風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

天空の郷、吊り橋三昧(斑鳩、奈良)4-2

2013-02-12 | 近畿(奈良・和歌山)
4-1からの続きです。いよいよ旅も終りに近づきました。

○奈良へ

三輪駅に戻り、次の電車が来るまで40分、小さな駅舎で待ちました。
和風のグラデーションの美しいボディカラーの電車を見かけました。
桜井線は、「万葉まほろば線」とも呼ばれているそうです。
「万葉集」の歌を乗せて走る電車なんて、風雅。名所・旧跡の多い大和ならではの車体ですね。





県庁所在地の奈良行きの電車だというのに、乗客が少ないことに驚きます。
ワンマン電車イコール、ローカル線というわけですね。

先ほどの近鉄・「畝傍御陵前駅」には驚きましたが、この線も読みづらい駅をたくさん通ります。
天理駅を過ぎると、「櫟本(いちのもと)」、「帯解(おびとけ)」、「京終(きょうばて)」と続いて、難しい読みに眼をぱちぱちさせました。

奈良駅に到着し、荷物を置いて、再びJRで法隆寺へ向かいました。
ボックス席で、こちらもほとんど他に人が乗っていません。



電車の中も外の景色もとても静かで、銀河鉄道999に乗っているような気分になります。
汽車は~闇を抜けて~光の海へ~♪
山あいの地から出てきたので、もっと温かいかと思いきや、結構寒く、冷え込んでいます。

○法隆寺

法隆寺に着きました。ここには3か月前に訪れたばかりですが、バスで行ったため、電車からのアクセスがわからずウロウロ。
思ったよりも歩きました。



駅からまっすぐの道をたどって現れた法隆寺の伽藍は、やはり完璧な構図で絵になります。
空気ががらりと変わり、一瞬にして時代が戻ったかのよう。



人気の高い世界遺産といえども、シーズンオフの平日なので、閑古鳥が鳴くほど閑散としています。
(そういえば、閑古鳥ってどうやって鳴くんだろう?)と調べてみたら、閑古鳥はカッコウのことなんですね。
知りませんでした!じゃあ「カッコウ」って鳴くんだわー)



チベット僧侶のようなグループとすれ違いました。遠い外国にも聖徳太子の名は知られているのでしょうか?
単に観光地巡りをしているようではなかったので。

○中宮寺

pino希望の中宮寺に向かいます。



聖徳太子の母親が祀られている小さな尼僧院で、ここの観音菩薩に会うのを楽しみにしてきました。



伽藍は工夫されたデザインではあるものの、コンクリ製なのでどうしても武骨。
でも中に国宝を鎮座させているので、耐久性最重視なのはいたしかたありません。



菩薩半跏像とも如意輪観音とも弥勒菩薩とも呼ばれるここのご本尊。
漆を塗られて今は真っ黒。岩鋳製のように黒々と光っています。
優雅で優美な像に、言葉もなくしばし見とれます。
これまで見てきたうちで、一番優美な仏像かもしれません。



これまで私は、仏像というと、勇ましいものが印象に残っていましたが、この観音様は他を凌駕しています。
見ても見ても見飽きることなく、pinoと「きれい・・・」と、その優しい微笑みにしばし魅了されました。

この観音様は、ダ=ヴィンチのモナ=リザ、エジプトのスフィンクスと、世界三大微笑とされているそうです。
わかるわー。宗教を偏らせない三択なのかもしれません。
でも、あれれ?
スフィンクスって笑っていたかしら?風化されて表情まではもうわからなくなっているような。
謎だわー。(スフィンクスだからねー)

スフィンクスはさておき、すべての人を癒すような微笑みをたたえるこの像が、すさまじい政治的陰謀が織り成す中で作られたということを考えると、1300年間のさまざまな火の粉をくぐり抜けて、今ここにあり続けることに、ただ感動します。
静かな謎めいた微笑は、さまざまな経験を経てこないと出せないなのでしょう。

○夢殿

観音菩薩にぽーっとなったまま、隣の夢殿にも入りました。
でも、あれ、中に入れない!
夢殿の中には、仏像が何体か安置されていますが、外から覗くことしかできません。
えー、中に入りたかったのにー。



『日出づる処の天子』を読んだのは、中2の時でしたが、厩戸皇子が夢殿に引きこもって鬱々としていたシーンが印象的でした。
絵では、夢殿は少年のごろ寝サイズにちょうどいい、6ー8畳くらいだったように思います。
pinoに「その話の聖徳太子は、エスパーでマザコンで蘇我毛人(えみし)LOVEで引きこもり」と説明したら、「ええー、漫画なんだよね…?」と、少し引いていました。
(言い方悪かったかしら?)



ここの仁王様は、こわいくらいに迫力満点!
東大寺南大門の仁王像が日本一だと思っていますが、ここはその次くらいかも。



○ 斑鳩三塔めぐり

法隆寺の手水舎は、龍のモチーフのものでした。
でもどれも微妙に怪物っぽく、ノートルダムのガーゴイル風でした。





法隆寺を見た後、前回は西にある藤ノ木古墳や龍田川へと向かいましたが、今回は東方面の、斑鳩三塔めぐりをしました。
でも中宮寺を参拝するという目的を達して大満足し、もうホテルで休みたそうなpinoは、「え~」と気が乗らない様子。
まあ、人生直線だけではおもしろくなくってよ。寄り道して行きましょう。

どれも聖徳太子所縁の塔です。
まずは法輪寺の三重塔が見えました。



犬の散歩をする住民の人たちと、数人すれ違います。この辺りはたしかに気持ちのいいお散歩コース。
ただ、雲が広がり、空が暗くなってきたため、急ぎ足になりました。
法輪寺を見ながら、次の法起寺へと向かいます。
「近道しよう」と、pinoはショートカットを始めました。

辺りはのどかな田園風景。
絵になる斑鳩の里の絵の中に入り込んでしまったような気分。



法輪寺の前についた時には、もう門は閉まっていました。
それでも、角度を変えてみると、美しい三重の塔が見られます。
秋にはコスモスが咲くという田圃に囲まれ、落ち着いた雰囲気でした。



田圃道を通って隣の駅へ向かって歩いていると、心配していた通り、ぽつぽつ雨がふってきました。
この辺りは、JRひと駅の間隔がかなり遠いです。新宿と代々木くらいの距離かなと思っていると、えらい目に遭います。
もともと鉄道なんて通っていないような、昔と変わらぬ斑鳩の里風景を目の前にすると、そういうものかなとも思えてきますが。



雨はだんだん降って来て、小さい傘だと心もとありません。
途中のお地蔵さんのところで休憩したりしながら、無事に大和小泉駅まで辿り着きました。
空が暗いと、気持ちもなんだかブルーになってしまいます。旅の時は、特に。

○ 奈良で解散

ふたたび奈良駅に着き、そこでpinoと解散しました。私は一足先に帰り、pinoはもう少し旅を続けます。
想像もしなかった冒険を共にこなし、時には命も張ってきた旅の同士との別れに寂しさを感じますが、pinoは「じゃ、お疲れさま~!」と、いそいそとホテルの中へと姿を消して行きました。
取り残されて切ないわ~。おまけに雨はどんどん激しくなってきます。



帰りは大阪から。雨だし早めに移動しようと路線図を見ましたが、目指すなんば駅がありません。
そういえばここはJR。駅構内でうろうろと近鉄乗り場を探しますが見つけられず、旧駅舎にある観光案内所に行って聞きました。
「ここから15分ほど歩きます」と地図をもらいます。
近くではありませんでした。これまで奈良にくる時は、近鉄ばかり使っていたので、JR駅に馴染みがなかったんだとわかります。
さっきpinoに「あれが旧駅舎」と教えてもらっても、ピンとこなかったわけです。
少しでも明るいうちにと歩き始めました。雨はどんどん強くなり、旅行用の小傘では頼りなくなるほどの大雨になっています。



途中、天皇陵の前を通りかかり、のぞいてみました。
第9代開化天皇・春日川坂上陵(かすがのいざかわのさかのえのみささぎ)。読みづらいわー。
天気なら猿沢池のあたりを散策したかったのですが、そのまま電車に乗りました。

○ キラキラ道頓堀



一本でなんばまで行き、地表に上がってみたら、ネオンキラキラの場所に行き当たりました。
ここは、TVでよく見る道頓堀!わあ、グリコって巨大!



