春風駘蕩

いつの時代でもこうありたい

小田島雄志さんの講演

2005年02月14日 | 日記
経済団体が主催する昼食会で小田島雄志・東大名誉教授の「シェイクスピアの人間学」の講演を聴いた。
小田島さんならではの当意即妙な語り口と、人間に対する深い洞察に約200名の聴衆が魅了された。

小田島さんは、シェイクスピアの作品に登場する人物の台詞を通して人間のありよう、生きざまを説明する。
「どんな荒れ狂う嵐の日にも時はたつのだ」(マクベス)、「人はほほえみ、ほほえみ、しかも悪党たりうる」
(ハムレット)、「宴会へは真先かけて、戦場へはいちばんあとから行く」(ヘンリー四世)、「目はおのれを
見ることができぬ。なにかほかのものに映してはじめて見えるのだ」(ジュリアス・シーザー)などなど。

シェイクスピア研究の第一人者が私たちに伝える言葉は、「一歩下がってものを見る」ということ。例えば、
狭い道で車を運転していると歩いている人が邪魔になるが、逆に歩いている人にとっては車が邪魔になる。
双方が我を張っていたら人も車も動かない。そこで「一歩下がってものを見る」と事柄がよく見えてくる。
これが人間にとって最も大切なことだという。理屈では分かっていても、いざとなるとなかなか実行できない。

小田島さんは昭和5年生まれの74歳。東大大学院修士課程修了後、国学院、津田塾、東大の専任講師を経て
東大教養学部教授。現在、東大名誉教授、東京芸術劇場館長などを務めている。

『シェイクスピア全集』で芸術選奨文部大臣賞受賞、演劇の翻訳と評論により紫綬褒章受章、平成14年には
文化功労者に選ばれた。シェイクスピア研究ではこの人の前にも後にも勝る人はいないといわれている。
このような人の謦咳に接する機会を得たことに感謝。