さの中を向かいました。
そう遠くないところに御厨人窟はありましたが、とにかく暑さに弱い私は、急激に体力を奪われて、ゼーゼー、ハーハーしています。
それでも、ここは19歳の空海が籠もって修行し、悟りを開き、空海という名前に決めた洞窟。
室戸に来たら、ぜひともここを訪れたかったのです。
神明宮(弘法大師の修行場)と、五所神社(弘法大師の住居)とされる自然のままの海蝕洞が二つあり、どちらの中にも入ることができました。
ここに来られて感動しました。秘密めいた聖なる洞窟。
でも、洞窟内の湿気は外以上にハンパなくて、もう倒れそうなほどにぐったりです。
空海はここで悟りを開きましたが、凡人の私は今にも正気を失くして、蜃気楼が見えてきそう。
遠くに水が見える~。(そりゃ海際ですから)
もっと落ち着いた気候の時に訪れれば、静かに洞窟内を満喫できたと思いますが、今回は今回なりに、普通じゃないギリギリの感覚を保っているという点で、ちょっと空海の気持ちに近付けたような気がします。(ホント?)
この洞窟内で聞く波の音は、日本の音風景100選に選ばれているということですが、洞窟の外の方が、波音は高かったです。
○ 室戸岬
観光案内所にに自転車を返して、海沿いへ向かいました。
荒れ狂う風に汐が飛び散る荒い波。砂浜ではなく、岩と石だらけの海岸に圧倒されます。
東映映画のオープニングの波みたい。いえそれ以上でしょうか。
カメラを取り出すと、汐が入って動かなくなりそうで、二人ともあまり写真を撮れませんでした。
本当は、灯台まで行きたかったのですが、「徒歩20分の道を登っていくのが大変で、無理じゃない」と観光案内所のおばさまに言われたため、「詳しい人がそういうのなら」と諦めて、遠くから見るにとどめました。
といっても、なかなか見えません。
海辺まで出て、のぞき上げると、ようやく先っぽが少しだけ見えました。
近いのに、遠い灯台。でも暑さに弱い私たちは、もうすっかりパワーがなくて、辿りつけません~。
ここで貝殻を拾ったりして遊歩道を散策します。
こんなに暑くて、海沿いなのに、遊泳できないなんて、罪な場所だわー。
ユキは、波につかまったようで、人魚姫像のようにしばらく岩の上で足を乾かしていました。
私は、先ほどの重い自転車のペダルに弁慶の泣き所を打ちつけてしまい、岩の下で足をさすっていました。
観光案内所に三たびもどって、アイスを食べました。
中岡慎太郎のソフトで「あいすくりん」と書かれています。
もしや、これが、高知名物、アイスクリン?
案内所のおばさまに「凍ってるから少し手の熱で溶かしてから食べるといいなあ」と言われた通りに、手の平を当てていたら、暑さであっという間に溶け、むしろ液状化し始めていたので、慌てました。
岬のバス停前には、中岡慎太郎の大きな銅像が建っており、予想以上の巨大さでした。
慎太郎好きなので、嬉しいですが、顔をじっくり眺める気力もありません。
桂浜の竜馬像と向かい合っているとのこと。ラブラブね。
展望台からしばし海を眺めました。
三宅島も波が高かったけれど。ここの方がずっとすごいなあ。
すばらしく自然に満ちた場所なのですが、いかんせん暑さと湿気が容赦なく、思うように動けませんでした。
四国の荒々しい歓迎を受けた感じ。
やってきたバスに乗り、海岸線沿いを辿って奈半利へと向かいます。
先ほどは1970円、今度は1200円。こんなに高い路線バスは、初めて。
○ 土佐くろしお鉄道
奈半利で降り、土佐くろしお鉄道に乗り換えます。
やなせたかしのキャラクター、なはり子ちゃんの銅像がお迎えしてくれました。
それにしても、この鉄道の座席背もたれがとっても高くて、「ありえなくない?」と二人で笑いました。
これでは、必死に背筋を伸ばしても、全く前が見えませーん!
普通なら、前に座った人の頭が見えますが、人がいるのかいないのかもわからないくらい。
よっぽど大柄な人がデザインしたのでしょうか?
