昨年の暮れから
いろいろな事情により、
私達の暮らす海野宿へ、
一人暮らしをしていた私の祖母を
北海道の実家から呼び寄せ
一緒に暮らし始めました
89歳の祖母!
つい半年前までは現役で家業を経営し、
スコティッシュダンスやバレーボールなどの
地元サークルに通っていた程、活発な祖母で、
私は、このような生き生きとした
生き方をしている祖母が
大好きで、尊敬もしてましたし、
自慢の祖母でした。
そんな祖母が昨年の秋に、
ちょっとしたことで
足の小指を骨折
1ヶ月半の入院を余儀なくされ、
それまでとても元気だった祖母の体が
信じられないほど激変してしまいました。
祖母自身、
あまりの自分の体の変化に
「どうしよう、どうしよう、
どうなっちゃったの私」
と
落ち込む日々。
骨折、入院による
足腰の筋力の低下が
恐ろしく祖母の身体能力を
低下させてしまっていたのです。
祖母が北海道の病院から退院して
10日もしないうちに、
信州へ来てもらい、
(海を渡ってここまで来ることだけでも、
かなりすごいこと。)
一緒に暮らし初めて
まだ1ヶ月余りしか経っていないのですが、
その間で、なんと
転倒を4回もしてしまった祖母。
骨折して退院した直後だから
仕方の無いことのように思われるかもしれません。
この転倒について
たった1ヶ月ではありますが、
同居してみて気が付いたことを
今日は記したいと思います。
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実は、祖母を迎えるにあたって
祖母が安全に暮らせるようにと、
玄関の段差部分に手すりを設置し、
トイレにも手すりを設置しました。
お風呂はユニットバスですので
ある程度のバリアフリー仕様になっており
浴室内には3か所の手すりが有り、
浴室の出入口には
段差が殆どありません。
そして、室内は、
古い昭和の家でありますけれども
リフォームをしてありますので
各部屋境の段差は、
敷居の不陸や、床材の納め上の都合で
3~6㎜程の敷居の段差はありますが、
目立つ段差は玄関以外、ほとんど無い状況です。
更に、室内の温熱環境としては、
リフォームする際に
全館床暖房にしましたので、
各部屋の温度差はあまりありません。
寒冷地という過酷な環境であっても、
そして、非断熱住宅だった昭和の家であっても
私達の家は、
自ら設計をしていることもありまして、
なんとか少ない予算の中で
比較的快適な住環境を実現して
暮らしております。
(まだ、改善するべきところと、未完成なところも
多々ありますけれども。。。)
過去の記事↓
このような、
比較的快適で、バリアフリーな環境で
祖母を引き受けたものの、
いざ、一緒に暮らしを始めてみて
分かったことではあるのですが、
実際、89歳の人間の体というものが、
どういうものなのか
を見ずして、
マニュアル的な発想のバリアフリーを
施しても、
多少の改善にはなるかもしれませんが、
本質的ではないな
と
改めて実感しています。
89歳の時に、体がどういう状況になるかなど、
これは、60~70代の我々親世代にもわかりません。
ましては、40代の私達にもわかりません。
そして、肝心の当人ですら、自分の体が
どうなっていくのか、わからないのです。
90歳目前の祖母にとっては
周りは皆、年下ばかりですし、
親戚を見渡してみても、
祖母より長生きしている方を探すのが難しい
そういう歳なのです。
高齢は未知の世界。
80、90歳代方の面倒を見てきた家族や
介護の現場を経験している人達になら
この先のことを想像することもできると思うのですが、
あいにく、
祖母自身も、私の両親も、旦那の両親も、
先代の面倒をみる という機会も経験もなく
これから訪れる老後 のことが
わからないし、想像しきれません。
福祉住環境コーディネーターの2級の資格を
私は持っていますが、
その試験勉強をして、
「なんとなく」ではありますが、
介護のことは
設計で考えているようなバリアフリーとは
ちょっと違うと、
感じたことがありました。
ですので、住宅の設計をする際、
時折、若いお施主さんの中には
将来、親の介護をするかもしれない、と
漠然とした希望を出されるのですが、
敢えて、
将来の介護などの配慮をせず、
そういう事態になっても
改修できるような「余地」を残すぐらいに留めた
設計を心掛けています。
さて、話戻りますが、
私の89歳の祖母の4回の転倒を観察してわかったこと。
転倒したタイミングと時期は
どれも、就寝時前後であったことです。
① 眠くなってベッドへ入ろうとした時、
上手く体をベッドへ滑り込ませることが出来ず
体勢を崩し、その際、さっと手で受け身をとれず転倒し
頭を襖に強打。
② 就寝後、おトイレに行きたくなって、
ベッドから出た際、
バランスを崩して転倒。
これが2回ありました。
③朝、目覚めにトイレへ行こうとして、
体のバランスを崩し、
その際に手に触れた家具が、
たまたま回転椅子だったため、
椅子が回転して祖母の体が一層バランスを崩して、
転倒。
こういう状況だったのです。
私が、祖母が転倒したーーー
と大騒ぎすると、
うちの旦那は、すぐさま、
なにかに、つまずいたのか?
