聖徳太子の本 学研
なんといっても歴史上の巨人なので出版物にはこと書かないし、読んだ本もかなり多いはずなのですが、飽きることなく目頭が熱くなってしまいます。理想主義の人は同時に悲劇の人という歴史の残酷さをもっとも端的に証明した人生なのかもしれません。
作家の堺屋太一さんの歴史評論に「聖徳太子は人類史上、真実は常に二つある(神道と仏教の双方を敬うということで)という宗教観を確立した唯一の巨人である」という内容の言葉があって、今でも強烈に心に残っています。キリスト教にも造詣が深かったのではという伝説もあり、そういう意味では複数の宗教を平行に鳥瞰図のように見ることができるという同時の歴史観の中では信じられないくらいに進歩的な人だったのかもしれません。
もっとも、同時に、「聖徳太子は存在しなかった」という伝説も多くあり、あの有名な旧一万円札の太子像も、現代では信憑性はまったくないといいます。歴史的な偉業も蘇我馬子の業績がただしいのではともいわれ、太子像はますます霧の中にかすんでいってますが、そのこと自体が太子の悲劇のようにも感じられてしまいます。