大阪はほとんど知らないため、初めて見ました。
それまで、星光りしかないほどの自然の中にいた眼には、まぶしすぎてどうにかなっちゃいそう。
あまりにコテコテのザ・ネオンに、一人のさびしいモードはどこかに吹き飛びました。



大阪から帰浜し、これで今回の旅はおしまい。
無事に旅を満喫できて、まずはpino、そしてマツミンさんに、感謝です。
その後、pinoがどんな旅をしたのかも聞きたいなあ。

帰ってからも、なかなか現実復帰できずにいます。
おそらくずっと忘れられない、すばらしい体験ができました。
いい旅でした!またいつか、訪れたいと思います。
今回の旅行記はとりわけ長く、なかなかマニアックでしたが、最後までお付き合いいただき、どうもありがとうございました。

天空の郷、吊り橋三昧(橿原神宮、桜井)4-1

2013-02-12 | 近畿(奈良・和歌山)
3-2からの続きです。


○ 民宿の朝
○ 橿原神宮
○ 神武天皇陵
○ 大神神社
○ 大和三山
○ 三輪素麺と柿の葉寿司
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○ 民宿の朝

チュンチュンと小鳥の声がする、絵にかいたような爽やかな朝の目覚め。
気になっていた天気も、大丈夫そうです。
宿の周りには畑が広がり、ああ、明日香村に来ているんだなあと、すがすがしい空気を胸いっぱいに吸い込みました。



朝食は和食。素朴な感じで食べやすいです。
夕べの飛鳥鍋といい、こういう食べ物が一番身体に馴染むなあと思いながらいただきました。



チェックアウト時に、おかみさんにお別れのご挨拶をしながら、大神神社への行き方を聞きました。
まっすぐ行く道が、ありそうでなさそうなので。
すると「飛鳥には行かないの?」と驚かれました。
今回は残念ながら、ちょっと時間が足りないのです。
橿原神宮を参拝するついでに、隣の明日香村まで、雰囲気だけでもと足を伸ばしてみたわけなので。
すると、旦那さんに駅まで車で送ってもらえることになりました。





宿の各部屋に生け花が飾られており、そのどれもが違う花だということに心動かされたとおかみさんに話したら、どれも旦那さんの手によるものだと教えてもらいました。
生徒をとっていたこともおありだという腕前。さすがという立花の存在感です。
特に冬の水仙を活けたものが素敵で、車に乗せてもらっている間、そのお話しをしました。



○ 橿原神宮

駅前で下ろしてもらい、まずは橿原神宮へ向かいます。
伊勢や善光寺などのように、ここも神宮の周りが栄えて町になった場所。
駅前にホテルも多く、隣の明日香村とはまた雰囲気の違う、開けた町です。



少し歩いて、神宮の大鳥居をくぐり、境内に入りました。
だだっ広い駐車場を眺めながら、(昨日はここに、たくさんの街宣車が集まったんだろうなあ)と考えます。
一夜明けると何事もなかったかのような静けさ。タイミングに乗り遅れた車の姿は一台もありませんでした。



平日の静かな朝に、シャクシャクと音を立てて石砂利の上を歩いて行くのはとても気持ちがよいですが、キャリーケースをゴロゴロと引いているpinoは大変そう。
振り返ると、くっきりと轍がついています。
祭殿へ向かうと、大きな巳年の絵馬が奉納されています。
神武天皇の即位から、今年で2673年目。
玉置神社の巨木杉群は、樹齢三千年なので、神武天皇が訪れた頃にはすでにあの場所に生えていたことになります。



お賽銭箱のある一般の参詣場と神殿の間に、広い空間があり、そこにおびただしい数のパイプ椅子が折りたたまれて重ねられてありました。
昨日、ここで行われた紀元祭の名残です。さぞかし盛り上がったことでしょう。



広々とした気持ちのよさはあるものの、それ以上の感覚はありません。
夕べのタクシー運転手も、「あそこには神様がいないからね」と言っていました。
みんな知っているのね。落ち着いた造りではあるものの、この神宮の歴史はそう古くはありません。

○ 神武天皇陵

正面参拝口の反対側から出て、次に神武天皇陵へ向かいました。
またもや石砂利の道。pinoは引くのを諦めて、キャリーケースを抱え出しています。
まるで羊を抱きかかえる牧人のよう。(ってこれ、キリスト教のモチーフですね)



静けさが漂う界隈でした。
謎に満ちた神話の世界の神武天皇。今回の旅は、熊野を巡り、気がつけば神武天皇ゆかりの地をあちこち巡ってきています。
冬だったため、道路凍結を避けて熊野超えはせず、海沿いに大回りでここまでやってきましたが。



そこから少し歩いて、畝傍御陵前駅へ。
ここの駅名、雅ですが、難しいですね~。書こうとすると遠い目になっちゃいます。
橿原神宮も難しいー。樫じゃないんですものね。
ちなみに、橿も樫も同じ木を指し、もともとは「橿」という文字で、「樫」は後に日本で作られた国字なんだそうです。



大和八木で橿原線から大阪線に乗り換えました。
こっちの大福駅の方がなじみますね、ハイ(笑)。
両隣の桜井も耳成も、なんだか縁起がよさそうな名前で、バランスのよい三位一体型ですね。



桜井で今度はJR桜井線に乗り換え、三輪へ。
小さな無人駅です。この線は、ほとんど無人みたい。
さりげなく駅に張られたポスターを見て、なかなか驚きました。だってほとんど無人駅…。



この駅で降りた人たちは、みんな大神神社へと向かったようです。

○ 大神神社

今年、是非とも参拝したかった大神神社。
なぜかというと、蛇の神様をお祀りしているからです。
巳年の参拝が叶って幸せ。
日本最古の神社の1つといわれる割には、あまり知られておらず(私が知らなかっただけかもしれませんが)、周りで行ったという人の話を聞いたことがありません。
三輪山全体がご神体という、大きなパワーの源です。
大神と書いて「おおみわ」と読みます。



神社の一の鳥居を過ぎ、二の鳥居を前にして、さあ参拝しましょうと気持ちが引き締まりますが、奥へと続く石砂利と石段を見て、キャリーケースを引くpinoの気持ちと体力がしぼんでしまいました。
「参拝してきて。ここで待ってるから」と言われますが、せっかく前まで来たのに、入口で待っているというのは、あまりに残念。
近くにコインロッカーはないかとパーキングの人に聞くと、「ロッカーはないため、お店に置いてもらえるか聞いてみたら」という返事。
近くの食事処・福神堂で聞いてみると、ありがたくもすんなりOKしてもらえました。
これで一件落着です。
身軽になって参拝。入口にある木の杖をつくと、山の巡礼者の気分が出ます。
ここの手水舎は、もちろん蛇。見つめられているみたい。
後ろは、三輪の大神があらわれたという「しるしの杉」です。