こぎれいな車両でとても快適。各駅にやなせ氏が手掛けたキャラクターがいるのも、かわいらしいです。
徳島のアニメコラボには驚きましたが、このくらいならナチュラルに受け入れられます。
そういえば、さっきから龍馬の銅像をあちこちで見かけます。
とっくに徳島から高知に入っていたんですね。室戸岬の慎太郎像前で気付かないなんて、遅すぎ!(すべて暑さのせいね)
安芸駅で、少し待ち時間があるとわかったので、「町の散策をしたい!」と私。
ここの野良時計を見てみたかったのです。
でも、駅に着いたら、隣に特急が待っていたため、そのまま乗り換えることになりました。
ああ、のらどけいー!
安芸の国といったら広島なのに、高知に安芸駅があるというのがなんだか不思議。
また外が暗くなり、急に大雨が降ってきました。でもすぐにやみます。きっとどこかに虹がでていることでしょう。
ごめん駅というのがおもしろいです。一つ手前は後免町駅。キャラクターは、ごめん・まちこさん。
ありがとう駅、という愛称らしいです。ごめんだから、ありがとう?
ごめん駅のキャラクターは、とにかく「ごめん、ごめん」と謝りまくっていました。
○ 高知駅
快調に電車は進み、終点の高知駅に着きました。
2つ前の駅まで完全な農村風景が広がっており、すぐ先に本当に行政都市があるのか不安でしたが、1つ前の駅辺りからぐぐっと都会になりました。
つまりビル街面積はさほど広大ではないということですね。
改札を出たすぐのところに、龍馬とお龍の写真がでかでかとあります。
明るい、開けた印象の駅前には、武市半平太、坂本龍馬、中岡慎太郎の3人の大きな像がデデンと立っていました。
去年建てられたばかりのものだそうです。大河効果でしょうね。
路面電車がメインストリートを頻繁に走っており、絵になります。
あ、ごめん駅行き。やっぱりごめんって謝ってるー。
高知駅前を知りたかったため、今日の宿まで歩いていきましたが、思ったよりも距離があって、汗だくになりました。
日曜市をのぞきたかったけれど、6時半頃になっていたせいか、もう市場の名残もありませんでした。
はりまや橋は、日本三大がっかりと言いますが、そもそもの由来を知らないだけに、特にがっかりしませんでした。
はりまや橋のたもとや、鏡川の土手向こうで、熱心によさこいの練習をしている団体がいました。
本番はもうすぐですからね。
鏡川に架けられた橋のデザインが、なんだかオベリスクのようでした。高知でエジプト発見?
○ 三翠園
ようやく、今日の宿の三翠園に7時着。高知市内唯一の温泉旅館です。
夕食は部屋食だと思っていましたが、食堂食という話で、ロビーで少し時間がかかります。
すっかり汗だくで疲れ切った私たち、最後には(もうどっちでもいい~)と、とりあえず温泉に向かいました。
食事前に入浴できて、ようやくさっぱり。
食事は皿鉢料理に鰹のたたき、刺身、海老鍋、土佐地鶏の唐揚げなどがずらりと並び、量もたっぷりで食べきれないほどでした。
今日は、大阪・和歌山・徳島・高知と、1府3県を移動し、考えてみれば、ほとんど乗り物に乗っていた一日でした。
よっぽど乗り物好きでないとこなせないルートだわー。
我ながら、よく動いたなあ。
やはり室戸岬は、想像を越えるすごさがありました。行って良かった。
ただ、覚悟はしていたものの、予想をはるかに上回る、暑さによる消耗。
南国に夏に行くのは、北国に冬に行くのと同じハードさがあって、軽く考えちゃいけないねと話し合いました。
部屋からはライトアップした高知城がまっすぐ見えました。白壁が闇に美しく映えています。
前日3時まで起きていたというユキは、先に就寝。
私は日記を書き、もう一度じっくり温泉に入ってから寝ました。
○ prologue
吊り橋の魅力に目覚めてからというもの、こまめに近郊の吊り橋を訪れるようにしています。
でもやっぱり気になるのは、日本三大奇橋の一つ、徳島のかずら橋。
どれほどのものなのか、いつか渡ってみたーい、と願っていたところ、ユッキーナから「一緒に四国に行ってみる?」と声をかけてもらったので、二つ返事で行くことにしました。
ツアーではなく、フリーで行くことにしましたが、二人とも四国は初めて。
四国旅行をした人の話を収集すると、電車よりも車で移動する方がだんぜん便利そうですが、私たちは、見知らぬ土地の細い山道を運転するのがとても不安だったので、電車とバスを使っての旅にしました。
