風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

遠くて近い房総へ-1

2014-12-14 | 千葉
○ プロローグ

神奈川の隣の県ながら、海を挟んでいるためになかなか行く機会のない房総半島。
三浦半島に行くたびに眺めていますが、近いようで遠い場所です。
1月に訪れましたが、再び海を渡って半島上陸することにしました。

目的は、ドライブしながらのお寺巡り。
お寺好きのzimaと出かけます。

○ 快晴のアクアライン

天気は快晴。寒波が押し寄せる極寒の一日だと天気予報で聞いたので、おろしたての厚手のダウンコートを着ましたが、それほど寒さは感じません。
家の近くで集合し、「久しぶりだね、いつぶりかな?」「もう思い出せないねー」と言いながら、出発します。



川崎からアクアラインを通って行きます。
羽田空港のすぐそばなので、飛び立ったばかりの飛行機がとても近くに見えます。
近すぎて、心臓バクバク。海に落ちないでねー。



早朝だからか、アクアラインはすいていて快適。
海中トンネルに入ったのは覚えていますが、互いの近況報告をしているうちに、車は海の上を通っていました。
「あれ、海ほたるは?」
「もう後ろだよ」
話に夢中で、海ほたるを通り過ぎたことにも、気が付きませんでした。



zimaの運転には無駄がなく、身体に変なストレスがかかりません。
ドッタンバッタンの私の運転とはえらい違いです。
相変わらずの華麗なハンドルさばきですが、本人は「この道路がいいだけだよ」と謙遜していました。



海では海苔の養殖が見えました。
「この辺りは遠浅で、人が立っているのを見たことがあるよ」
そんなに浅瀬なのね!海に落ちても溺れずに済みそう!

○ 緑の国、房総

子供の頃には、何度か親に連れて行ってもらったことがあるそうですが、ほとんど覚えていません。
大人になってから房総半島に行くのは、これが3回目。
3回とも、海を渡る前と渡りきった後の、土地のあまりの変貌ぶりに、驚きました。
「県境の長いトンネルを抜けると、緑の国だった。」

手つかずの自然というか。いえ、手は入っているんですが、日本昔話に出てくるような原風景的な光景が広がります。
(土地の方、気を悪くされたら済みません)

海を渡り切ったところで、zimaが「どこで降りようかな」とつぶやきました。
選択肢なんてないのでは?と思いましたが、最近、高速道路が伸びたんだそう。
私たちが向かう先は富津なので、まだ少し高速道路を乗って行きました。

○ 東京湾観音

高速を降りた途端に、くねくねの細い畑道になります。
私ならハンドルを握りながらも腰が引けそうですが、今回は助手席ですっかりおまかせモード。



大林宣彦の映画に登場しそうな、レトロな駅の前に出ました。
内房線の佐貫町駅です。平屋なので、空が広く感じる~。時が停まったよう。

更に進むと、山の上に大きな像が見えてきました。
「あれはもしや、東京湾観音!」



その名は聞いていましたが、実際に見るのはこれが初めて。
本当に大きいわ~。高さ56mだそうです。
逆光でシルエットになっていましたが、なめらかな曲線が優美でした。いいことありそう。

そうして、最初のお寺に到着しました。

○ 仁王さんと不動さん

やってきたのは関東三十六不動の一つ、岩瀬不動尊。入り口に仁王像があります。



仁王と不動明王のコンビは、にらみがききまくり。
ここに忍び込める泥棒は、よっぽど豪胆者でしょうね。

お寺の人が庭掃除をしており、本堂の中へと勧めてくれました。
住職が中におり、御朱印をお願いすると、ご接待のお煎餅をいただきました。
zimaにお線香を分けてもらって、一緒にあげました。



ご本尊が不動尊。本殿の参拝を済ませた後、奥の観音堂へのルートを見つけたので、行ってみることにしました。

○ 土砂崩れの爪痕

お堂は崖下にあり、山の中腹に観音堂があります。
結構な石段を登って行きます。



観音堂の前で、驚きの光景を目にしました。
お堂の後ろはそそりたつ崖で、上から青いビニールシートがかけられていたのです。



どうやら、最近土砂崩れがあった様子。
お堂はギリギリ無事だったのね、と安心しかけましたが、よく見ると屋根が壊れています。
「お堂も、土砂崩れを受けちゃったのかな」
下を覗き込んだzimaは「土台がずれちゃってるよ」と声をあげます。
基礎から柱が、1mくらいスライドしていました。

