雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

球体の蛇/道尾 秀介

2010-03-12 | 小説
 別段狙ったわけでもないが、借りてきた三冊の本は全部「青春小説」だった。まあ、青春小説が好きだからそうなってもおかしくはないわなぁ。

 というわけで、青春小説3連発。ラストは新進気鋭のミステリ作家(もう新進気鋭でもないか)道尾秀介が描く泥臭い十七歳の青春!

 これは、よく言う「青春ミステリ」とかとは、ちょっと違うと思う。っていうか、ミステリっていうより、もう立派な文芸作品。いや、ミステリ小説が立派な文芸ではない、とかではなくて、要は「本格ミステリ」ではない、ってことかな? まあだから、ミステリといえばミステリなんだけど、ぶっちゃけもうそんなん超えてるっていうか。まあ、読みゃわかる。(あ、投げた)

 青春小説は切ない。これはもう青春小説には欠かせない要素だと思う。
「切なくなければ青春じゃない!」そう言い切ってもいい。
 従って、朝井リョウも瀬尾まいこも、じんわりと切なさが伝わってきてとても好い青春小説であった。
 そしてこの『球体の蛇』道尾秀介。もう、とことん切ない。ってか、痛い。最後の最後まで痛い。哀しい。そうこれが、道尾秀介の小説なんだよ、と自信を持ってお薦めできる一冊。
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僕の明日を照らして/瀬尾 まいこ

2010-03-12 | 小説
 瀬尾まいこさん、2年ぶりの新作は凄まじい内容である。

 主人公の隼太(中学2年生)が、母親の再婚相手に虐待を受けている、という概要。なんか、こう書くととてつもなくドス暗い内容に思えるが、実はそうでもない。主人公はそのことを誰にも告げず、当の本人、再婚相手の優ちゃんと二人で懸命に乗り越えようとする。ほら、なんか希望が見えてきた。

 でも考えてみれば、今までの瀬尾まいこさんの作品って、わりと暗い部分が描かれている。でもそれが、ドロドロしたところがあまりなくって、あっけらかんというか、なんかスパーンと話の流れに乗っかってそのまま明日に向かってる、なので殊更暗いなぁとは感じなかった。加えて、穏やかな筆致と柔らかい文体だからだろう。

 これも所謂「青春小説」の括りになると思うが、前述の朝井リョウとはかなり異なる青春小説だった。

 私と同じ35歳の瀬尾まいこさん。彼女から見た十四歳というのは、こういった感じなのかな、と思った。
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桐島、部活やめるってよ/朝井リョウ

2010-03-12 | 小説
 なんだか、キラキラしてる。これぞ青春小説! ってのがビシビシ浴びせられる。ともすれば豊島ミホが書きそうな具合のお話だけれど、決定的に違うのは卑屈さが豊島ミホのソレよりもカラッとしているところだろうか? そして作者の年齢だろうか?

 平成生まれの作者。それだけに、十七歳の心情や行動、言動がとてもリアルに感じられる。といっても、ワタクシは最近の十七歳のリアルなんて存じ上げておりませんが……まあ、こんなんか? こんなんだよな、最近の十七歳って! と。
 それに、いくら時代が違うとはいえ、十七歳は十七歳なんだよな、やっぱ。
 各章で主人公が変わるけれども、舞台は同じ高校。そしてキーワードの「桐島」。所謂、連作短編。その中に出てくる登場人物に、自分と近しいものを感じる人もいるだろうし、ああ、こういう奴いたよなー、ってのもあると思う。

 人それぞれのセヴンティーンがあるけれど、どこかに自分のセヴンティーンと触れ合う箇所が見つかるはず。

 第22回小説すばる新人賞受賞に名の恥じぬ、快作と言えるでしょう。
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