参道のまっすぐ奥に、本殿がありました。
迫力と風格があり、空気に圧されます。



参拝する場所に幣(ぬさ)が置かれていました。身を清めてお参りせよとのこと。
参拝者向けの幣があるところは、初めて。
空にも届くご神木「巳の神杉」がありますが、柵があって触れません。



熊野の神社、玉置神社、そしてこの大神神社と、今回の旅では日本最古と言われる神社をお参りできています。
どこも自然と一体化したような深さのあるお宮ばかりで、心が洗われるよう。
ご祭神がヘビの神様なので、そこかしこのお社には生卵がお供えされていました。
ハッ、生卵・・・。夕べの飛鳥鍋で、おいしく食べちゃった!
まあ、腹が減っては参拝もできぬ、ということで。



智恵の神様もおいでです。
国王神社のことがあるため、今度こそは!と久延彦神社をお参りしました。
ご祭神の久延毘古命は、古事記に登場する、八百万の神々のうちで一番記憶力のいい神様。
頭はよくなくてもいいので、もの忘れさえひどくなりませんように・・・(よく鍵を失くす私は真剣)



○ 大和三山

大神神社全体が山中の高台にあるため、久延彦神社のところからは、大和三山を一望にできました。
くぐってきた、大神神社の一の鳥居も見えます。
吉野に行ったら、どこか大和三山を一度に見渡せる場所から眺めてみたいと、つねづね思っていたので、とても嬉しい気持ちになります。
やまとは国のまほろばー。
千年単位の時がたっても、三山の雅な形は変わらないものですね。

池のほとりには、市杵嶋姫神社の祠がありました。
素盞嗚大神の娘で、水の守護神。弁天さまです。
見たこともない楽器から妙なる調べを奏でている参拝者がいました。



奥宮の狭井(さい)神社にも足を伸ばしました。
ここの神社の鳥居には、どれも上に木が通っていない、変わった形をしています。



病気治癒で知られた神様で、神殿には女性3名の姿が見え、父親の手術が成功するようにという祈祷を受けていました。
その裏には、薬井戸と水琴窟があります。
霊泉の薬井戸から湧き出る、万病に効くといわれるご神水を飲み、水琴窟に耳を近づけると、かすかに水が流れていく音が聞こえました。



三輪山への登山口はここから上に伸びていました。
山道巡礼用に、今ついているものよりもぐんと太い木の杖が置かれています。



手続きが必要でなかなか本格的な登山になるとのことなので、入山はしませんでしたが、境内に三島由紀夫の碑があり、彼は登ったことを知りました。



神水の調べを聞き、神水をいただいて、すっかり心が落ち着きました。
自然と一体化しているような神社が好きな私にとって、ここはとてもしっくりくる場所でした。

○ 三輪素麺と柿の葉寿司



参拝を終え、荷物を預かってもらっている食事処・福神堂へ。
ここでお昼にします。三輪は素麺が有名なことを思い出して、にゅうめんにしました。
白石温麺が好きな私は、味比べをしてみました。ここは両手を挙げて、文句なしの美味しさ。
優しい味で、心まで温まりました。もっと東京で食べられる機会が多ければいいのに。



pinoは柿の葉寿司にしました。こちらもおいしかったです。
今まで、奈良の食べ物といったら奈良漬くらいしか思い出せませんでしたが、しっかりほかの名産も覚えました。
食べるべきは、やはり本場の味ですね。



今回、にゅうめんとそうめんとうーめんと冷や麦の違いがようやくわかった私。
奈良に行って良かったー。
そんなこんなで、いよいよ最後の4-2に続きます。

天空の郷、吊り橋三昧(白浜、飛鳥)3-2

2013-02-11 | 近畿(奈良・和歌山)

3-1からの続きです。

○ さわれる電話線
○ ⑪鹿淵(かぶち)橋(橋長150m、高さ24m)
○ 168→311
○ ⑫大川宮前橋
○ 中辺路の春日神社
○ 梅の里
○ 白浜
○ 特急くろしお
○ 天王寺
○ ふたつの道明寺
○ 橿原神宮前
○ 民宿北村

○ さわれる電話線

ダムを後にして、さらにR168を南下しました。
昨日、新宮から十津川に入って最初に見た吊り橋を探します。 つまり、和歌山との県境近くにある橋です。

十津川にあるのは、細いくねくね道だけではありません。
五条新宮道路と呼ばれるR168には、きれいに整備された、広い七色高架橋もあります。
川沿いのドライブラインで、とっても気持ちがよく、山に囲まれながらもサザンなんてかけてみたくなったりします。

この道路の下にあるようなんだけど… 地図を頼りに、ちらちら見え隠れする川を必死に眺めます。
あっ、発見!
ただ、整備道路のため、停める場所が見当たらずに、和歌山まで行ってしまいました。
もう一度戻って、駐車できる場所を探します。 うろうろした挙句に、少し離れた場所にようやく停めることができ、車から降りました。

そうしている間に、再び八木新宮線がやってきます。
あ、今日2台目の奈良交通バス! どちらも新宮発八木行きでした。ユンケルさ~ん!

十津川を走っていると、道路沿いの山肌をつたって、ずっと黒いコードが張られていることに気が付きます。
「あれはなんでしょう? 答えは電話線でーす」とpino。
えーっ、びっくり。電話線がさわれちゃうの?
これまで、電話線は地下にあるものと思っていた私には、大きなカルチャーショックでした。

風雨にさらされて、すぐに摩耗しないのかしら?
すさんだ気持ちになった誰かがハサミでチョッキンしたら、えらい騒ぎになってしまいます。
まあ、日本一親切な村には、そんな悪さをする人はいないんでしょうけれど。

店はどこも閉まっていて、動いているのは行き交う車だけ。 シーンとしている中で、貴重な人の姿を見かけました。
おばあちゃまが、石段を休みながら、ゆっくりゆっくり上がって行きます。 おばあちゃん、がんばって。
でもここに住む人たちは、私たちよりはるかに基礎体力があるんでしょうね。
辺りに相変わらずひとけがないのは、この日も変わりません。 車道の脇をひたひたと歩いていくため、通り過ぎる車から視線を感じます。
「地元民じゃなさそうな人間発見!なぜこんなところを歩いてるんだろう?」と思っていることでしょう。

○ ⑪鹿淵(かぶち)橋(橋長150m、高さ24m)

細道に逸れ、どんどん下って橋へと近づいていきます。
途中、見たことが無いものがありました。 どうやら、対岸へものを運ぶワイヤー吊りのバスケットです。

野猿の荷物版といったところでしょうか。
こういうのがまだ現役で使われているんですね。本当にすごいところです。

橋に辿り着きました。ここは足場に鉄板が渡されていて、安心して目をつぶっても歩けます。
これまでずっと、ギシギシ鳴る木板の上をそろりそろりと歩いてきた身には、安定感が頼もしいけれど、この強靭さがどうにも物足りないわー。

よく見ると黒いコードが伸びています。「これは電話線や電気線」とpinoに教えてもらいます。
つまり、橋向こうに住んでいる人がいるということですね。
くねくねしたコードは均一的で美しく、おちる影がアーティスティックで、張った人の美意識が見えました。