四国には白装束のお遍路さんが大勢歩いているでしょうからね。ドライブも敬意を払って、気をつけないと。
大阪のユキとの待ち合わせは、南海なんば駅に朝7時。
前日まで抜けられない仕事があったため、前泊はできず、それほど早朝に着く飛行機も新幹線もなかったため、深夜バスで向かいました。
カーテンで仕切られる3列なので、バスの中はとても静か。
耳栓をしたら、ぐっすり眠れて、途中2回のSA休憩にも全く気づくことなく、大阪に着いたという朝の放送で起こされました。
寝ぼけていたので、あわてて降りる人の後について自分も降り、専用ラウンジで名前を言いました。
するとそこは梅田で「あなたの降車予定場所と違うがいいか?」と聞かれ、はたと間違いに気付いて、またあわてて走りかけたバスに戻りました。
黒ひげ危機一髪。
まあ、旅にハプニングはつきものですからね。
○ 待ち合わせ
なんばで降り、ラウンジでひと呼吸ついてから、すぐ近くのなんば駅に向かいました。
まだ朝なのに、すでにアスファルトから立ち上る暑さを感じます。
駅ではユキが待っていてくれました。無事待ち合わせができて、よかった~。もう旅の半分は成功した気分。
南海なんば駅は、とても大きくてキョロキョロします。
バスが早く着いたからよかったものの、予定時間ピッタリの到着だったら、電車発まで10分しかなく、かなりの綱渡りだったんだなあとひやりとしました。
特急サザンからは通天閣が見えました。つうてんかく!実際に見たのは初めてで、テンションがあがります。
一日前に大阪に着けていたら、浪速の友人ヒトミちゃんに花火に連れて行ってもらえたので、ちょっと残念。
彼女に「今着いたよ!」と新今宮駅からの画像を送りました。
快調に電車は進み、終点の和歌山港駅に8:13到着。
その前に和歌山市駅もあり、なんだかネーミングが気になりました。
和歌山市には、この駅しかないような印象を受けてしまいます。港と区別しているんでしょうけれどね。
駅はフェリー乗り場に接続しており、よくわからず通路を歩いていたら、そのまま舟に乗り込めました。
○ 南海フェリー
フェリーには、大きな萌えキャラの絵が描かれていました。きららちゃんとまいちゃんです。
事前にサイトを見ていたので、知ってはいましたが、それでもびっくり。
普通にかわいくて、思っていたほどイタさは感じませんでした。
それでも、フェリー内に、浴衣姿の「魔法の天使クリィミーマミ」の鳴門阿波踊りのポスターが貼られていたので、驚きました。
ちなみに、徳島阿波踊りのポスターは、また別のアニメデザインでした。
「Fate/Zero」と「テイルズオブ」だとか。
あとで、徳島に詳しい知人に聞いたところ、「ここ数年、阿波踊りはアニメとコラボしており、この時期になるとアニメファンが続々と上陸している」とのこと。
なんと、四国(徳島限定?)は知られざるアニメアイランドだったんですね~。
徳島までは2時間ほどの船旅。私は夕べ飲んだ酔い止めがまだ効いていますが、フェリーに乗った途端にユキが「あ、この揺れ、酔いそう」と言ったため、薬を渡しました。
薬のおかげで、二人ともフェリーでぐっすり熟睡。お互い朝が早かったし、待ち合せがそれぞれに不安だったため、ひと安心しました。
こんなに旅の待ち合わせで不安だったのは、以前パリのシャルル・ド=ゴール空港で、バングラデシュ航空で私の10日後にやってくるサオリと待ち合わせをした時以来だったわ。
酔うことなく快適に、無事に初四国に上陸しました。
徳島は蒸し暑く、南に来たなあという感じ。駅までのバスに乗ると、まだエンジンがかかっておらず、冷房のない暑さを感じました。
ずいぶん長くバスは走ります。港から駅までは思ったよりも遠い様子。
駅前は開けていてそごうがあり、思ったより都会でした。
駅前の郵便ポストの上に乗っているのは、阿波踊り。
青森のポストには、ねぶたが乗っています。お国柄ですね。
○ 徳島ラーメン
電車の時間まで少しあったため、食事をすることに。やっぱり、東京では食べられない、徳島ラーメンに挑戦したいものです。
お兄さんが店の前で客引きをしていた、駅ビルの「岩国」というお店に入りました。
お店の入り口には、お遍路さんの菅笠が置かれてあり、「おお」と思います。
細麺で、醤油味にとんこつ風味?そして豚バラ肉?初めての感じでしたが、発車時間が迫ってきたため、急いで食べました。
