2月のとある日、私は新大阪駅前にひとり立っていました。
これから広島へ向かいます。
新大阪駅へは少し早めに到着したので、どこかで朝食を済ませるつもりでした。
とりあえず、新幹線の改札内に入ってから決めようと思い、改札口へ向かう事にした。
改札口を抜け、ふと電光掲示板を見ると、
私が乗車する予定の7時12分発のぞみが25分の遅れと表示されている・・・。
関東地方が大雪らしく、その為に遅延しているそうだ。
25分も遅れてしまうと、いや、それ以上に遅れてしまうかもしれない。
そうなると、予定していた事がうまく回らなくなる・・・。
ひとり気ままな旅なので、時間を気にせず行きたい所だが、そうも言ってられない。
「この場所には絶対に行きたい!」そう思った土地には必ず行きたいからだ。
もう一度電光掲示板を見てみる。
すると、6時50分発のさくらの存在に気づいた・・・これだ!
腕時計を見ると6時45分・・・間に合う・・・。
自由席になるけど、さくらに乗車する事を決めた。
さくらは新大阪駅が始発駅になるので、自由席だが余裕で座ることが出来た。
席に着いてから、さくらに乗車するのはこれが初めてである事に気づき、何だか嬉しくなった。
関東の方は大雪だそうだが、西日本はなかなか良い天気だ。
車窓からの景色をゆっくりと眺めたいところだが、私はこれから向かう先のことで思案していた。
なかなか考えがまとまらない・・・。
そんな状況の中、早々と広島駅に到着した。
新幹線から在来線に乗り換えて、呉駅を目指す。
広島駅から呉駅までは50分ほど・・・何とかそれまでに考えをまとめないと・・・。
私は呉駅に到着後、江田島へ向かうかどうかで迷っていた・・・。
呉から江田島へはフェリーを利用するのだが、フェリーの本数が少ない。
このまま行けば10時15分発のフェリーに乗船することは可能だが、
島へ到着してからが難儀になる。
島へ到着後、目的のお店まではバスを利用して、何とかスムーズにたどり着く事は出来るが、
ただ、帰りのバスが難儀だ・・・。
お店には11時5分頃に到着の予定。
そして帰りのバスだが、一番近い時刻が11時21分発になる。
たった16分でうどんを食べることが出来るかどうかも難しいところ・・・。
それと、11時21分発のバスを逃すと、次は13時過ぎまでバスが無い・・・。
その後の予定を考えると・・・。
でも、どうしても江田島の名物うどんを食べたい!
私は一か八かの想いで、10時15分発のフェリーに乗船することを決めた!
呉駅に到着。
第二次世界大戦当時、連合艦隊の旗艦だった、戦艦大和が建造された事でも有名な街だ。
その大和が建造された港、呉港に向かって私は歩き出した。
駅から呉港までは、歩いて5分ほどでした。
呉桟橋ターミナルで江田島行きの切符を購入。
切符を購入した後、出航の時間まで海を眺めていました。
戦艦大和が旅立った港・・・。
なぜか胸が熱くなります。
しばらくして、船が桟橋に着港した。
岡山から直島へ行ったときのことを想い出す。
これから20分ほどの船旅が始まる。
呉港としばしのお別れ。
さあ、もう後には引けない・・・。
うどんを食べた後、11時21分発のバスに乗車出来ることを祈ろう・・。
そのバスに乗車出来れば、12時過ぎには呉へ戻ってこれる。
もし、そのバスに乗れなかった場合・・・、呉に戻ってこれるのは15時になる・・・。
呉の名物うどんも食べたいし、大和ミュージアムをゆっくりと見学したい。
瀬戸内の海を眺めながら、私は、私の運の強さを信じる事にした。
目の前に江田島の港が見えてきた。
実は江田島では、市の観光協会がレンタサイクルをされているのですが、
私が来島した月曜日は、なんと観光協会が休みの為、レンタサイクルが出来なかったのです。
レンタサイクルさえ出来れば、島をのんびりと観光出来たのに・・・。
島に到着後、ターミナル周りに民間のレンタサイクル屋さんがあるか確認したのだが、
やはり無い・・・。
私はターミナル前に停まっていた大柿高校前行きのバスに乗りました。
この港から、私が目指すお店まではバスで20分ほど掛かります。
腕時計を見ながら「早く着け、早く着け!」と・・・。
時計が11時6分を表示したとき、外海停留所に到着。
このバス停からお店までは100メートル足らず・・・ダッシュでお店に向かう。
そして、ようやくたどり着いた・・・。
お店の名は「道の駅 豆ヶ島」です。
徳永豆腐店というお豆腐屋さんが営んでいるお店です。
お店の前では青鬼と赤鬼が門番をしている。
そして鬼のパンツを表現している虎柄模様の自販機・・・何だかシュールだ。
暖簾をくぐると、まるで無人販売所のような雰囲気が。
さらに奥に進むと、お土産等の販売コーナーがあり、
それを囲むようにイートインスペースが設けられている。
私はお店に入るやいなや「大豆うどんを下さい!」と女性スタッフに向かって叫んだ。
少し驚いたような顔をした女性スタッフでしたが、笑顔で「こちらで食券を買って下さい」と・・・。
なるほど、こんな所に食券機がある。
時間が気になるが、少し冷静を装って食券機の「大豆うどん」のボタンを押した。
ふと上を見上げると、大豆うどん以外にもうどんメニューがある。
↓↓ メニューです。
スタッフに食券を渡し、半券を受け取ったのちにイートインスペースへ。
時計を見ると11時7分・・・帰りのバスが来るまで、あと14分・・・。
幸いなのは、帰りのバス停が、道を挟んでお店の目の前だったこと。
ただ、バスの到着時間ほど当てにならないものはない。
少し早めに到着する事もあれば遅れる事もある。
なので、5分前にはバス停で待機したいと思っていた。
だから、この時ばかりは「早く出来上がれ、早く出来上がれ」と祈った・・・。
11時9分、うどんが出来上がった!
