歌庭 -utaniwa-

“ハナウタのように:ささやかで、もっと身近な・気楽な庭を。” ~『野口造園』の、徒然日記。

明鏡止水

2009年08月25日 | 遊興 -pleasure-
明鏡止水(めいきょうしすい)。好きな言葉です。

曇りのない鏡と静かな水。そのように、なんのわだかまりもなく、澄みきって静かな心の状態 の意。


* * *

土曜日。茶道のお稽古でした。



お客役をやっているときでした。

何かのタイミングで、先生の声も 生徒の声も ふっと途絶えて
しーんと、静まり返った瞬間。

お湯の立つ 小さな「くつくつ...」という音以外には
しー   ん と静まり返った 静かな部屋の中。


それまで曇っていたところに 突然 憶い出したかのように

昼下がりの 陽が射して来て


障子の上に、外の庭の木の 影が すうっと浮かび上がり

さわさわ。。と 揺れたのでした。


すると

茶室の、実際はまったく「無音」なわけではない、けれど 確かに在る

或る「静けさ」が

さらに深まった気がして


自分の心も 同時に
ぴた っと静まり返り

すん. と、 心の背筋が まっすぐのびた気が、したのでした。


茶室という空間の 空気の静けさに 自分も融け入って同化したような感覚。

わずかな一瞬だけれど
それがとても、心地好かった瞬間。


そして
その瞬間より以前においては、まだ「つもり」だったことを 知ったのでした。


つまり
茶室の雰囲気に とりあえずひたって、自分の心もすんなり同調した「つもり」になり、
あたかも
自分の心も 清らかに・静やかに・しゃんと真っ直ぐしたものに切り替わっていた
と 思って居たけれど、

実際は、その時点では まだ「つもり」で、

本当の意味で 静かな厳かな気持ちに ストンと 落ち着いては居なかった。
と、
思い知ったのでした。







床の花:

 シュウカイドウ(秋海棠)
  Begonia evansiana  宿根草
  シュウカイドウ科シュウカイドウ(ベゴニア)属
  英名:hardy begonia
  別名:ヨウラクソウ(瓔珞草)


 タムラソウ
  Serratula coronata subsp. insularis
  キク科タムラソウ属  多年草
   ※オオアザミ」(大薊/マリアアザミ:Silybum marianum, キク科オオアザミ属)かと思った。
   そしたら、似て非なる。トゲが無いのが、見分けるポイントだそう。
   また、
   「アキノタムラソウ」(秋の田村草:Salvia japonica, シソ科アキギリ属)ともまた、ちがうものでした。


ヤバネススキ(矢羽根薄)
  Miscanthus sinensis 'Zebrinus'
  イネ科ススキ属
  別名:タカノハススキ(鷹ノ羽薄)/英名:Zebra grass
  葉に矢羽根のような斑が入ってるから。





玄関には、ユリとキク。白い花。

その日の主菓子(おもがし)は、山のユリを抽象的に見立てた
「嶺の百合(みねのゆり)」という、
白くて丸いところに緑の笹状の葉っぱを模したラインが入った、お菓子でした。





すん. と落ち着いたこの心持ちは 俗世間、、というか、外の雑踏に出れば
あえなくたちまち消えてしまう、
あっけない 儚いものなのだけど、

ちょっとでも長く保っておきたいと
努めて静かに
なるべく大事大事に 内に抱えるようにして


されど 帰るべき場所は、やはり俗世間。俗世間の、街の、渦の中。


街へ帰るのです。




新宿の街で、

紫の夕焼けを見ました。



ムラサキの空。好きな空です。


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