反対側まで行くと、集落への細道がありましたが、今回は時間があまりないため、そこで戻ることにします。
帰りには、今車で通ってきた、R168の七色高架橋が真上に見えました。
新旧の橋の交差がドラマチック。
 

七色高架橋って、名前がすてきですね。この辺りが七色という地名なのですが、まるで虹を意味しているようです。
近代的で、アーチカーブはありませんが、遠くまで続く白い線は、山々に映えてとてもきれいです。

○ 168→311

これで十津川の吊り橋巡りは終了。 十津川、今はさようなら~。
短い滞在でしたが、素敵な体験がたくさんできました。 忘れられない場所になるでしょう。
廃道・酷道好きのpinoは、酷道と名高いR425や、そこを並走する県道735号を通って龍神温泉に行きたかったようです。
ただ、酷道すぎて425号は冬季閉鎖。 それに、この辺りは普通道でも十分ハイレベル。
もうこれ以上のレベルアップは望みません!
というわけで、R311を通って田辺方面へと向かいました。
道路が広くてカーブも少なくて、「なんていい道!最高!!」と、二人で口々にほめそやします。
でもちょっと待って、普段、道路っていったら、こういう道があたりまえなのよね?
十津川ロードは本当にすごかったです。サバイバー資質をいろいろと試される場所でした。


トンネルをいくつも通っていきます。まだまだ山間部。吊り橋巡りで時間がなくなり、pino希望の途中の立ち寄り温泉は無念の素通り。
ごめんねー。でも、初めは私の吊り橋熱に押されてながら、いつしかその魅力に目覚めて、最後にはノリノリだったので、結果オーライです。

途中、材木を運ぶトラックを見ました。 (北海道で、積み藁を運ぶトラックの後ろについた時には、藁が後ろにたくさん飛んできたなあ)と思い出します。
今回は、藁で視界不良になることはないだろうと思いましたが、よく見るとやっぱり、細かい木の皮が後ろに飛んできていました。

○ ⑫大川宮前橋(橋長46m、高さ9m)

ドライブ途中、吊り橋を見かけました。
「あっ、吊り橋!」
すぐに車を止めてそばまで行ってみる行動が、もうすっかり定着しています。
橋を見かけたら通り過ぎない、これはもう、今回の旅の鉄則です。

最寄りのバス停は、大川の吊り橋。 旧中辺路町を通る川に架かる橋です。

十津川の吊り橋は、中央部分にのみ板が張られていましたが、これは歩道スペース全てに横板が張られており、スリリング感はありません。
これまで、よく渡り慣れている橋のパターン。 辺りを見回しながら快適に、足元に気を配ることなく渡れました。

○ 中辺路の春日神社

吊り橋を渡ったところには、小さな神社がありました。 中辺路町の春日神社です。
真っ黄色の鳥居が人目を引きます。
めずらしいなと思ってよく見てみると、色のはげたところからは、朱色がのぞいていました。
前は普通の朱鳥居だったのが、なにかの理由で黄色く塗り替えたようです。

本殿は春日造。3つの神殿に、主祭神の天児屋根命、配祀神の誉田別命(応神天皇)、そして比売大神、神功皇后、菅原道真が祀られています。
三本の巨木に守らて、古めかしい静けさが漂う、歴史を感じる神社でした。

また吊り橋を渡って戻ります。
今回の旅では、12個の吊り橋を訪れました。
そのうち一つ(中原橋)は渡れませんでしたが、こんなに一度にたくさんの吊り橋を渡るのは初めてのことで、大満足。
「吊り橋天国」を存分に堪能しました。

○ 梅の里

しばらく車を走らせると、もうすっかり山岳地帯からは離れています。 梅の木がそこここに見られるようになりました。

そう、ここは梅の産地、紀伊。 ちょうど季節ですし、梅林に行きたかったのですが、時間が無くて行けません。
残念でしたが、でもさすがは梅の里。あちこちに梅の木があり、どれもつぼみがほころびかけているため、ドライブをしながらも、充分お花見を楽しめました。

○ 白浜

快適に白浜に到着。目指すレンタカー屋が廃墟になっていて(もしや浦島太郎?)と慌てましたが、電話をしたら、駅前に移転していました。 カーナビは古いまま。予定通り1時半に返却。
とうとう白浜に辿り着きました。予定よりも早めに駅前にレンタカーを返却します。
ピノちゃん、お世話になりました!
しらはまー!和歌山に戻ってきました。
海が近くなり、パームツリーを見かけ、一気にリゾートムードが高まります。
ここはアドベンチャーワールドの最寄り駅なので、とにかくパンダ一色。
パンダは四川の厳しい寒さの中にいると思っているのに、温暖な白浜がもこもこパンダの町になっているのが、なんだか不思議。

これは顔ハメパネル?身体が隠れないー(笑)。

これも顔ハメパネルですが、顔を出すところがもはやよくわからなーい(笑)。
ここからは電車で移動になります。 出発まで1時間近くあり、ふらふらうろつきたい私とゆっくりしたいpinoは、出発まで別行動をとりました。
初めて訪れる白浜をさっそく散策しようと思いましたが、駅前には何もありません。
海岸までは結構距離があり、近くに白い浜辺があるわけではないとわかって、がっかり。
白浜まで来たのに、白浜を見られないなんて―。
駅前の土産物屋のパンダグッズを見て歩きました。 


○ 特急くろしお

発車時間が近づき、京都行きの特急くろしおに乗り込みました。

今回の旅行で始めての電車。車窓を楽しみながら、駅弁を広げます。
pinoは手毬唄弁当、私はパンダ弁当にしました。

手毬唄弁当の箱には「鞠と殿様」歌詞が書かれています。
てんてんてんまり てんてまり~♪
そういえば、この歌、紀州の殿様の参勤交代の話だったわ!
ここから江戸へと徒歩(かち)で向かうなんて、考えただけでも大変。お国の一大事だったでしょうね。

やっぱりパンダ好きとしてははずせない、パンダ弁当。
パンダ焼きののぼりを初めて見た子供の頃は、「なんて残酷な!」と泣きそうになりましたが、今ではもちろんお弁当にパンダが入っているなんて思いません。
からあげ弁当でした。土地の名産南高梅がとてもおいしかったです。
どこがパンダなのかは、気にしないことにして、おいしくいただきました。

田辺の辺りでは、車窓からも梅園が見えます。ぜいたくな梅特急です。
電車は海岸沿いを通って行き、夏に訪れた高知の海景色を思い出しました。

○ 天王寺

気がつくと、車両には関西弁が飛び交っています。
ほぼ全員が喋っているような感じ。関西度100%。
和歌山は関西からのアクセスがいいからでしょう。
逆に関東からは行きづらいんですが。

明るい車内も、しばらくするとみんな眠りだし、シーンと静かになりました。 私もうつらうつら。
しばらくすると、老いも若きもみんな起き出して、車内は再びニギヤカになります。
眠るのと起きるタイミングが、なぜかピッタリ一緒という感じに、修学旅行のバスを思い出しました。
初めは誰もが興奮してワイワイ元気だけれど、しばらくするとみんな寝落ちして、シーンと静かになっていましたね。

