雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

小さき者へ

2007-03-06 | 小説
 重松清氏の『小さき者へ』

 フッ・・・まぁ、マグナムチ○コを備え持つオレ様からすれば、このタイトルは一笑に付するものだがな・・・

 と、そんな話ではございません。当たり前です。

 今回も、鼻の奥のほうが「ツン」とくるお話が六編収録されております。手短に、ホント、サラッと、その六編をご紹介しときます。

 まずは『海まで』ですが、初っ端からなんだかもどかしい親子関係が描かれております。なんとなく、父親のもどかしさも解かるし、頼りない長男の気持ちも解かるし、さらに父親の母の想いも、じわじわと感じられる一編です。

 次に『フイッチのイッチ』は氏お得意の小学生一人称です。この辺はホント、巧いです。終わり方も、ハッピーエンドじゃないのに爽やかさを感じさせるという、イイお話です。

 そして表題作『小さき者へ』これは、少々変わった手法で書かれていて、とても面白いです。内容的には、どうしようもなく暗いですけど・・・。ビートルズの好きな方、あと洋楽に詳しい方は途中「ニヤリ」としてしまう記述も。
 オレはこのお話、結構好きです。

 で、『団旗はためくもとに』これもやはり、しばしば氏の作品で見られる女子高生一人称ですが、さすがに四十過ぎたオッサンが女子高生一人称はそろそろイタイなぁ・・・と、思っちゃいました。てへ。
 でも、ラストは案外、泣けます。

 そんで『青あざのトナカイ』これは、もう「オッサン、がんばれよ!」って言いたくなるお話ですね。重松氏に『負けを背負っているオッサン』を描かせたら右に出るものはいないんじゃないか?と。

 最後は『三月行進曲』これもね、なんだか弱いオッサンがカミさんと娘に厭味っぽくされてる姿がヒジョーにリアルで、ねぇ・・・でも、自分の想いというか役割というのかを、しっかりと、まではいかないけど、たどたどしくも進んでく主人公のオッサンに共感してしまいます。
 オレ的にはこれが一番良かったかな?まぁ、どれも、良かったですよ、いつものことながら、うんうん。

 結局ね、全六編、テーマは『家族』『父親』が軸になっております。みんなどこにでもいるような、普通の弱っちいオッサンばかりです。

 そう、そんなオッサン(父親)を描かせたら、重松清という人は、日本一ですよ。あぁ・・・だからオレ、ハマっちゃうのか・・・ううっ、ツン!

 
 
コメント
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