珠洲にすむ漁師の友だちから届いた荷物。
あけてみると、カニさんがいた。
能登半島の突端から湘南まで、遥々ようこそ、ようこそ。
冬の日本海は毎日がシケのようで、なかなか漁にでられない。
1ヶ月で布団を干せる日は1日か2日だった記憶がある。
沖にでられても、
山のような波に恐ろしい思いをしながら漁をすることも少なくない。
だから、冬の珠洲からとどく海の幸は、ことさら貴重だ。
しかも満月がすぎたばかり、カニの肉が充実するタイミング。
友だちは「忙しそうやね、元気にしとるけ?」とさり気なく送ってくれる
けれど、その行為の背景や状況をさっするほどに胸があつくなる。
まずは、いのちを捧げてくれるカニさんを拝顔。
しげしげ眺めると、ちょっと憂いを帯びた顔?
…無理もない。
カニさんに敬意を払うべく、近くの酒屋さんに電話して
「手ごろでおいしく、できればこの季節ならではの日本酒」を注文。
やってきたのは、
山形県酒田市の「三十六人衆」の生詰だった。
「蒸して食べてもおいしいよ」との送り主の言葉にしたがい
今回、はじめてカニを蒸してみた。蒸し時間は約15分。
蒸しあがったカニさんの顔は、怒ってるみたいにも見える。
…さもありなん。だけどやっぱり、ちょっと怖い。
「毛蟹はミソがおいしいから、熱いうちにミソを食べるといいよ」
といわれていたので、とにかく甲羅をあけ、まずはミソ。
…涙がでるほど、日本酒とあう。
滋養がしみこんで、身体中の細胞に力がみなぎるようだ。
カニの殻は水と一緒に鍋にいれて、ストーブにかけておく。
出汁をとって、明日はカニ雑炊にしよう。
殻は、さいごには土に埋める。いい肥料になるから。
埋めるのは、珠洲で種をもらってきて植えたオダマキの近くにしよう。
この春は花がきれいに咲くかな、などと思うのも楽しい。
海の恵みはかくも味わい深く、ありがたい。
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