どういうわけか電車はどんどん遅れていきます。
途中、何度もアナウンスが流れましたが、最後まで原因をはっきり教えてくれませんでした。 それが関西流かしら?
乗り換え接続できなくなった長距離電車も何本かあるようでしたが、車内は特に殺気立ったムードはありません。
みんな、平気なの?
「切符の払い戻しできるんやもんな」という声が聞こえますが、それでいいのかしら?
2時間の予定が、天王寺に20分遅れで着きました。
ここから大阪阿部野橋に移動します。
地表に出たら、ビルが立ち並ぶ大都会で、クラクラしました。
こんなコンクリジャングル、人は住めないわ!(東京を忘れている)

さらに春には、「あべのハルカス」という日本初のスーパートール(高さ300メートル以上の超高層ビル)ができるんだそうな。
えーっ、ちっとも知りませんでした。 われらが横浜ランドマークタワーが抜かされちゃうなんてショックー。
概観は、渋谷ヒカリエに似ていました。

出発まで少し時間があったため、ちょっと中を散策してみます。
近鉄百貨店と隣接しているため、(大阪のデパ地下ってどんな感じかな?)とわくわく入ってみると、女子たちでビリビリ殺気立っており、大荷物の私は(お、およびでない・・・)と早々に退散しました。
そういえばもうすぐバレンタイン。中は戦場だった…。
ホームへ上がると、「長野」行きの電車が停まっていました。
えー、この電車、ながのまで行くの??

びっくりして固まっていたら、pinoが「河内長野でしょう」と言いました。
え?でも、これじゃあ誤解するわー!(私だけ?まさかね)
なぜ「河内長野」ってちゃんと書かないんでしょう?これは長野行きに違いない!
pinoに近鉄路線図を見せてもらっても、まだ疑いを解いていない私です。

○ ふたつの道明寺

近鉄吉野線に乗りました。
窓の外にはきれいな夕焼けが見え、少しずつ日が陰っていきます。 ああ、もうすぐ夜になるわ。
途中、道明寺駅を通りました。 和歌山でも道明寺近くを通っています。
あれ、でも、べつよね?
道明寺といえば、「恩讐の彼方に」を地でいった、安珍清姫物語。
とんとんお寺の道成寺~♪
子供の頃に覚えた歌を、今でも全部歌えます。
これ「かまくら」の歌と同じく、詣でる時の道案内歌なんですね。
大阪の道成寺は…和菓子の方かしら?(間違ってるかな?) 

○ 橿原神宮前

目指す橿原神宮前駅に着いた時には、6時になっており、もうとっぷり日が暮れていました。
不思議な構造の駅で、線路を越えて反対側の口へと向かいます。
タクシーに乗り、今日の宿に向かいました。 運転手さんはとてもおしゃべり。
どうも冷え込むと思ったら、さっきみぞれが降ったんだそうです。
明日は雨だと聞いて、がっかりする私たち。
飛鳥村に続く道が細くてびっくりします。やはり昔ながらの道なのでしょうか。

○ 民宿北村

明日香村の宿に着きました。この地方の雰囲気によく合った、感じのいい民宿です。
優しそうなおかみさんに、出迎えてもらいます。
この日の宿泊客は私たちだけ。夕食は、リクエストを出していた飛鳥鍋。

もともと飛鳥地方に伝わる鍋料理ということで、恩田陸もかつて、取材のためにこの宿に宿泊したことがあるとのこと。
とても興味がありました。 牛乳をベースにした、素朴で優しい食べやすい味でした。

いろいろ調達をしに、コンビニへ行こうと道を聞いたら、最寄りの店まで10分以上道を戻ることになりました。
少し距離があるとはいえ、数日ぶりに見るコンビニは、やっぱり便利。
歩いていった辺りは、かつてゴルフ場で、その土地に1000戸家が建ったと、先ほどタクシーの運転手さんが話してくれました。
帰り道、迷いそうもない場所なのに、星空に見とれていたら、道を間違えてしまいました。
うっかりいにしえの世界に入り込みそうになりながら、迷って帰宅。
宿の人はいい感じにほっておいてくれて、気楽です。 のんびり就寝しました。

4-1に続きます。


天空の郷、吊り橋三昧(十津川)3-1

2013-02-11 | 近畿(奈良・和歌山)

2-3からの続きです。

○ 十津川番茶がゆ
○ ⑦柳本橋(橋長90m、高さ10m)
○ 八木新宮線
○ ⑧猿飼橋(橋長131m、高さ34m)
○ ⑨込之上橋(橋長161m、高さ19m)
○ ⑩二津野大橋(橋長193m、高さ35m)
○ 二津野ダムの放水

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○ 十津川番茶がゆ

今日も早起きして朝食前に温泉に入りました。
更衣所で、夕べも会った2歳の女の子とまた会います。小さいのにもう温泉が大丈夫なのね。
朝からパタパタと駆け回って、元気いっぱい。

朝もやに包まれた、すがすがしい空気の中でつかるかけ流しの湯。贅沢です。
朝食には和食を選択。ほとんどの宿泊客が和食にしていました。
地元名産の十津川番茶で炊いた茶粥が出ます。
食欲のない時でもするっといただけそう。
入湯後で食欲はしっかりあるため、きっちりいただきました。



昨日の朝のように車が凍っているのはこわいですし、車以上に道路が凍結しているのは危険です。
日が昇って道が温まるのを待って、出発です。

本当ならば、昨日1日が吊り橋巡りデーでしたが、pinoにかけあって、今日の午前中は行けていない気になる吊り橋を回ることになりました。
午後は半日移動日で、白浜まで行かなくてはならないため、時間を気にしながら。

○ ⑦柳本橋(橋長90m、高さ10m)

まずは、ホテルのすぐそばの西川にかかる柳本橋へ。
昨日の野猿のそばにあり、あとで渡ってみるつもりでしたが、野猿体験のショックですっかり忘れていたのです。



谷瀬橋以外で初めて、吊り橋の上に先客がいました。
国道と県道の交差する辺りにあるため、アクセスのいい場所にあるからでしょう。
観光客のようです。ラブラブのカップルで、キャッキャッと怖がりながらもハートをいっぱい飛ばして渡っていました。
いいなあ~、と思いながらも、彼らが渡り終わるのを待つ間、地味にウォーミングアップをしているリポビタンな私。



昨日でかなり免疫がついたため、板5枚はもう余裕でしょう。
小黒谷は3枚だったし。
ただ、朝の冷たい風が吹きつけて橋を揺らすため、結構怖さを感じます。身をちぢこませながら渡りました。



渡った先は果無峠越登山口近くで、熊野参詣道小辺路の街道ルートに続いていきます。
ここを上っていくと、昨日の集落へと着くのでしょう。
下には何台もの黄色いトラックが見えます。
「復興車」として、ナンバリングがされています。まだまだ震災の復興途中なんですね。

○ 八木新宮線

次の橋へと車を走らせている時、奈良交通のバスとすれ違いました。
あっ、1日3便の八木新宮線!人も乗っています。(あたりまえ)
十津川で必ず出遭うだろうと思っていたのに、昨日は一度も見かけなかったため、喜びました。



なおも後ろを振り返って、リアウィンドから去りゆくバスを見送ります。



この旅に出る1週間前、日本橋のまほろば館に八木新宮線の名物運転士、ユンケル上條さんのトークを聞きに行き、「なにかあったら連絡して」とご本人からケータイ番号付きの名刺もいただいてきました。
マツミンさんとユンケルさんの名刺を、今回はお守り代わりに持ち歩いています。
二人にヘルプすることがなければいいのですが、見知らぬ土地に知り合いがいると思うだけで、心強いものです。
(ユンケルさんも各地に飛び回って活躍されているため、どこか別の場所においでかもしれないけれど…)

