食材は尽きたし、もはや今日は料理もしたくない。
ついでにいえば、外食も出前も気分じゃない。
でも、疲れたときこそ美味しいご飯で元気だしたい。
さて、どうする?
…とっておきのフランス土産のワインとチーズは、
きっと、こういうときのためのもの。
思いきって、あけてみよう。
パンとソーセージは、
ワインとチーズが泣かないように買いにはしった品。
なぜだか今日はパンが2割引という幸運も。
ひさびさのフレンチワイン。
とくに高価な品でなくても、やっぱり美味しい。
日本で買うフレンチワインと、どうしてこんなに違うんだろう。
このワインは「ついで」のお土産だとかで、
シャルル=ド=ゴール空港で10ユーロの品らしい。
市内の店で買えば、きっと5~7ユーロくらいかな?
*** *** ***
妹のフランス留学時代、3週間ほどわたしもパリに滞在した。
がむしゃらに翻訳をしていた時期で今よりリッチだったので、
本場のいいワインを堪能しようと意気込んでのパリ入り。
なのに、ついて早々に妹からきいた話が出鼻をくじく。
いわく、
「いいワインはみんな日本が買い占めていくから
フランス人の口に入らない、と友達にいわれて以来、
なんとなくワインを買いづらい…」。
え、そうなの?
フランスの庶民がいつもの美味しいワインを飲めないほど
日本が買い占めていっているの???
当時の日本は、デフレスパイラルから抜けだして
経済がうわむきはじめていた頃。ありえないことではない。
真偽の程は確かめることができなかったけれど
どうも気がそがれてしまったことは確か。
けっきょく、その滞在中、気の小さなわたしは
最安値価格帯のワインしか買えなかった…。
妹のアパートの近所の小間物屋さんで1本300円~500円。
距離をいとわずスーパーまで買いにいけばもっと安い。
毎日かえり道にそれを1-2本かって、アパートで飲んだ。
ちなみにこの「小間物屋さん」というのは
庶民にとって日本のコンビニっぽい位置づけだと思う。
ただし企業資本でなく、フツーの商店であるところがミソ。
予想外だったのは、
この価格帯のワインでもけっこう美味しく楽しめたこと
(酸化防止剤の有無が影響、というのがわたしの仮説)。
チーズは日本の比でない手ごろ感で、いうまでもなく美味しい。
毎朝、近くのマルシェ(市場)で新鮮な野菜もやすく手にはいったし、
パリは都市とはいえ、生きる基本がガッシリしてる印象をうけた。
リュクサンブール公園の近くで家賃6万円だったそのアパートを
妹の帰国後も共同でキープしようかと親きょうだいで話したほど、
わたしたちにとってパリの食事情は極楽だった。
もっとも、能天気ファミリーであることは否めないけれど…。
ちなみに、
妹のアパートの家賃が立地の割に安かったのは屋根裏部屋だったから。
ほんの一階おりればしゃれたアパルトマンの風情なのに、
最上階は、かつて女中部屋だったろう面影を色濃くのこす。
奨学金をもらって研究中の学生だったからまだいいけれど、
そうでなかったら(否、そうであっても尚?)
階級社会をしみじみ実感させる落差を体現してもいた。
あれから約10年。
パリで、「生きる基本」はいまもガッシリしてるだろうか。
ワインやチーズや野菜、そしてパリの暮らしは…?
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