日本ではおそらく、この島でしか販売されていないと思う「大豆うどん」が目の前に。
「大豆うどん」は江田島の名物うどんです。
大豆の煮汁に醤油、味醂などを加え、出汁にしています。
大豆うどんは、お肉が容易に手に入らなかった時代の産物です。
当時、島のあちらこちらで栽培されていた大豆を、お肉の代わりとして利用したとの事です。
江田島のソウルフードと言われていますが、
食材が豊富な現在、江田島の島民でさえ、家庭であまり作らなくなったそうです。
うどんには大豆がごろごろと乗っています。
大豆の他にはきざみ揚げとネギ、そしてかまぼこです。
さっそく出汁から頂きました。
関西風な感じもしますが、そうでもない。
醤油のコクと深味は感じられるが、全体的に、何か物足りない感じがする。
でも、決して不味くはない・・・味に慣れていないだけだと思う。
麺に関しては、あまり期待していなかったのですが、
良い意味で裏切られました、モチモチ感とコシがあって美味しかったです。
そして大豆も、よく煮込まれていて、甘くてとても美味しかった。
すべて食べ終え、時計を見ると11時15分・・・お店を出なくては!
これまでいろいろと旅をして来たが、
ここまで時間に追われる事は、これまで一度も無かったと思う。
お土産品を見たり、人気の豆腐ソフトを食べたりする事なく、私はお店を出ました。
お店を出て、大きな鬼のオブジェの前に私は立ちました・・・。
鬼が私の事を睨んでいる・・・まるで心を見透かされてるようだ・・・。
「お前に正義はあるのか?お前は鬼だろう?」 そう言われているような気がした。
そうだな、私は鬼かもしれない・・・。
私に正義なんてものはないから・・・。
私は正義を信用していない・・・。
時に正義は、ひとりの賢者の言葉よりも、大勢の愚者の言葉に耳を傾ける。
正義は時代に支配される。
正義は人の心ではなく、人の頭の中にある。
正義は・・・人から心を奪う・・・。
私に正義は無い。
私にあるのは「心を鬼にする」という覚悟・・・。
人が心を鬼にする時は、懸命に生きようとする時、そして誰かを必死に守る時・・・。
正義は虚構で、心に根を持つ鬼こそが真理だと思う。
「私は鬼だ・・・。」心の中でそう呟き、鬼と別れを告げた。
バス停に立ち、あらためて周りの風景を眺める。
ここはのどかで良いところだ。
もっとじっくりと島を歩きたかったなぁ・・・。
11時21分を回った時、バスが来た。
これで呉には12時過ぎに着く・・・着いたら呉の名物うどんを食べに行こう・・・。
しかし、こんな忙しい旅はダメだな・・・。
バスの窓から見える島の風景を眺め、少し反省した・・・。
今度、この島へ来ることがあれば、ゆっくりと島を散策しよう。
青い空と綿のような雲、そして海・・・。
“現在(いま)は平和な世の中だ。”と、波がつぶやく・・・。
”現在(いま)は平和な世の中なんだ。”と、風がつぶやく・・・。
正義は人間の中にあるのではなく、波と風の中にあるような気がした。
島の駅 豆ヶ島
ジャンル:うどん
住所:〒737-2101 広島県江田島市大柿町飛渡瀬603(地図)
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周辺のお店:ぐるなび 呉×うどん
情報掲載日:2018年11月22日
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