○ ⑧猿飼橋(橋長131m、高さ34m)

次に猿飼橋へと向かいました。平谷小学校の裏にかかっています。
学校のそばに吊り橋があるなんて、なんだか危険だと思いますが、逆に通学のために必要経路として架けられたものなのでしょう。



小学生用のためか、きちんとメンテが行き届いている感じがします。
昨日の下地橋同様、ワイヤーが細かくなっており、子供の手足がうっかり外に出ないようになっています。
さっきの柳本橋と比べると、手のかけようの違いがはっきりわかります。
二津野ダム湖にかかっており、美しい湖面の水色に見とれます。
それにしても、長い~。
ここを毎日渡って通学する子は、度胸が鍛えられるでしょうね。



吊り橋最後の10mくらいを、走って渡ることを覚えてしまいました。
はじめは、怖さで少しでも早く岸に戻りたいという気持ちから、つい走り出していましたが、後ろを歩いている人に、橋の振動がダイレクトにくるので、たまったものではありません。
「~~~!」動けず、言葉にならず、少し涙目(?)で相手を睨みつけます。
次の橋の時にはそれを逆にやり返すという、「目には目を」的な仁義なき攻防が、始まりつつありました。

昨日の二村小学校と違って、この学校には活気があり、子供たちの息遣いが聞こえてくるようです。
ふと、校庭に建っている建物が気になりました。
近くに寄ってみると、それはプレハブ建築。
離れの教室かと思いましたが、外置きの洗濯機がいくつもあります。



これは仮設住宅ですね。被災地で幾度となく見かけたタイプの家屋です。
「東北からはるか遠く離れた場所で、仮住まい?」と驚きましたが、pinoに「震災じゃなくて台風じゃない?」と言われて、ああそうかと気が付きました。
まだ仮設住宅暮らしをしている人たちがいるということですね。
去年の3月には、東北の被災地視察をしましたが、今回も、ある意味被災地視察と言えなくもありません。
この山深い場所で、プレハブ住宅で冬を越えるのは寒くて大変でしょう。
被災者の方々が、早く以前の暮らしに戻れるように、願うばかりです。

○ ⑨込之上橋(橋長161m、高さ19m)

次に訪れたのは、込之上橋。十津川高校の裏にあります。度胸付けの橋ですね。



ここも下は美しい二津野ダム湖で、遠くまで景色を一望できます。

 



猿飼橋よりも、少し横木の幅が開き、ワイヤーの網目が大きくなっていました。
やはり高校生対象の橋だからでしょうか。



ここもかなりの長さ。絵になりますが、先ほどよりも揺れる気がします。
思い切って、真ん中の板からそれて、横木に乗ってみました。
や、やっぱりこわい~。橋もゆらゆら、湖面もゆらゆら波打っています。



自分の人生の状態を、リアルに見てしまったような気がするわ。
水面から遠くても、近くても、迫力は変わらないものですね。
吹き付ける風が冷たく頬をなでていきます。

○ ⑩二津野大橋(橋長193m、高さ35m)

十津川温泉峡を抜けて、R168をぐっと下っていきます。
十津川路七色の観光案内所でいったん止まって、ルートを考えます。
ずいぶん高いところを走っていますが、ダムははるか下。
ダム湖に行きたいため、168を逸れて下に降りていく道を探さなくてはなりません。

この観光案内所で情報が欲しかったのですが、閉まっていました。
「あれ、オープン時間って書いてあるのに閉まってる」と首をひねると「冬期休業中じゃない?」とpino。
そういうことですか~。
そこから見下ろして、下へと続く道を見つけました。

ここにも、田戸橋のように、工事時間が看板に貼り出されています。
ちょうど工事時間の最中だったので、逡巡していた私たちの車の横を、郵便局の車がサーっと通り過ぎていきました。
そういえば今日は祝日。「日曜・祝日以外」と書いてあるので、今日は工事はお休みのようです。
大丈夫だと、郵便局カーの後に続きますが、慣れている人のようには下りカーブを降りられず、どんどん距離があきました。



湖の上に、目指す吊り橋を発見しました。白い線が見えるでしょうか。細く頼りなく思えます。
郵便車が二津野ダムの上を通っていき、私たちも続きます。
ダムの上を車で通るなんて、初めて。特に禁止の表示もありません。いいんですね、いいんですね?



道は奥へと続きます。スイスイ先へと進む先導車がいてくれて、とても助かります。
途中で吊り橋の前にさしかかり、車を停めました。
郵便車は、さらに奥まで走って行きます。
どうやら、山の中腹に、小さな集落があるようです。
ダムの奥にある集落。なんてすごい場所なんでしょう。
そしてここのポストマンたちは、やっぱりすごい!尊敬します。



これまでの吊り橋も、長い長いと思っていましたが、ここはさらに長く、200m近くあります。
橋のたもとに石のお地蔵さんが2体おいでだったので、無事をお祈りしてから渡り始めました。



ここはかなり迫力がありました。風が身を切るように冷たく、途中で怖くなりました。



昨日の小黒谷の方が、究極でしたが、そこでは恐怖を実感しなかった私が、この橋では突然怖くなりました。
横のワイヤーの網目が、突然ザックリと大きくなったからでしょうか。
逆にpinoは平気なようで、サクサク渡って行きます。途中で置いて行かれ、強風に立っていられずにしゃがみこむ私。



これまでのどの橋も快調だったのに、ここでどうして怖くなったかはわかりません。
橋との相性かしら?(向き不向き?えー)
ここは、オシドリの越冬地と聞いていたので、たくさん見られるかと楽しみにしていましたが、たった一羽も見かけませんでした。
「あれ、いない、いない」と、下をのぞいてキョロキョロ探しすぎて、怖さにつながったのかもしれません。
先ほど渡ってきたダムが、遠くに見えます。



強風にあおられて、橋が何度もふわりと上に浮く気がします。
(ここで落ちたら、こわいな~)と、何度も何度も思いました。(こわかったせいで余計に怖くなるパターン)



ようやくのことで向こう岸に着いたら、今度はpinoが入れちがいに戻り始めました。
あー、今はなんだか不安なのに、また来た道を戻らないといけないのねー。
やっぱりとてもこわい橋でした。



でもpinoは、帰りはさらに余裕が出たのか、動画を撮りながら渡っていたようです。
最後には10m走をして、さらに私を恐怖に陥れました。ヒ~!

及び腰になりながら、よろよろと岸に帰還しました。
私がこんなに怯えているとは知らないだろうpinoが、のんびり出迎えます。
お地蔵さまにお祈りしておいてよかった。無事に渡り終えたことにお礼の祈りを捧げます。

川沿いに停めた車のそばには、黒い袋に入った土のうがたくさん積んでありました。
ここもまた、台風で土砂崩れした場所なのでしょう。



それにしても、かわいいオシドリたちが見られると楽しみにしていたので、ガッカリ。
この前江ノ島に行ったら、猫も一匹もいなかったし、どうしたことでしょう。

○ 二津野ダムの放水

バクバクがまだ収まらないまま、元来た道を戻り始めました。
昨日訪れたダムは、事務所が少し離れた場所にありましたが、ここはすぐそばにあったので、ダムカードをいただけないか、聞いてみました。
「平日、第一か第二発電所でお渡ししています」とのことで、どのみち今日はいただけないのですね~、と、がっかりして、車へと戻りかけます。
と、大きな水音が聞こえました。
もしや・・・?
のぞいてみると、はたして、ダムの放水が始まっていました。
え~!今この時まで静かだったダムなのに、放水が!!



