雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

系図

2007-03-26 | 雑記
 時は遡り土曜日の話・・・

 昨年末に転んで脚の骨を折った私の親父が、この前また転んで右手の骨を折った。
 で、土曜日の午前中にお見舞いへ行ってきた。母親などから、本人は大分意気消沈している、などと聞いていたので、覚悟を決め、気合を入れ、努めて明るい顔で病室に入った。
「よう!」
 と、軽快に入っていったのだが、親父、グースカ爆睡中・・・。

 とりあえず、身体を揺らして起こしてみる。
 数秒後、寝ぼけながらも起き上がり、
「小便」
 と言って一人で立ち上がり便所へ・・・。

 スッキリして落ち着いたらしい、
「おおぅ、なんや?」
 などと相変わらずのセリフ。意気消沈?は?

 それでも身体に固定された右手が痛々しい。私は
「痛いかぁ?」
 とアホな質問をしてみる。
 すると親父は少し微笑みを交えながら
「なぁん、こっち麻痺しとるし痛ないんや」
 と・・・。

 そうは言うものの、やはり折れてるんだからさ、それなり痛むのだろう。ふっと表情に翳りを見せたりする。

「やっぱ、痛いんやろ?」
 私が追い討ちをかけるように訊ねると、親父はこう言った。
「なぁん、それより、最近、髪の毛がよう抜けるから、そっちのほうが心配やぁ」

 ・・・・・・・あっ、そ、髪の毛、ね・・・・。

「そりゃ、齢のせいや、しゃあない・・・」
 慰めもヘッタクレもない私の言葉を聞きながら、親父が笑う。

 それを見て、息子の私は理解する。

 あぁ、親父、オレに心配かけまいとして、ワザとこんなこと言ってるんだよなぁ・・・と、温かい気持ちで親父のほうに目をやると、親父、なんだか真剣に枕の上に落ちてる髪の毛を切なそうに拾ってやがる・・・・。

 うーん、こりゃ、マジで髪の毛のほうが心配なんかな?
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする