Sakita Blog

1級建築士事務所Sakita Space Design主宰
崎田由紀のブログ。

戦前スパイ小説

2009-10-14 11:54:22 | 本と雑誌
ジョーカー・ゲーム ジョーカー・ゲーム
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2008-08-29

510先生のブログで「結城中尉かっこいい!」と絶賛されていたので図書館にリクエスト、数ヶ月してようやく届きました。
最初、戦前帝国主義の陸軍の話?と思い、拒絶モード全開で読みはじめたのですが、D機関とよばれるスパイ養成機関は、この時代に天皇もモノともせずに、自分だけを信じるタフな男たちの集まる特殊な組織ということがわかり、、、面白かったデス。
それぞれ主人公(D機関の生徒たち)の異なる短編が集まってできた本で、このD機関の創設者であり指導者であるのが結城中尉。全ての話に共通して登場するのはこの結城中尉だけです。
全編に共通して繰り返し語られるのは「スパイは殺したり死んだりしてはならない。それは最悪の事態」ということ。死んでお国に仕えましょうという時代に真っ向から対立する思想。
そして最後の話で「なぜ女のスパイがいないのか?女は不必要に殺すからだ。憎しみとか愛とか執着とか」そして、それらを取るに足らないものとして切り捨てることができるもののみがスパイとなれるのだと。。。
最近の事件を見てると、最近では男の方が取るに足らないことで人を殺しているような気もいたしますが、まあ、ここでいう「男」っていうのは、とても特殊な強烈な自負心を持った人々のことだけを刺すようなので、あんまり目くじら立てるのはやめときましょう。
読後子どもに「スパイって知ってる?」「あたりめえよ。MIやスパイキッズ。。。」と映画の話。「スパイは死んだり殺したりしちゃいけないんだって」「なるほど」「忍者って戦国時代のスパイって感じだよね?」「でも忍者は人を殺すよ?」
うーむ、、、なるほど。微妙に違うのね。でも和田竜描く忍者が、時代の暗黙の規律とする上下関係や忠義などを超越した、自分だけを頼みに生きている男たちと、なんとなく共通する臭いを感じたんだけどなあ。。。