滑ったのか?
と聞きます。
私も、最初は、つまずいたり
滑ったのかと思いました。
何故か、バリアフリーの設計を考える時、
必ず、「段差」のことをいわれるので、
つまずく=段差 と思い込みがちになります。
もしくは、
床が滑り易くて とか、
或いは、
適切な所に「手すり」相当するものが、ある、ない
によって、体が保持される、されない
そんな風に、教わっている(?)
と言いますか、
(そのような解説が多いからなのですが)
故に、転倒する、という思考をしてしまうのです。
もちろん、
「認識」できないような段差は、当然、危ない。
そこは、バリアフリー以前の問題として
注意しなければなりません。
実際、祖母を見ていると
段差をきちんと「認識」できるうちは、
つまずかないようなのです。
骨折後の祖母の足は、
段差を超えるのも困難な状況でありながら、
つまずいていないのです。
ちゃんと気を付けながら
段差を越えているのでした。
むしろ、
私の方がおっちょこちょいで
コードに足を引っかけたりしています。
この違いは何か。
祖母は、高齢のため身体能力的に
筋力的にも行動が「ゆっくり」なので、
(素早く動くことが出来ない)
ひっかかって、すっ飛ぶ、すっ転ぶ
ことに至ってないのです。
逆に、若い私は、
急いで物事をやるので、
引っかかるとすっ飛ぶわけです。
でも、バランスを戻せるので、転ばない。
つまりは、
認識しにくい段差が危ない のであって、
すぐさま、
段差がいけない、
段差があると、高齢者には良くない
というわけではない。
もちろん、それぞれの状況によって違うと
思います。
(しかし、車いすが必要な方にとっては
段差は非常に大きな障害になります。)
今回の4回の転倒は、全て、
段差につまづいたわけでもなく、
手すりの問題でもありませんでした。
就寝時とトイレ、
その関係が一番の問題だったのです。
祖母からは、
トイレが近くなって困っている
と相談を受け、
すぐさま、まずは病院へ行き、
調べてもらいました。
診察では、寒さから来るものだろうとのこと
でした。
床暖房完備の我が家ではあっても
北海道の家のようにストーブで
がっちり暖めていた部屋とは
やはり違います。
(実家は決して高気密高断熱住宅では
ありませんでしたが、暖房の考え方が
内地とは違います)
そこでまずは、補助暖房器具を一つ購入して、
トイレに行きたくなるだろうと思われる朝方に
暖房を入れるようにしてみたり、
病院では、
泌尿関係に異常はなかったのですけれども、
トイレが遠のくようなお薬を処方してもらったりして
とにかく
就寝後のトイレの回数を減らすことが
転倒の一番の予防だと
今のところ考えております。
(ひどい時は、就寝時に7回も8回も
トイレに行っていたようで、
その時に、ベッドの周辺で転倒をしていたのです)
ちょうど、そんな時、
25日に放送された
たけしのみんなの家庭の医学
「病を招く!冬の家の危険な場所 徹底解明スペシャル」
が とても興味深かったです。
室温などの温度差によって、
トイレや脱衣室、お風呂場などで
ヒートショックを起こすということは
分かっているつもりでしたが、
TVでは、
【布団の中の温度】と【室温】の温度差に
着目していまして、
はっ としました。
我が家は、床暖房があるし、
24時間暖房をしているので
一日を通して、
室内の温度差がある程度解消されて
よし よし
なーんて考えていましたが
甘かった
【布団の中の温度】と【室温】の温度差
まで考えが及んでいませんでした。
実は旦那さんの実家では
全く、TVで再現されていたものと似た状況で
義母が倒れたばかり。
(とりあえず、無事でした)
とにかく、
就寝時のトイレや
朝 起床後の行動が、
一番、温度差を感じ
危険な状態になるということでした。
各部屋の室温の温度差だけではなかったのです!
よく考えればその通り。。。
家の設計をする際、
できるだけ、寝室とトイレは近い位置になるよう
設計するようにしていましたが、
これはやっぱり必須だなと
つくづく思いました。
あとは、住環境として温度差をどれだけ
つくらないようにすることが可能なのか、
そして、
夜のトイレの回数を減らす方法は・・・
と思考は続いています。
今日は、長々と書いてしまいました。
祖母との暮らしに
私の想像を超えることがあまりに
多かったため、
書かずにおられませんでした。
親世代を飛び越えて
今、祖母をみつめ
考え続けています。