思ったよりもあっさりと食べられたのは、量が少なめだったから。
徳島ラーメンはご飯のおかずと見なされており、本来はライスと一緒に食べるものだと、後で知りました。
○ 四国バースデーきっぷ
駅の窓口で四国バースデーきっぷを購入。
誕生月の人を対象にした、3日間有効のJRのお得な切符です。今回は、これで四国を巡ります。
同行者も同じ値段で購入できるのが、嬉しいところ。
誕生月チケットを取り扱っているのは、鉄道ではJR四国だけだそうです。
改札で出したら、駅員さんがそれを見て「おめでとうございます♪」と笑顔で言ってくれました。
駅員さんに改札でお祝いされるなんて、完全に予想外。
初めてのことだったので、びっくりしましたが、うれしかったです。
ホームには、「四国遍路を世界遺産にしよう!」ポスターが何枚も貼られていました。
雄大な構想ですが、サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路も、紀伊山地の霊場も、世界遺産に認定されているので、なってもおかしくなさそうですね。
○ 牟岐線
やってきたのは、たった一両のみの列車。驚いて目をパチクリさせますが、これに乗りました。
各駅停車ですが、一両きりなので結構混んでおり、ようやく座れました。
車両を増やせばいいのに。込んでいるのは、この辺りだけなのかしら。
線路は一車線。走行中には電車とすれ違わないということですね。
まあ、県庁所在地の、徳島一大きな駅から、こんなにかわいらしい電車が走っているとは。
電車に乗る時に「回数券をお取り下さい」と放送されていました。たしかに、乗降口には回数券が出ています。
「ええっ、回数券が必要なの!?」と驚いたら、「この都会人め!」とユキに言われました。
ののしられても、理解できなーい! どういうこと? 私って都会人なのね(笑)
今回は旅程をユキが、宿探しを私が担当しました。
電車は酔う割に好きな方ですが、名前を覚えるのが苦手で「あれ、ムギ線だっけ?サギ線だっけ?」と間違えてばかりの私に、忍耐強く「トキ線!」と教えてくれるユキ。
「この線に乗ってみたかったー」と嬉しそうでしたが、その割にすやすやお休みしており、私の方が、鉄っちゃんに混じって、空いてきた車両内のあちこちに移動しては、熱心に写真を撮っていました。
シーサイドラインと言われる割には、なかなか海が見えず、行けども行けども山ばかり。
途中、少しだけ、浜辺が見えるところがありました。それでも、グリーンラインの方が合うのに。
前の駅名が「ゆき」、次の駅名が「きき」って、なんだかカワイイ響きですね。
乗っている間、大雨が降ったりやんだりします。
ちょうど今、台風が近づいている時で、天候もあやふや。
雨になるたびに不安になりながら、空を見守りました。
2時間ほど乗り、終点の海部駅に到着。
乗りこんだ時には大混雑していた車両内も、数名のみとなっていました。
始発駅から乗り倒したのは、私たちくらいではないかしら?
○ 阿佐海岸鉄道
そのまま、隣のホームに止まっている阿佐海岸鉄道に乗り換えます。
こちらも一両のみ。
入った瞬間、和風の風鈴列車になっていて、なんだかリゾート感覚。
走りだすと、たくさん飾られた風鈴がリンリンと鳴り始め、とても納涼感にあふれます。
すだれもかかり、投稿の和歌も飾られ。手作り感満載の暖かい雰囲気なのに、乗客は私たちを含めたったの3名。
そしてこの鉄道は、運行距離がたったの2駅しかないのです。切ないわー。
2駅先の終点、甲浦駅で降りる時には、駅員さん2名がうちわをくれました。
運営が大変な赤字ローカル線なのに、こんなグッズを作ってくれるなんて、申し訳なくて、とてもじゃないけど捨てられないー。
家までちゃんと持って帰ります。
○ 御厨人窟(みくろど)
甲浦駅からは、もう電車はありません。
本当ならば、室戸岬経由で四国の海岸を電車でつなぐ計画があったそうですが、バブルがはじけて、頓挫してしまったそうです。
それで、第3セクターが2駅間のみの鉄道を運営していたりするわけですね。
ここからは、バスに乗り換えて室戸岬へ向かいます。
海岸線をくねくねと走っていくため、ほどよい揺れに今度は私が寝こけ、ユキに声をかけてもらいました。