転がるように駐車場に向かい、運転席で待っていたpinoからiPod touchを受け取ります。
「放水!!」と言いながらダッシュする私を見て、pinoも車から降りてきました。
近くで見ると、ものすごい迫力。
ドドド・・・!!という轟音が辺りに響き渡ります。



おお~!なんてラッキーな私たち!
ほかにダムマニアはおらず、完全に貸し切り状態です。
きっとダムカードをもらい損ねた私への、ダムからのお餞別ねっ?



別のダムでの放水を見たことがありますが、かなり遠くからで、こんなに間近で見られたのは初めて。
うわーい!
かなりテンションが上がりましたが、ふと見るとpinoは怖がって、コバンザメのようにコンクリにぴったりしがみついていました。


放水シーンをYouTubeに上げました。
今回は、高いところからの画像メインになりました。高所恐怖症の方、ごめんなさい…。
次回は移動メインなので、そうでもないですよ。(たぶん)

そんなこんなで、3-2に続きます。


天空の郷、吊り橋三昧(十津川)2-3

2013-02-10 | 近畿(奈良・和歌山)
2-2からの続きです。

○ 天空の郷・果無
○ 野猿
○ ホテル昴
○ 国王神社
○ 源泉かけ流し
○ むこだまし
○ 昴の郷

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さて、昼食をとって元気を取り戻してから、ふたたび出かけます。
吊り橋巡りはやめましたが、ほかに行ってみたいところがあるのです。
その場所は…果無!
「はてなし」と読むと知ってから、その地名の美しさに、ずっと憧れていた場所でした。

○ 天空の郷・果無

ハンドルは私が握っていましたが、かなりの勾配の細いくねくね道を、延々上っていきます。
行けども行けども山のカーブ道。ガードレールとはいえない停め石の間から下が見えて、根をあげそうになります。

集落を発見し、車から降りました。ここもまた、ひとけがありません。
でも、ちゃんと家があります。こんなに高い場所に。



見晴らしの良い場所まで上っていくと、そこに「世界遺産」の碑が立っていました。
そう、ここは、世界遺産の「熊野参詣道・小辺路」を通る場所なんです。
どこを向いても見渡す限り、山また山。まさに果てし無く続く山並み。熊野川も見えます。



高い場所から山々を望んでいるため、浮遊感もともないます。
まさに天空の郷。



民家から、腰の曲がったおばあちゃまが出てきて、納屋へと入っていきました。
よくポスターで見かける方かしら?



集落の看板おばあちゃまは二人おいでで、そのうちの一人はマツミンさんのおばあさんのお姉さんだそう。
一介の旅行者の私たちは、お声はかけずに静かにしていました。



ここの水はきれいで澄んでいます。
鯉も飼われており、その巨大さにびっくり。
おばあちゃんのペットかしら。



この集落は、100%自給自足なんだとか。素晴らしいですね。
少し日が傾きかけており、強い西日がさして、民家や畑に陰影を与えていました。
日をいっぱいに浴びる明るい場所。不便でも気持ちよい日々が過ごせることでしょう。





石造りの道は、熊野へと続いています。
イメージがマチュピチュと重なりました。まさにここは、実在する天空の城ラピュタ。



そんな場所にまでバス停があることに驚きました。(週に一日だけですが)
細い道なので、マイクロバスサイズでしょうけれど、もはや登山バスだわ。
もう少し上まで道は続いており、果無峠方面へと行ってみました。
道祖神のような石地蔵がいます。今でもここを歩いて、熊野参拝する巡礼者がいるんですね。
いつかは歩いてみたいものです。



バスはどこまで行くんだろう、果無の果てはどこなんだろう、と気になって、もう少し上まで車で行ってみました。
(こっちでいいのかな)とスピードを落としてそろそろ運転になった時、三重ナンバーのcubeから降りた男性が近づいてきました。
「あ、でも和歌山だからな」と、ピノのナンバーを見て言っています。
地元民じゃないということかしら。私たち、和歌山人でさえないんですけど…。
窓を開けると「よく写真で見る辺りってどこでしょう?」と聞かれました。
「この道をもう少し下ったところですよ」と教えると、「ありがとう!もうその先は行き止まりですわ」と教えてもらいました。



集落の奥には、人家と林道がありました。路線バスの終点は奥果無ですが、どうやらここではない様子。
でもほかに車道はなく、はてさてバスはどの道を?と果無の謎に首をひねりながらも、行き止まりでUターンします。
小辺路へ戻ると、先ほどのcubeが停まっていました。
無事辿りつけたことを確認して、私たちはそのまま下へと降りていきます。
果無から一望できる広大な光景は、ずっと山の中を歩いてきた身にとって、とてもすがすがしく、ずっととどまっていたい気持ちになりましたが、日が暮れる前に、まだやりたいことが残っているのです。



基準点をはっけーん!
石碑を探したかったのですが、見たところこの表示だけです。
チェックだけして、そのまま素通りしました。


 
○ 野猿

山を下って向かったのは、野猿(やえん)がある場所です。
野猿といっても、どんなものかわかりませんよね。
川に渡された一人乗りゴンドラで、ロープをたぐって向こう岸へと行く乗物です。
完全に人力で、吊り橋ができる前の人々の足だったとのこと。



写真で見て、(楽しそう、ぜひやってみたい!)と思っていました。
実際に見るのはこれが初めて。奥祖谷にもあるようですが、野猿といえばここ十津川の乗物のようです。
かつては、川向こうと「矢文」でやりとりをしていたという十津川の人々。
本当に山と川ばかりの、タフな自然環境です。



まずはpinoが挑戦します。殿様の乗る駕籠のようで、一人乗るともういっぱい。
「行ってきまーす♪」と、笑顔を見せて、するするロープを引いていきました。
その間、私は岸でお留守番です。いい絵だわー。



真ん中あたりで停まっており、ダウンジャケットを脱いでいます。
外はとても寒いですが、どうやら熱くなってきたようです。
そこから先は、速度が落ち、なかなか大変そう。それでもがんばって向こう岸まで到着しました。
すごい!
ただ、行ったら戻ってこなくてはなりません。



けっこう距離がある川です。目測100mくらいでしょうか。
帰りの野猿は、何度も止まりました。

大丈夫かなあと思って見ているところに、「おー、あった、ここやここ!」という声がして、車が横付けされました。
さっきのcubeです。車から降りてきたのは、男女二人ずつ。
「おっ、やっとるね~!」
関西4人組の登場で、突然辺りはにぎやかになりました。

楽しくヤジを飛ばしたり、いろいろ質問してきて、私も大わらわ。
まさに、にぎやかし(失礼?)。pinoが空中で孤軍奮闘しているのに、4人に質問攻めされます。
「和歌山のどこから来はったん?」「いえ、横浜からです」
「えーっ、だって車のナンバーが!」「レンタカーなので」
「これからどこへ行きはるの?」「もう宿に行きます」
「今日はどこに泊まりはるん?」「すぐそこに」
4対1のため、四方八方からの受け答えに大忙し。

ワイワイしている岸に、静かにようやく、pinoが帰還しました。へとへとの様子です。
いやー、がんばりました!
「次どうぞー!俺ら見てるけん」と、三重グループに応援されて、今度は私が乗りこみました。
私でも足を余らせてしまうくらい中が狭い、小さなロープウェー。
留め金を外して、動きだします。Ready...Go!



