海がおおいに時化(しけ)た日、祝島小学校で餅つきがあった。
(下の写真は小学校の石垣と階段)
これは32年前にはじまった行事だという。
「杵で搗(つ)いた餅を食べてみたい」
当時小学生だったある子どもがつぶやいた言葉がきっかけ。
それを聞きとめた大人が
「食べさせてあげたいね」と話しあい、
世代間交流という時代の流行にも背中をおされ、
学校の体育館を会場にしてはじまった、島の年始の楽しみのひとつのようだ。
生徒の数が4人になったいまは学校の廊下に場所をかえ
3学期がはじまった翌日におこなわれた。
職員室のまえの廊下においた蒸籠(せいろ)で
祝島そだちの糯米(もちごめ)を蒸す。
ちかくで臼(うす)が待つ。
その脇に、杵(きね)と、大きな木しゃもじ、それに
搗いた餅を臼からとるための棕櫚の葉でつくった道具が控える。
手前の杵ふたつは子供用のミニサイズ、「祝島小」と名入りのものも。
糯米が蒸しあがると臼へはこびいれ、
まずは大人がこねていく。
それがおわると
杵をもった4人程で臼をかこみ、順番に振りおろす。
4人で次々に餅を搗いていくため、リズムが大切みたい。
「よいしょ! よいしょ!」と、まわりの掛け声も。
餅が搗けると
大きな木しゃもじと棕櫚の葉の道具で餅を臼から剥がして、
すぐ横の部屋においた打粉をふった紙の上にはこぶ。
搗きたての餅はそこで棒状にのばされてから
丸餅に成形するのにちょうどいい分量に千切られていく。
…見事としかいいようがない。
千切られた餅は、掌のつけ根ちかくをつかって圧しまるめ、
打粉をまぶして、脇にひろげた紙のうえに並べる。
餡子をいれて丸めた餅は餡の色がうっすら透けてみえ、
そうでない餅は雪のように真っ白で、
いずれも美しい。ずらりとならぶ様は、まこと壮観。
もちろん、できたてを味見する楽しみもついてくる。
杵4本の連係となる祝島の餅つきで、水は初めに一度つかうのみ。
そのせいか、腰が強くみっちり濃い味わいだ。
ストーブで焼いた「搗きたて餡餅」は、このとおり
姿よし、もちろん味もよし。
老若男女がつどって支えつつ楽しむ年始の餅つき、
幾重にも満喫させていただいた。
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