生々しい自然の爪跡がそのまま残されており、驚きのあまり、声をなくす私たち。
土砂流に押されて、ずれたんでしょう。かなり危険状態にあったと分かります。
それでも、お堂の中は被害に遭っていません。
土砂流に押しつぶされずにそのままの姿で移動したようです。
木造ながら、しっかりと組まれた造りなんですね。



さらに奥へと続く道をたどってみると、細道は階段になり、それを登りきると、見晴らし台がありました。
町の向こうに、房総の海が見えます。

気持ちがいい光景ですが、足元の登ってきた斜面の方に目をやると、広げられたブルーシートに何とも言えない気持ちになります。
シートの下に見えるのが観音堂。
「崖の下にお寺を建てる時、後ろの斜面の木を伐採することが多いけれど、そうすると地盤が緩んで崩れやすくなるんだよね」
地中にしっかりと張り巡らされている木の根が抜かれてしまうからですね。
物知り~。



次に大雨が降る時までに、しっかりと土砂災害の対策を講じられればいいのですが。
お坊さんの住まいである庫裏は、建て替え中でした。まずは人の住むところから補強しているのかもしれません。

土砂崩れが気になりながらも、ぐるっと裏山散策をしたことで、不動尊だけでなく厄除け観音もお参りできました。

○ 真理交差点

次に、坂東31番札所の笠森観音へ向かいます。
内房から、外房の方へと向かったところ。
地図で見るよりも、房総半島は距離があるため、到着までに時間もかかります。
車内では、四国香川でうどんめぐりをした話を聞いて盛り上がりました。

袖ヶ浦市に入ったところで、交差点の信号に目がひきつけられました。
「真理ですって!」
読みも「まり」。全国の真理ちゃんに、教えてあげたーい。

国道410号線には、富来田富士見という信号もありました。
「ふくたふじみ」と読むそうです。一気に長くなったわー。
近くにあるのは、JR久留里線の馬来田(まくた)駅。
ふくたとかまくたとか、紛らわしいですね。

駅の近くには「真理谷」交差点がありますが、こちらは「まりやつ」と読むそうです。
まりやなら女の子名前が続いたのに、ちょっと残念。



○ 子供の遊び場ならず

笠森寺の大きな駐車場には、結構な数の車が止まっていましたが、見たところひとけがなく、とても静か。
「参道入り口」と書かれた場所から、うっそうとした木立の中に入って行きます。
結構な数の石段を登って行き、息切れしました。

境内に鳥居があったので、寄ってみます。
笠森熊野神社で、扁額に「熊野三神」と書かれていました。
遠く離れた熊野の神様を、房総に勧請したんですね。



参道に、しめ縄の蒔かれた大きな穴の開いた木があり、子供がくぐって遊んでいました。
「わあ、私もくぐりたいなー」と言うと、「いやいやちょっと待って」とzima。
指さした方を見ると「子授楠(こさずけのくす)」と書かれていました。子供たち、遊んじゃいけませーん!
子宝祈願って、なぜかくぐる系が多いですね。



階段の上にある二天門内には、髪を逆立てた、スリムな「風神」と「雷神」が祀られていました。
「立春大吉」の札が打ちつけられています。
立春といったら節分の翌日ですが、いまは12月。
時期が違いますが、2月に打ち付けた分かしら。
どんどん重ね打ちされ、立体的になっていく札を見るたびに、いったいどこまで増やすんだろうと思います。
重力への飽くなき挑戦ですね。



○ 真四角の笠森観音

そうしてたどり着いた本堂。
真四角の伽藍を眺めます。こんな形のお寺を見たのは、初めて。
京都の清水の舞台を思い出しますが、このような形はここが唯一のものだそうです。
不思議な変わった光景から、目が離せません。



まずは手水舎でお浄めをしてから。
自然さを感じるあたりがこのお寺に合っている、すてきな龍の手水舎です。



本堂へは、遠くからでも斜めに見える階段を上がって行きます。
予想にたがわず相当急で、手すりにつかまらないと、バランスを崩してしまいそう。
靴を脱いでスリッパに履き替えるため、滑ったらザ・階段落ちです。
屋根がついているだけの、建物の外なので、突風が吹いたらどうしようという怖さもあります。



