ある日、豆腐を買いにいくと、
祝島の石豆腐のとなりに、はじめてみる品があった。
扇をかたどったご飯の上に鯛などが載っている。
きけば、祝島の押し寿司だという。
いつもある品でなく、時どきしか店に出ないとか。
せっかくなので1個かいもとめた。
口に運ぶと、シイタケやら蒲鉾やらを混ぜこんだ寿司飯はなんとも食べよい。
昔はもっと酢がきいていたうえに、1個に米1合といまよりサイズも大きく、
「子どものころは食べきれんかった」という声もきく。
法事などの際につくるものというから季節を問わない品だろうが、
なんとはなしに春を感じる。
ひろがる青空のもと、練塀(ねりへい)の漆喰の白さ際立つ、
いわいしまの春日和。