ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

パスカル 痛みとともに生きる

2009-08-15 14:02:32 | Weblog
田辺保著、平凡社新書。

先日読んだアランの『幸福論』がつらかったので、パスカルについて読んでみることにした。
はやく『パンセ』を読めばいいんだけど、もう少しアイドリングしていたい気分。
それで、パスカルの生涯と『パンセ』を俯瞰できそうなこの本を選んだ。

実は、この本を読み始める前、パスカルを読むか、シモーヌ・ヴェイユを読むか迷った。
でも、結果はどちらでも一緒だったんだと思う。
300年前のパスカルが直観したことを、20世紀にヴェイユが進めているところがたくさんある。
この本では、そのつながりが触れられ、簡単に整理されてもいる。
結果的に、2人に対する理解が深まったというわけだ。

パスカルは父が大好きで、ヴェイユは私が大好きな人。

父と語っていたあの頃、
父はヴェイユを読んだことがなく、私はパスカルを読んだことがなかった。
でも、深夜遅くまで、時間を忘れて語り合った。
なぜ、ここまで言いたいことがスッとお互いにしみ込むのだろう、と不思議に思いながら。
この本を読みながら、またひとつ懐かしい感覚がよみがえった。

父はむかし事業に失敗して、どん底の時期を経た。
一人では返せない額の借金を背負って、本当に一人では返せなくて、周囲のお世話になった。

その前の一時期、仕事では成功していたし、プライドも高かったのに、
よくそんな時期を耐えたと思う。
そして、その時期を越えたあとの父は、イケイケだったころの父よりも
ずっと何倍もかっこよかった。

そして、ある日突然亡くなった父の部屋を掃除していたら、
たった一冊の古い本が出て来た。タイトルは『パスカル』。
母と離婚したあと、借金を背負い、過去のほとんどを失った父が手元にのこしていた本。

『パンセ』を読んだら、そして私の気持ちの準備ができたら、この本をひもとこう。