手すりの向こうには、本堂の足組が見えます。
太い木材ですが、これで支えられているってすごいですよね。
なぜ揺れずにいられるのかしら?なぜつぶれないのかしら?
日本の木造建築って、本当に素晴らしい。上まで上れたことに、感動します。



御朱印をお願いしている間に堂内で読経をしたら、お坊さんが書き上げて、私がお経を読み終えるのを待っていてくれました。
ひー、プロの人に聞かれちゃったよ~、と、恥ずかしくなりましたが、「どちらから起こしに?」「ご苦労さまでございました」と、親切に応対していただきました。
でもあせってハイスピードでお経を読んだため、zima(読経未経験)から「お経はもっとゆっくり読まなきゃ」とダメ出しが出ました。



登ってきた下界を見下ろします。
ここは、高所恐怖症の人は無理そうですね。
四方が見渡せて、見晴らしはとてもいいのですが、残念ながらここは内陸、どんなに目を凝らしても海は見えませんでした。

帰りの階段は、行きよりも恐怖感。
お尻で滑って行ければいいのに。



時折大きな鐘の音が響いていたので、鐘楼のところへ行ってみます。
参拝を済ませてしまったため、鐘は打たずに眺めるだけにしました。
杖を突いたよぼよぼのおじいさんが、おばあさんに支えられながらやっとのことで鐘楼堂に登ってきましたが、誰よりも大きな音で勢いよく鐘をついていました。



約2万坪の山全体がこのお寺の敷地。
お寺を取り巻く林は、創建当時より禁伐林として保護されており、昔のままの状態で残されている自然林は、国の天然記念物に指定されています。

来た道とは違う道を通って帰ってみます。
いくつもの年配グループが狭い石段を登ってくるたびに、みんなが登り終えるまで上で待って、挨拶を交わしました。



その2に続きます。

鎌倉横浜・里帰り index

2014-12-04 | 神奈川


◆ その1 (逗子、鎌倉)
   冬の晴れた日、里帰り中の友人と逗子に向かいました。
   再訪したいという懐かしの場所を一緒に散策します。
   海風と山風に吹かれながら、鎌倉まで巡りました。
    ○ 札幌の友人との再会 ○ 逗子のパスタ ○ 北風強風の日
    ○ トンネルを抜けると ○ 鎌倉寺社巡り ○ 夏の名残のカマキリ
    ○ 駅前パンケーキ ○ 不二家パフェ



◆ その2 (みなとみらい)
   あまりの寒さに、早々に横浜に戻ることにします。
   古都からクリスマスイルミネーションの町へ。ツリーの写真撮りまくり。
   友人の思い出のB級グルメに付き合った一日でした。
    ○ 鎌倉脱出 ○ 横浜到着  ○ 札幌に足りないもの ○ 夕食の打診
    ○ クリスマスツリー ○ 勝烈庵のカツ ○ 「無事」の二文字
    ○「十二月十二日」 ○ 食後のお散歩 ○ そよ風の横浜




鎌倉横浜・里帰り-2

2014-12-03 | 神奈川
その1からの続きです。

○ 鎌倉脱出

とにかくこの日は、木枯らしが吹き続ける寒い日。
三方を山に囲まれ、一方が海に面した鎌倉は、山風と海風が吹くところ。
とみに寒さを感じるのは、気のせいでしょうか。
建物の外に出るとすぐに身体が冷えてしまうため、逗子から鎌倉までやってきたものの、早めに横浜に戻ることにしました。
友人も「分厚いコートを着てきたけど、それでも風が入ってくるよ」と首をすくめています。
札幌の方が格段に寒そうですが、海からやってくる鎌倉の寒さとは、比較できないものがあるそうです。

鎌倉駅のホームからまっすぐ見えるホテルニューカマクラのクラシックな建物を眺めているうちに、逆方面行の電車が到着し、発車メロディが流れ出しました。
メロウな「かまくら」の旋律が、フルートのデュエットで奏でられて、物悲しさは倍増。
毎回鎌倉駅に降りると、ホームでこのメロディに迎えられて切ない気分になるものです。
でも、やってきた電車はボックス席だったので、嬉しくなってメロウモードは消えました。

