ドバイからナイロビ行きの飛行機にのったのは午前10時ころ。
機内でブランチをたべ、すこし眠り、
燦々と陽がさすナイロビについたのは午後2時か3時だったか。
機内でまさかの体調不良をかんじ、
鞄にしまいこんでいたダウンベストをひっぱりだしてカイロまでしたのに、
ナイロビについた途端、両方とも邪魔になった。
暑いのだ。もちろんダウンはすぐ脱いだが、
タートルネックシャツの首まわりが快適でない。
なんでこんなものを着てきたのかと、自分が馬鹿に思えてくる。
空港内にエアコンはきいていない。
確かに、暑いとはいえムワッとおそってくるような湿気はなく、
エアコンをかけるほどの不快さでもない。
もっとも、日本の空港ならエアコンをかけているレベルだとは思う。
そんななか、ビザ申請のために同じような書類を2種類かかされ、
ボトボト文句をいっている人も。
わたしはといえば、書類を2枚も書かされることなど
どうでもよく思えてくるような事態にあっていた。
ビザの料金が、日本で聞いてきたのと全然ちがうのだ。
出発前、
「ビザは現地調達することになるから、そのための100ドルの現金は
ぜったいに持っていくように」といわれていた。
成田では、チェックインカウンターで「ビザは現地調達する」と
わたしが言うと、カウンターの親切なお姉さんがわざわざ調べて
「ビザは500ドルですよ」とおしえてくれた。
なんだかずいぶん高いなと思い、
米ドルで500なのかと確認してもらうと、そうだという。
ビザ料金が足りなくて入国できないことになったら
シャレにもならないので、あわてて追加で2万円を米ドルに両替した。
ところが、
ナイロビ空港のビザカウンターに書いてあったのは「US$25」。
…なにかの間違いじゃないか?
ビザカウンターのゴツイおっさんに、わたしは思わず2回も料金を尋ねた。
何度きいても、ビザ料金は25ドル。
いや、もちろん嬉しいけれど。思っていたより475ドルも安いなんて。
でも、いったいなんだったんだ???
不思議な気分のまま到着ゲートへいくと、現地在住25年のNさんが、
なじみのタクシー運転手のFさんの車で迎えにきてくれていた。
空港の外は、はるか遠方にかすかに見える山の麓まで、草原がずっと広がる。
そのなかを、1本の舗装された自動車道路がはしる。
舗装されているのは道路のみ。
歩道も路肩もガードレールも整備されていない。
そんな光景を目のあたりにし、あらためて
日本でコンクリートの構造物に囲まれて生きている自分に気づく。
ただ思い返してみれば、
アメリカの荒野にのびるインターステートハイウェイだって
そんなもんだった、と言うこともできそうな気もする。
なのに、ケニアでいま目の前に広がる風景は、
何かが決定的に違う印象をうける。―でも、何が?
人の姿があるかないか、じゃないか。
舗装された道路のうえを走る車と同じくらいの、
いや、もしかしたらそれ以上にたくさんの数の人が、
道路わきの草や土のうえを歩いている、うろついている。
街がちかくなると、道路わきの樹のしたで寝そべる人さえいる。
そういう光景を、これまで、わたしは見たことがなかった。
見たことがなく、想像したこともなく、発想の枠外だった。
ちっぽけなわたしの「常識」を揺さぶるのは楽しい。
ここでは、空も雲も、わたしの目には桁違いにみえる。
「空」でありながら「空」でなく、「雲」でありながら「雲」に留まらない。
世界がじつに広くて、こんなにも多様だと知ることは、わたしを自由にする。
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