野猿の中からの前の視界は、こんな感じ。ゴールは遠いわ。



横の視界は、こんな感じ。座っているせいか、川面を近くに感じます。



どうしても傾いてしまい、バランスがとれずにゆらゆらします。
思ったよりもロープが重くて、引っ張るのに力がいるもの。
早々に(これは私は無理だわ)と思いました。
指の力は人一倍あるんですが、腕の力が無いのです。
遠い向こう岸に、自分の腕力だけで辿りつくのは、とても無理そう。
半分近くまできた辺りで、身体の向きを変えて、みんなの元へと戻りました。



ただ、戻る時は少し上り加減になるため、ロープを引く力はさらに必要になります。
三重ーズの面々が「がんばれぇ~」とやんやと応援してくれています。
でも、大変~。



関西の底抜けの応援に押されて、なんとか近づいていきます。
最後の一番大変なところは、pinoに手伝ってもらいました。
野猿から降りて、ゼイゼイ息を整えている横で、三重グループの一人が「よっしゃ、んならいくでぇ~」と乗りこみます。
最初は快調でしたが、やっぱり途中で止まって「無理や~!」と弱音を吐いていました。

満身創痍の私たちは車に乗り込み、「よい旅を!」と言って去りましたが、野猿に夢中の陽気な彼らには、別れの言葉は聞こえていないようでした。

○ ホテル昴

それぞれにぐったりしたまま、この日の宿、ホテル昴へ向かいました。
吹き抜けの、広々としたこぎれいなロビーの片隅には、西村京太郎の「十津川警部シリーズ」本がずらりと並べられてあり、壮観。



今回、十津川情報を集めるために「十津川」と入力するたびに、こちらの警部の話ばかりヒットしていました。
職場の同僚も大ファンで、全巻そろえているそうですが、じつは一冊も読んだことがありません。
でも、ざっと見てみたところ、十津川警部が十津川で活躍する巻はなさそうです。



ホテルの敷地内にも野猿があるということで、見に行ってみました。
確かに本格的なものがありますが、ここは下が川ではないので、迫力がいま一つです。
なににせよ、たった今ほかの野猿で体力を使い果たしてきたばかりの私たちに、これ以上トライするパワーはありません。



そこに、「野猿だ、野猿だー!」と親子がやってきました。
さっそく息子が乗りこみ、動かし始めます。

そばにある温泉飲水を飲みながら、ほどなくして彼らに訪れるだろう、タフなひと時を見守りました。
すぐに「父ーさーん!引っ張ってー!」と叫ぶ息子の声が。(やっぱり~)
まあ、親子で力を合わせれば、ハードな道行きも問題ないでしょう。



○ 国王神社

部屋のTVをつけると、十津川の紹介ビデオが流れました。
前日訪れた玉置神社や、今日渡った谷瀬の吊り橋などが映り、「うわあ」と見入ります。
そのうち、国王神社の紹介になりました。
あれ? あれれ?
きちんとした大きな神社が映し出されました。村人によるお祭りも豪勢です。
「神社の扁額は大久保利通によるもの」なんて説明もされています。

日中訪れて、参拝したのは、あんな大きなお社ではなかったけれど?
たしか、参拝ルートをショートカットして、南帝陵に辿りついて、そこをお参りしたような。
どうやら、本殿に気づかずにまっすぐ奥宮参拝をしたようです。
頭の神様にクレバー祈願(とボケない祈願←これは私)をしたはずなのに~!

まあそれでも、ちょっとショートカットしちゃっただけで、頭の神様にお祈りしたということは間違いないようです。
じゃあ、結果オーライということでいいでしょう。(いいかな?)

○ 源泉かけ流し

ここ十津川は、全国初の「源泉かけ流し宣言」をした村です。
つまり、全ての温泉が源泉かけ流し。
すごいですね!そんな村ご自慢の温泉に入るのを、楽しみにしていました。
開放的な温泉に入って、ようやくほっと落ち着きます。
柔らかい、気持ちのいいお湯です。
ここには、100%温泉のプールもあり、水着も持ってきましたが、温泉につかっていたらもういいやという気持ちになりました。
写真は外にある飲泉用の温泉と足湯です。



ここはロビーだけネットがつながるので、久しぶりに外界とアクセスがとれます。
まずは東京のマツミさんに、無事十津川に着いた報告をしますが、ここで体験したことは、とてもスマートフォンでは伝えきれません。
後日改めて、どっさりお話することにしました。
Facebookに吊り橋の画像をアップしました。友人はみんな驚いています。(ですよねー)

○ むこだまし

夕食は、果無御膳。
紀州さんま寿司、椿芋、鮎の塩焼きに八つ頭の焚き合わせなどが並びます。





さらに「むこだまし」という郷土料理が出ました。
かつて山地の十津川では米が取れず、嫁が婿に「お正月くらい白餅らしいものを食べさせたい」と知恵を絞って作った、粟の団子。
モチモチ、ツブツブとした食感でおいしいものの、お餅とはかなり違う味です。
でも昔の旦那さんは、奥さんの心配りに感激して、だまされてあげたことでしょう。
ああ、美しい夫婦愛!夫婦善哉。



そういえば、十津川の人は、神武天皇の道案内をしたヤタガラスの子孫だと言われているそうです。
史実的に道案内をしたのは、鳥ではなく、その土地の民だったのでしょうけれど、伝説にのっとって考えると、みんな聖なる鳥の血を継いでいることに。
ロマンチックですね。この辺りの人は、鳥人間で野猿に乗るんですね。(そう考えると、なんだか混乱)

食後のお茶を飲んでほっとしていたところで、私が突然「そうだ、外行こう!」と立ちあがったので、pinoびっくり。
思い出したんです。この地方では、山が連なる様子を「すばる」と呼び、それがこのホテルの名前の由来になっていること。
さらに、昴の郷の星の美しさは格別だということ。
ただ、ホテルの外には完全な闇が広がっていました。
入口の灯りを落とす宿って、初めてー!
夜に来るお客さんはいないということでしょうか。
ケータイの灯りのみでなんとか足元を照らして、少し外に出てみました。

○ 昴の郷

見上げると、星々が息づくように瞬いています。
今にも降ってきそうなほど、明るくくっきりと輝いています。
ただひたすらに、きれいでした。
なにかセンサーが反応したようで、突然灯りがともったと思ったら、そこはさきほどの飲温泉の場所でした。
そこで温泉水をちびちび飲みながら(あまり得意じゃないから)、足湯につかります。
外は寒いですが、足はほかほか~。
でもセンサーは、時間がたつと消えてしまい、真っ暗な中、足湯につかって温泉を飲んでいることに。
なんという絵でしょう。これまためったにない体験ですが、とにかく暗いと動けません!
きらめく星空の美しさを堪能できて、すっかり満足しました。

「で、昴ってなに?さらば~昴よ~?」とpino。
えっ、冗談でしょう? 私の大好きな星なのに。
「プレアデス星団よ」と言っても、「それ、何座?」と、ちんぷんかんぷんです。
山には詳しいのに、星には疎いのね。ワイルド半欠けですわ。
まあ、「昴」が歌えればいいか。いやよくないか。
「星はすばる、と言ってね…」と、星降る下で古文のおさらいを始めました。

ああ、なんという冒険だらけの一日だったんでしょう。
数々のスリリングな吊り橋のほか、天空の郷や昴の郷という、美しい場所も訪れました。
心を癒す、美しい星達を瞼の裏に残して、心地よい眠りにつきました。