○ 横浜到着

横浜に着きましたが、さきほどパフェを食べたばかりなので、全然おなかが空いていません。
「今日は食べてばっかりだもんね」と友人も苦笑い。

「じゃあ、そごうに寄っていい?」
リクエストを受けて、そごうの上に行きました。なんだろう?と思ったら、友人はウフエモアのお店に行きたがります。
ここも私がこの前入って、ふわふわのスフレパンケーキを食べたところ。
チェックしに来たのね。ほんとにパンケーキが好きなのね~。



ウィンドウに飾られたサンプルをじーっと見て「もうお茶しちゃったけど、ここでもよかったね」と一言。
たしかに~。さっきは寒くて、カフェで暖を取ることばかり考えていました。
もうパンケーキは入らないから、ここは次回にとっておきましょう。

○ 札幌に足りないもの

札幌での生活にはほぼ満足しているものの、食の面で残念なところがあるという友人。
「パスタ屋ととんかつ屋は、おいしい店を見つけられないんだよね~。かなりあちこち探しているんだけど」
意外だわ。北海道といったらグルメ大地、おいしいものの宝庫というイメージですが、そういうわけでもないのかも。

「そんなわけで、夕食は、勝烈庵にしていい?」
闊達な友人にしては珍しく、遠慮がちに打診されます。
そこまで熱く語られたら、異論はありません。
パスタはランチで食べたから、夜はとんかつですね、はい。

「もちろんいいけど、まだおなかすいてないから、歩いて行こう」
「オッケー」
横浜駅から歩き始めました。

「札幌の人に“おいしいとんかつ屋、知ってる?”って聞くと、みんな“和幸”って言うんだよ~(泣)」
涙目で訴える友人。
和幸もいいけど、やっぱり勝烈庵ですよね!

「ついでにいうと、札幌のカレーはスープカレーばっかりだから飽きちゃって」
さらにおなかに余裕があったら、横須賀海軍カレーも食べたかもしれなかったわけですね。
やっぱり首都圏においしいものが集中しているんでしょう。



みなとみらいグランドセントラルタワーのツリー。
「もう12月だもんね」「そろそろツリーが出る頃だね」とのんびり言っていましたが、こののちたくさんのツリーを見ることになります。



水の上に浮かぶ、輝く球体。とても不思議でしたが、近くに寄っても水があるため、触れません。
暗い中でとても幻想的でした。

海沿い近くの道をたどりますが、明らかに鎌倉よりも寒くなく、北風もさほど感じません。
どうしてでしょう。より波が来ない内海だからかしら。
イルミネーションが多くて、気持ち的に温かいからかしら。



外を歩いていても、鎌倉ほど冷えることなく、ランドマークにたどり着きました。

○ クリスマスツリー

クイーンズイーストにシンギングクリスマスツリーが飾られると、この年ももう終わりに近づいているんだなあと実感します。
今回のテーマは、ミラクルツリー。
これが通常の姿です。



ライトアップの時間を待って、色とりどりのイルミネーションに輝くツリーを眺めました。
ロマンチックだわー。













ランドマークのテーマは、夢があふれるシンデレラツリー。
今回は、どちらのツリーも次々に色が変わっていき、ファンタスティックです。







魔女も飛んでいるんですよー。



どちらも今年は白を基調とした、上品な雰囲気になっていました。
写真を撮りまくりました。うーん、今年もきれいで大満足。

○ 勝烈庵のカツ

桜木町駅へと向かう動く歩道からは、夜景がくっきりと見えました。
キリリとした冬の空気。



駅を通り過ぎて、馬車道へと向かいます。
馬車道十番館のクラシカルな建物を飾るイルミネーション。
ステンドグラスと合っています。



十番館の横にある勝烈庵に到着。
平日なのに、中は混んでいて、少し待ちました。
この店はいつも賑わっています。

浜っ子にとってカツといったら、やっぱり勝烈庵。
ここを超えるとんかつは、札幌にはないのでしょうか?
「ない!」と断言する友人。
「ああ、勝烈庵の札幌支店ができないかなあ。呼び寄せようかなあ」
今のところ、支店は横浜近隣のみですが、その情熱で、いつか本州越えさせるかも~。



