気がつくと先月は連日のように船にのっていた。
1か月の乗船日数は3週間くらい、
1日の乗船時間は一番長かった日で15時間くらい。
どうやら船や海と相性が悪くないみたいで、さいわい苦にならない。
祝島の漁師のひとりに「体力あるねえ」と言っていただき、
わが人生で初めてきいた言葉に内心小躍りした。
とはいえ最後の1週間は相当ハードだったので
じつは全身筋肉痛になり、一部はまだ痛いのだけど。
ともあれ、そんな船三昧の日々の楽しみは、やはり船だった。
ちかくの小屋で船大工さんが
伝馬船の十分の一模型をつくっておられたので、
しばしば帰りに顔をだして船造りの経緯を見学させていただいた。
これが、完成した模型。
船の右下にでているのが、櫓(ろ)。
その長さは船の長さとほぼ同じという。
水のなかでそんな長いものを動かすのって、
力が要りそうで大変でしょうね? とたずねると、
大工さんも漁師さんもキョトンとして
「梃(てこ)の原理を使うんだから、どうもない(大変ではない)」。
……なるほど。
ついでに船の釘もみせていただく。
上の模型は小さすぎて釘が使えないので
糊をつかっておられたけれど、
船用の糊があるとはいえ
糊づけだけで船をつくっては海上の使用に耐えない(らしい)。
海上使用に耐える釘はどんなものかというと、
下の写真のように形状に特徴があるだけでなく、
鉄に亜鉛をかけるというから素材にも特徴がある。
船好きが伝わったのか、船大工さんは
他にもいろんな船の模型をみせてくださった。
これは、彼みずからの手による千石船(せんごくぶね)の模型。
大人の男性が一人でやっと持てるか持てないか、くらいの大きさ。
これには釘もつかってある。
帆も彼のお手製だという。錨(いかり)や戸など、
細部までしっかり作られていて、丁寧な仕事に惚れ惚れする。
船底の曲線に至っては、機能性と芸術美の融合をみる思い。
このあたりでは、かつてこうした船でみかんを運んだという。
これは大型のトロール船(だったと思う)の模型。
屋根をあけて船の中を覗いてみるのも楽しい。
しばし船を満喫してから、おやつ。
脇のストーブで焼いた貝やサヨリ、
茹でた「亀の手」。祝島では「セイ」と呼ぶらしい。
爪のような部分と腕のような部分の境あたりで折ると
薄い桜貝色の身がみえる。
酒のあてとしても、かなりご機嫌な感じ。
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