さっきまで大雨で「"室戸岬はすごい嵐です!"ってレポーターごっこしなくちゃ」と話していましたが、今ではすっかり止んで、夏の空高く、日差しがカンカンに照りつけています。
それに加えて、大雨の名残ですさまじく湿気が高く、蒸し暑さが身体にこたえます。
南アジアに来ているみたい。
観光案内所で自転車を借り、御厨人窟まで行ってみました。
案内所にいたのは、ファンキーな話好きのおばさま。
「ここ、潮水ですぐ錆びちゃうから、ペダルも重いけど堪忍ね」と言われた通り、サドルの高さの合わない重いママチャリを必死にこいでいきます。
海沿いの強風にあおられて、日傘も帽子もつけられないまま、カンカン照りの暑さの中を向かいました。
そう遠くないところに御厨人窟はありましたが、とにかく暑さに弱い私は、急激に体力を奪われて、ゼーゼー、ハーハーしています。
それでも、ここは19歳の空海が籠もって修行し、悟りを開き、空海という名前に決めた洞窟。
室戸に来たら、ぜひともここを訪れたかったのです。
神明宮(弘法大師の修行場)と、五所神社(弘法大師の住居)とされる自然のままの海蝕洞が二つあり、どちらの中にも入ることができました。
ここに来られて感動しました。秘密めいた聖なる洞窟。
でも、洞窟内の湿気は外以上にハンパなくて、もう倒れそうなほどにぐったりです。
空海はここで悟りを開きましたが、凡人の私は今にも正気を失くして、蜃気楼が見えてきそう。
遠くに水が見える~。(そりゃ海際ですから)
もっと落ち着いた気候の時に訪れれば、静かに洞窟内を満喫できたと思いますが、今回は今回なりに、普通じゃないギリギリの感覚を保っているという点で、ちょっと空海の気持ちに近付けたような気がします。(ホント?)
この洞窟内で聞く波の音は、日本の音風景100選に選ばれているということですが、洞窟の外の方が、波音は高かったです。
○ 室戸岬
観光案内所にに自転車を返して、海沿いへ向かいました。
荒れ狂う風に汐が飛び散る荒い波。砂浜ではなく、岩と石だらけの海岸に圧倒されます。
東映映画のオープニングの波みたい。いえそれ以上でしょうか。
カメラを取り出すと、汐が入って動かなくなりそうで、二人ともあまり写真を撮れませんでした。
本当は、灯台まで行きたかったのですが、「徒歩20分の道を登っていくのが大変で、無理じゃない」と観光案内所のおばさまに言われたため、「詳しい人がそういうのなら」と諦めて、遠くから見るにとどめました。
といっても、なかなか見えません。
海辺まで出て、のぞき上げると、ようやく先っぽが少しだけ見えました。
近いのに、遠い灯台。でも暑さに弱い私たちは、もうすっかりパワーがなくて、辿りつけません~。
ここで貝殻を拾ったりして遊歩道を散策します。
こんなに暑くて、海沿いなのに、遊泳できないなんて、罪な場所だわー。
ユキは、波につかまったようで、人魚姫像のようにしばらく岩の上で足を乾かしていました。
私は、先ほどの重い自転車のペダルに弁慶の泣き所を打ちつけてしまい、岩の下で足をさすっていました。
観光案内所に三たびもどって、アイスを食べました。
中岡慎太郎のソフトで「あいすくりん」と書かれています。
もしや、これが、高知名物、アイスクリン?
案内所のおばさまに「凍ってるから少し手の熱で溶かしてから食べるといいなあ」と言われた通りに、手の平を当てていたら、暑さであっという間に溶け、むしろ液状化し始めていたので、慌てました。
岬のバス停前には、中岡慎太郎の大きな銅像が建っており、予想以上の巨大さでした。
慎太郎好きなので、嬉しいですが、顔をじっくり眺める気力もありません。
桂浜の竜馬像と向かい合っているとのこと。ラブラブね。
展望台からしばし海を眺めました。
三宅島も波が高かったけれど。ここの方がずっとすごいなあ。
すばらしく自然に満ちた場所なのですが、いかんせん暑さと湿気が容赦なく、思うように動けませんでした。
四国の荒々しい歓迎を受けた感じ。
やってきたバスに乗り、海岸線沿いを辿って奈半利へと向かいます。
先ほどは1970円、今度は1200円。こんなに高い路線バスは、初めて。
○ 土佐くろしお鉄道
奈半利で降り、土佐くろしお鉄道に乗り換えます。
やなせたかしのキャラクター、なはり子ちゃんの銅像がお迎えしてくれました。
それにしても、この鉄道の座席背もたれがとっても高くて、「ありえなくない?」と二人で笑いました。
これでは、必死に背筋を伸ばしても、全く前が見えませーん!