秘伝のソースをたっぷりとかけて、友人は噛みしめてその味を堪能していました。
「ああ、幸せ~!」
心底嬉しそうな友人の顔を見ると、人生の幸せに食って大きいものだなあと、あらためて思います。

○ 「無事」の二文字

二階に上がる階段の壁に、棟方志功による「無事」が飾られていました。
何度となく通った階段ですが、気が付いたのは今回が初めて。
今までも飾られていたのかしら?
それとも、転居先での友人の無事を願う気持ちから、目に留まったのかしら。



勢いのある筆致が強烈ですが、「無事」とはつまり「すべて世はこともなし」という意味ですよね。
All's right with the world. いい言葉です。
だからこそ、心置きなくおいしいカツを食べられるというものです。

○「十二月十二日」

帰り際、玄関の上に貼られていた紙が気になりました。
「十二月十二日」と書かれているだけの細い紙。
これは、勇気を出して聞いてみよう、とお店の人に伺ってみました。
なんでも、稀代の盗賊、石川五右衛門が処刑された日がこの十二月十二日だそうです。
そして、再び五右衛門が天井から忍び込んできた時に、この紙を見て(そうだ、おれ処刑されたんだっけ)と思い出させ、退散させるために、上から見る方向で貼っているんだとか。



つまりは、泥棒除けなんですね。なるほど~。
まさか五右衛門に関係しているとは思いませんでした。
このさりげなさがいい感じ。
伝統を守る京都のような風習が、ここ横浜でも行われているとは。
「毎年十二月十二日に、お札の貼り替えを行うんです。もう少しですね」
その時に立ち会ってみたいものですが、きっとお店の人たちで内々に行うんでしょう。

○ 食後のお散歩

またもやおなかがパンパンになったので、再び横浜駅まで歩いて帰ることにしました。
元東横線桜木町駅の線路下を通って行きます。
海から少し遠ざかっただけで、全く寒さを感じません。
恐るべし、海風の威力。

「前は、壁一面にびっしり絵が描かれていたのに、今はきれいになくなったね」と見ていたら、友人が
「わ、このバス停、高いね」と言いました。



振り返ってみると、たしかに見たこともないほどのっぽのバス停。
「たしかにこれじゃ、上に貼られてる時刻表、見れないね」
「お年寄りは大変そう」

友人は、いつも私の気づかないところをチェックできる感性の持ち主なので、一緒にいると新鮮で面白いです。

○ そよ風の横浜

そうして横浜駅に到着しました。
ルミネの前は、大人気公開中の『アナと雪の女王』仕様になっていました。
夜なので誰もいませんでしたが、休日には女性と子供が大勢集まって、かわるがわる記念写真を撮っている場所です。
今が独り占めのチャーンス!ありの~ままで~♪



帰りの横浜駅ホームで、友人が「なんとなく風が吹いているの、感じる?」と言いました。
ここまで来たら無風だと思っていたけれど、気をつけてみると、たしかにそよそよと頬をなでていくかすかな風を感じます。
「この辺りでは、いつでもずっと風が吹いているんだよね。でも札幌ではそんなことないんだよ」
突然、壮大なことをつぶやいた友の顔を眺めます。あなたいま詩人になりました?
それは、海に近いからでしょうか?
やっぱり、おもしろいところに気が付く人だなあと思いました。

私「今日は寒かったから、散策よりも食べ物メインになっちゃったね」
友「だがしかし、悔いはない!」
私「そうでしょうとも。お気に入りのお店で食べたいものを食べたんだし」
友「実はこっちに来てから、勝烈庵に3回たて続けに通ってるんだ、テヘッ」
私「ええ?行きすぎじゃない~?どんだけ好きなの~!」
そのうち、本気で札幌店を誘致するんじゃないかと思います(笑)。

里帰りした人と会うと、当たり前のような日常をヴィヴィッドに見返せるのがいいところ。
自分も少し旅行者気分を味わえた一日でした。


鎌倉横浜・里帰り-1

2014-12-03 | 神奈川
○ 札幌の友人との再会

ここのところ、身近な友人が立て続けに遠くに行ってしまい、さびしい気持ちになっていますが、遠くに行った友人が一時的に戻ってきたりもして、久しぶりの再会づいています。

東京から札幌に移り住んで、江戸っ子から道産子になりつつある友人と会いました。
「どこか行きたいところはある?」と聞くと、リクエストされたのは、逗子。
逗子って何があったかしら? 逗子マリーナと披露山公園(マイナー)くらいしか思い浮かびません。

