このたびのフィンランドでわたしが滞在したのは
北極圏地方・ラップランドの小さな町にある友だちの家。
はじめて来た冬には一面の銀世界だったのが、
夏には、見わたすかぎりつづく緑へと一変していた。
この緑と、360度ビューの空、それを映しだす海。毎日眺めてくらした。
この、海と空と大地が近い地域に、いま原発計画が浮上している。
フィンランド・ドイツ・スウェーデンの電力コンソーシアムである
フェノボイマ(Fennovoima)の原発予定地として立候補すべきと、
ケミ市議会で提案があったのが2007年。
けっきょく却下されたけど、人口がさらに少ない隣りのシモ市に移っただけ。
シモ市とケミ市の境が予定地候補となった。
フィンランドには現在4基の原発があり、1基が建設中だとか。
新たな原発建設にフィンランド人の大半が反対(*1)ときくけれど、
今年4月、政府は原発2基の建設を認可した。
5月には
原発の増設に反対する数千人が首都ヘルシンキでデモをしているが(*2)、
7月、議会は新規原発建設について政府が提出した法案を採択。
この議会の承認によって、
フィンランド産業電力(TVO)が南西部のオルキルオトに1基、
フェノボイマが西部のシモまたはピュハヨキに1基、
あらたな原発を建設することになった。フェノボイマ社は2011年に、
候補地をシモかピョハヨキのどちらかにしぼるという。
政府は原発新設の大義を、
「二酸化炭素の削減とエネルギー自給率の上昇をめざす
フィンランドの環境政策」にのっとる、という点にもとめるようす(*3)。
ただ、環境政策というよりは経済政策の面が強そうだ。
新たに2基の原発が完成すれば
国内の発電量が需要を上回ることは政府資料で明らからしいうえに、
雇用経済省のアルト・レピストArto Lepistö氏もこれを認め、
「フィンランドは2020年までに電力輸出国になるだろう」と
話したと報道されているから(*4)。
でも、
輸出用電力のための原発建設はしないというのがフィンランド議会の立場。
電力会社もその立場に添っているから(*4)その点が問題化されつつあるよう。
輸出用に原発をつくって発電するとなれば、
いのちよりカネを重視する姿勢があまりにもあからさまになるから
それを認める立場はさすがに取りづらい、ということなのだろうか?
その場所として同国ではじめて
北部のラップランドが候補に挙がっているというのも、
わたしにはなんだか気にかかる。
「ラップランド」は辺境の地をさす呼び名。
その地には先住民・サーミが多く暮らすが
人口は激減しており、今後もへりつづける見通しという。
自分がつかう電気のためのリスクを(国内の)他者におしつけたい日本と、
自分が使う電気のためのリスクはみずから引きうけるものの
他者である外国に売(って儲け)る電気のためのリスクを
(国内の)他者におしつけたいフィンランド、ということなのだろうか。
あるいは、また別の動機や要因が?
わからないことや、ひっかかることが多くて、
いま、『裏日本』(古厩忠夫、1997)を読みなおしている。
いったいどんな世界に、わたしは生きているんだ?
*1
http://www.yle.fi/uutiset/news/2010/03/finns_remain_opposed_to_additional_nuclear_power_reactors_1567349.html
*2
http://www.yle.fi/uutiset/news/2010/05/thousands_make_statement_against_more_nuclear_power_1667211.html
*3
http://www.finland.or.jp/Public/default.aspx?contentid=196398&nodeid=41206&culture=ja-JP
*4
http://www.yle.fi/uutiset/news/2010/05/finland_could_be_exporting_electricity_by_2020_1689927.html
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