普通なら、前に座った人の頭が見えますが、人がいるのかいないのかもわからないくらい。
よっぽど大柄な人がデザインしたのでしょうか?
こぎれいな車両でとても快適。各駅にやなせ氏が手掛けたキャラクターがいるのも、かわいらしいです。
徳島のアニメコラボには驚きましたが、このくらいならナチュラルに受け入れられます。
そういえば、さっきから龍馬の銅像をあちこちで見かけます。
とっくに徳島から高知に入っていたんですね。室戸岬の慎太郎像前で気付かないなんて、遅すぎ!(すべて暑さのせいね)
安芸駅で、少し待ち時間があるとわかったので、「町の散策をしたい!」と私。
ここの野良時計を見てみたかったのです。
でも、駅に着いたら、隣に特急が待っていたため、そのまま乗り換えることになりました。
ああ、のらどけいー!
安芸の国といったら広島なのに、高知に安芸駅があるというのがなんだか不思議。
また外が暗くなり、急に大雨が降ってきました。でもすぐにやみます。きっとどこかに虹がでていることでしょう。
ごめん駅というのがおもしろいです。一つ手前は後免町駅。キャラクターは、ごめん・まちこさん。
ありがとう駅、という愛称らしいです。ごめんだから、ありがとう?
ごめん駅のキャラクターは、とにかく「ごめん、ごめん」と謝りまくっていました。
○ 高知駅
快調に電車は進み、終点の高知駅に着きました。
2つ前の駅まで完全な農村風景が広がっており、すぐ先に本当に行政都市があるのか不安でしたが、1つ前の駅辺りからぐぐっと都会になりました。
つまりビル街面積はさほど広大ではないということですね。
改札を出たすぐのところに、龍馬とお龍の写真がでかでかとあります。
明るい、開けた印象の駅前には、武市半平太、坂本龍馬、中岡慎太郎の3人の大きな像がデデンと立っていました。
去年建てられたばかりのものだそうです。大河効果でしょうね。
路面電車がメインストリートを頻繁に走っており、絵になります。
あ、ごめん駅行き。やっぱりごめんって謝ってるー。
高知駅前を知りたかったため、今日の宿まで歩いていきましたが、思ったよりも距離があって、汗だくになりました。
日曜市をのぞきたかったけれど、6時半頃になっていたせいか、もう市場の名残もありませんでした。
はりまや橋は、日本三大がっかりと言いますが、そもそもの由来を知らないだけに、特にがっかりしませんでした。
はりまや橋のたもとや、鏡川の土手向こうで、熱心によさこいの練習をしている団体がいました。
本番はもうすぐですからね。
鏡川に架けられた橋のデザインが、なんだかオベリスクのようでした。高知でエジプト発見?
○ 三翠園
ようやく、今日の宿の三翠園に7時着。高知市内唯一の温泉旅館です。
夕食は部屋食だと思っていましたが、食堂食という話で、ロビーで少し時間がかかります。
すっかり汗だくで疲れ切った私たち、最後には(もうどっちでもいい~)と、とりあえず温泉に向かいました。
食事前に入浴できて、ようやくさっぱり。
食事は皿鉢料理に鰹のたたき、刺身、海老鍋、土佐地鶏の唐揚げなどがずらりと並び、量もたっぷりで食べきれないほどでした。
今日は、大阪・和歌山・徳島・高知と、1府3県を移動し、考えてみれば、ほとんど乗り物に乗っていた一日でした。
よっぽど乗り物好きでないとこなせないルートだわー。
我ながら、よく動いたなあ。
やはり室戸岬は、想像を越えるすごさがありました。行って良かった。
ただ、覚悟はしていたものの、予想をはるかに上回る、暑さによる消耗。
南国に夏に行くのは、北国に冬に行くのと同じハードさがあって、軽く考えちゃいけないねと話し合いました。
部屋からはライトアップした高知城がまっすぐ見えました。白壁が闇に美しく映えています。
前日3時まで起きていたというユキは、先に就寝。
私は日記を書き、もう一度じっくり温泉に入ってから寝ました。