待ち合わせをして、逗子に向かいながら聞いてみると、
「特にっていうところは、特にないねー」との返事。
「いや、なんか京急逗子線に乗りたかったんだよね」
目的は電車ですかい。



車窓からちらりと見えた母校は、イチョウ並木が色づいていました。

○ 逗子のパスタ

終点の新逗子で京急を降りました。
京急の下りは、海へのルート。ここまで来ると、すっかり旅気分です。
乗ってきた電車の写真を撮ると「1000系はよくある車両だから、わざわざ撮らなくてもー」と鉄発言をされました。
単に撮りたくなっただけで、レア度は関係ないのよ~。



京急新逗子駅からJR逗子駅に移動して、まず向かったのは、駅前ロータリーに面したビル2階にある「ぼんごーれ」。
「ここのパスタが食べたくってね~」
特にパンチもオーラも感じられない、シンプルすぎる雰囲気のお店ですが、友人にはここが懐かしい味だとのこと。

「ここ、銀座ソニービルにある"あるでん亭"からのれん分けしたお店なんだよね」
「あるでん亭、前に一緒に行ったことあったね」
「あの頃はいろいろ種類があったけど、だんだんメニューが減って、今では厳選されたものだけ残っているんだって」
「えー、お店大丈夫なのかな」
「うん。みんな頼むものが一緒なだけじゃない?」



"あるでん亭"と"ぼんごーれ"、確かに店名のセンスが似ていますね。
たらこのパスタにしました。普通盛りなのにこんもりたくさん。
うん、茹で上げのアルデンテです。おいしい。

○ 北風強風の日

天気は快晴ですが、すごい風が吹いている日です。
逗子まで来ると、いっそう風の強さを感じます。
駅前のパームツリーも、ほぼ真横にザーッとなびき続けています。

半日授業なのか、制服を着た少年たちが大勢駅前を歩いていました。
「逗子開成の子たちだね」



おなかいっぱいになり、散歩をすることにしました。
風にあおられながら、海岸へと向かいます。
逗子は駅から海まですぐ。
でも、海に近づくにつれて、どんどん風が強くなり、あおられて足を踏み出すのも大変。
風力に負けそうで、こりゃたまらんわ状態になりました。



ようやく海岸まで辿り着くと、そこはウィンドサーフィン天国でした。
風が強い快晴日。確かに波乗りするにうってつけです。



帆をはためかせて、普段見ないような超高速で、ひゅんひゅん海の上を滑って行くセイルボード。
サーファーたちにとっても、こりゃたまらんわ状態でしょう。



海の上には人が何人も浮かんでいますが、この日は平日。
サーファー野郎は、波乗り日和の日には仕事を休むのでしょうか?聞いてみたいわー。



陸で見ている私たちも気分がのってきて「このまま海岸伝いに歩いて鎌倉まで行こうか」と話しましたが、地図を見ると、岬をぐるりとまわりこむ形でかなり大回りになります。
友人は、砂浜の砂が飛んで目に入ったと涙を流しているし、休みなく風にずっとあおられ続けていると、全身冷え切ってしまいそうなので、海から離れた道路沿いに歩いて行くことにしました。

○ トンネルを抜けると

トンネルを3つ抜けたら、そこはもう鎌倉。
安国論寺が近くにあったので、行ってみます。



お寺の前には、イチョウの葉をぎっしりつめた大きなビニール袋が10個ほどあり、「イチョウの落ち葉を掃除したところね」と気が付きました。
確かに境内の足元はきれいで、イチョウの葉は全く落ちていませんでした。



それから隣の妙法寺に行きました。
観光寺院ではなく、ひとけがありませんでしたが、本殿前まで入って良しとのことでした。
う~ん、おいしそうな色~。鳥たちが今にも飛んできそうです。



○ 鎌倉寺社巡り

鎌倉好きの友人ですが、八雲神社は知らなかったようでした。
境内に大きなご神木ががそびえる、自然に満ちた場所です。
私が神社が好きなのは、大きな木があるのも理由の一つだなあと思います。



