週刊 最乗寺だより

小田原のほうではなく、横浜市都筑区にある浄土真宗本願寺派のお寺です。

勝田山 最乗寺
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相応しい薬

2010-12-29 00:48:50 | 仏教小話

…胃が痛い。

朝食を食べると、だんだんと胃が痛くなってくる。
そろそろ我慢の限界になってきたので、仕方なく徒歩3分の林医院へ。

ここは先日、熱性痙攣を起こした龍くんを抱えて飛び込んだ病院でもあり、その風邪をもらった私がお世話になったとこでもある。

さて、私は病院で処方してもらった薬を飲めば治るというほど、単純な体質ではない。
抗生物質に弱い私の身体は、飲むと免疫力が低下してしまい、違う病気に感染する可能性が高くなる。
今まで、そういう経過を辿った結果、医療費が風邪の何倍にもなってしまったことは数知れず…。

というわけで、風邪をひくと必ずと言っていいほど処方される抗生物質を拒否する代わりに、膨大な種類の薬を渡されるのだが…こんなに飲んだら、返って身体に悪いんじゃないかと逆に心配にもなってくる。

だが、それは抗生物質が飲めない私のために、私に合わせて処方された薬。

なんとなく、【応病与薬】という言葉を思い出した。

お釈迦さまは自身の悟りを、体系付けた理論として語られたりはしなかった。
必ず相手の質問を受けて、その質問の内容や相手の理解の程度に応じて、答えていったという。

相手の苦悩に応じて、もっとも相応しい教えを説く。
苦悩という【病】と、教えという【薬】

同じ風邪でも、一人一人の症状は違うもの。
年齢や性別、体質などによって、同じ薬では思うような効能が期待できないときもある。
トータルで鑑みて、一番効果が期待できる薬を処方する…それが【応病与薬】。

そして、お釈迦さまの教えも【応病与薬】と言われるように、相手の人柄や性格によって、一人一人に合わせた言葉で説かれていた。

お釈迦さまは、多くの人との関わりの中に生きられた人。
その教えの数は、あまりに膨大であることから、無数を意味する「八万四千」とも喩えられていて、経典や宗派が多数あるのもまた、そのところに寄っている。

ちなみに以前、「仏教の経典を簡単にまとめるとどうなるのか?」という質問に対して。

「それは『頭痛薬と下痢止めと水虫の薬をまとめるとどうなるのか?』と聞いているようなものです」と答えた人がいた。

仏教の最大の特色は、信仰を強制したり、信じなければ罰が下るような取り引きや、仏と人との間に脅しのような契約的なものがないということ。
八万四千もの法門の中から、自分を省みた上で、自分が頷けるみ教えを、自分で選び取るということが、連綿と受け継がれてきた歴史の中で行われてきた。
そこには、我々が選び取る以前から、常に差し向けられている救いがある。

だからこそ、自分に合った薬が頭痛薬なのか、下痢止めなのか、水虫の薬なのかを知ることが重要だと思ったけど…。
ふと、例えにある薬をまとめたような、画期的で素晴らしい教えもあるんじゃなかなと、浄土真宗のみ教えに生きる者として考えたりした。

さて、林医院で採血などをして、年明けの結果を待つまでの間に飲む薬を処方される。
今回は細菌が原因ではないため、抗生物質はなし…とりあえずは一安心。