さらに歩を進めると、常栄寺、通称ぼたもち寺がありました。
初めて訪れる場所です。



ここの名前と朱塗りの入り口が印象的で、気になっていたところです。
名前にちなんで、ぼたもちを売ったら、たくさん売れるそうですが、そうした商売っ気はなさそう。



次に妙本寺に行きました。
立派な山門をくぐると、広々とした境内の中に入ります。



奥にある本殿を参拝しました。
「前までは、神や仏に祈ることなんて全然なかったのに、今では手を合わせて新しい場所での加護を念じているから、人って環境が変われば変わるものだなあ」と友人。
私も一緒に、友人の新天地での活躍を祈りました。



道路から少し奥まった場所にあるとはいえ、こんなに大きなお寺を知らなかったなんて。
幼稚園の建物が渋ーい。レトロでいいですね。
大きくなったら「ここ通ったんだよ」と自慢できそうです。



今回巡っているお寺は、どれも日蓮宗の寺院。
鎌倉は日蓮をかくまった場所という所以から、日蓮ゆかりの寺院が多い土地です。

鎌倉の寺社は、かなり訪れたつもりになっていましたが、それでもまだまだ知らないところは残っているものです。
いつも同じところを繰り返し訪れているからでしょうね。
人と散策すると、いつも自分が通るのとは違う道を知るので楽しいです。



仏具店の看板に目を留めました。
電話番号が「フーフでナムナム」!かわいい!
創業弘化4年って、西暦でいうと1847年。170年近い歴史があるお店なんですね。ナムナム。

○ 夏の名残のカマキリ

途中、マンションの白壁に、大きなカマキリが停まっているのを見つけました。
見事な鎌を持っています。



「こんなに寒くなったのに、まだいるんだね」
冬はどうしているんだろう?と思いますが、カマキリは越冬できずに命を落としてしまうそうです。
限られた命を大切にね!(でんこちゃん風)



若宮大路に出るときに、本覚寺を参拝がてら、境内を通り抜けました。
本堂は改修工事中でしたが、仁王門の中に仁王様がいなかったので、ビックリ!
中を覗き込んでももぬけのからです。
「仁王が消えてるよ!二体とも」
「え、どこに行ったんだろう?」
「あんな大きいの、保管場所にも悩むよね」
「ネットバンクのような仕組みだったら、空中にエア仁王を預けられるのにね」
「??」
私のセリフ、友人はわかってくれたのでしょうか。いや、あきらめよう。

○ 駅前パンケーキ

そうしてにぎやかな鎌倉駅前にやってきました。
小町通りにはこじゃれた店が多いですが、今回気が付いたものが。
よーく見ると、時計の下に書かれていたのは・・・



i-ZA鎌倉!
建物の名前が「いざ鎌倉」~。
正しい読みは、アイザ鎌倉だそうです。(イザでいいのに…)



「身体が冷え切っちゃったし、お茶にしない?」
「イワタ珈琲店にしようよ」と声を弾ませる友人。

パンケーキ好きの友人は、前に私がここで食べたホットケーキのことを覚えていました。
そして星野珈琲の分厚いパンケーキのことを教えてくれたのは、この友人。
お互い、ホットケーキ情報を交換する、甘~い間柄なのです(笑)。

ただ、イワタ珈琲店の外には長蛇の列ができていました。
「あれだと、待っている間に冷えきっちゃうね」
逗子の海から歩き通しで、寒くてブルブルの私たち。
「じゃあ、向かいの不二家にしよう。ここのホットケーキも好きだから」と友人が言いました。



駅前にいたワンちゃん。バーバリーのマフラーしてる~。
お似合いだわ~。
きっと飼い主さんとお揃いなのね~。

○ 不二家パフェ

不二家ではすぐに席に通してもらいました。オー、久しぶりのペコちゃん。
メニューのパフェがとてもおいしそうで、私はティラミスパフェを頼みました。
外は寒く、暖房のきいた室内でアイスを食べる、このささやかな贅沢がいいわ~。
友人は「ここの味は定番だよ」とホットケーキに満足げです。



「札幌にも不二家はあるでしょう?わざわざここで食べなくたって」
「いや、それがないんだよね」
「えー、そうなんだー」とその時は聞いていましたが、あとで調べてみたら、ちゃんとありましたよ、友よ。
北海道にはおいしい土地のスイーツ店が目白押しで、お茶をするにも目移りしちゃいそうですね。

その2に続きます。