集団的自衛権の行使をめぐって自民党が大混乱に陥った。17日に開かれた9年ぶりの自民党総務会で、「憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使を可能にする」という安倍総理の構想がゼロに戻ってしまったからだ。
その原因を作ったのは、おこがましい言い方になることを百も承知でいえば、読売新聞読者センターの方が「有象無象の読者のブログなんか」と切り捨てた、私のブログである。
私は過去何度も「集団的自衛権についての政府見解は間違っている」と、ブログで主張してきた。最後にダメ押しをしたのが今年1月6日に投稿した『安倍総理の集団的自衛権行使への憲法解釈変更の意欲はどこに…。積極的平和主義への転換か?』で、従来の政府の集団的自衛権についての見解の間違いを国連憲章の検証によって明らかにした記事である。そのさわりの部分を再度、要約して述べておく。
国連憲章では、国際間に紛争が生じた場合、加盟国に対して、話し合いなどの平和的解決を義務付けている。しかし当事者(当事国)同士や第三者を交えての話し合い、また国連が設けているさまざまな制度を利用しての話し合いでも解決に至らなかった場合に、紛争解決のためのあらゆる手段をとる権能を国連安保理に与えている。
その場合、国連安保理には、まず『非軍事的措置』すなわち経済制裁、ビザ発行の制限強化、外交的措置など軍事力によらないあらゆる措置をとる権能を与えられている(国連憲章第41条)。直近の例では、クリミア自治共和国が行った住民投票(国民投票と言えなくもない)は無効であるとする決議を安保理が行おうとしたケースがある。
また安保理による『非軍事的措置』の行使によっても国際紛争を解決できなかった場合には、やむを得ず、国連安保理に『軍事的措置』によって紛争解決する権能も認めている(国連憲章第42条)。
ところが、国連安保理事国(現在は14か国)のうち米・英・仏・露・中の5か国が特別の権利を持っており、安保理決議に対して拒否権を行使できることが認められている。先のクリミア自治共和国がウクライナから分離独立の是非を問うた住民投票に対して安保理が無効の決議を行おうとしたが、14か国のうちロシアが拒否権を行使したため圧倒的多数が賛成しながら、決議に至らなかったことは読者諸氏もご承知であろう。
ちょっと話が横道にそれるが、中国にウイグル自治区が存在する。中華民国(台湾政府)は「ウイグル自治区は我が国の新疆省であり、自国の領土の一部である」と主張している。もしウイグル自治区が中国からの分離独立を求めて住民投票を行おうとすれば、当然中国は武力弾圧にかかる。クリミア自治共和国の住民投票はロシア軍による軍事的支配下で行われたわけではない。実際、
ロシア軍はクリミアで銃弾の一発も撃っていない。
さて、クリミア自治共和国のウクライナからの分離独立を求め平和的に行われた住民投票を無効と決めつけた米欧安保理事国は、ウイグル自治区が中国からの分離独立を求めた住民投票を行おうとした時、無効の決議を行おうとするだろうか。間違いなく米欧安保理事国はウイグル族の「民族自決権行使」を支持する決議を行おうとするだろう。当然、中国は拒否権を発動するが…。
さて日本政府も日本のマスコミもロシアの「武力干渉」を非難し、クリミア自治共和国政府が行った分離独立の住民投票を無効と主張したが、ウイグル自治区の住民が同様の行動に出たとき、同じ論理でウイグル族の民族自決権を否定するだろうか。
日本のマスコミは、そういうことを「自己矛盾」と思わない存在だということを、読者は肝に銘じておいた方がいい。
さて本筋に戻る。国連憲章第42条『軍事的措置』は、国連軍を想定していることは明白である。しかし、クリミア自治共和国のウクライナからの分離独立を問う住民投票を無効とする決議案が、ロシアの拒否権によって採択されなかったようなケースを、国連憲章は当然想定していた。そのため、国連のあらゆる機能や安保理に与えた「神の如き権能」によっても国際紛争が解決できず、国連加盟国が他国によって武力攻撃された場合に、本来は軍事的解決を図ってはいけないのだが、やむを得ず軍事力の行使によって他国からの武力攻撃を防いでもいいですよ、ということを定めたのが国連憲章第51条の『自衛権』なのである。
では、国連憲章第51条が認めた「自衛権」にはどんなものがあるか。「個別的又は集団的自衛の固有の権利」なのである。ここまで平易に解説すれば、「個別的自衛権」が日本の場合は自衛隊による軍事力の行使であり、「集団的自衛権」は日本と同盟関係にある国や国益を共有する友好国に対して軍事的支援を要請する権利であることは中学生でもわかるだろう。
では集団的自衛権についての従来の政府解釈はどうだったか。
「密接な関係にある国が攻撃を受けた場合、日本が攻撃されたと見なして自衛隊が武力行使する『権利』(?)で、固有の権利として認められてはいるが、憲法9条の規定があるため行使できない」
という、だれが考えてもおかしな解釈である。
憲法9条は、国際紛争を解決するための手段として武力を行使することを禁じてはいるが、日本が独立を回復した時点で独立国としての責任や義務(自分の国や国民の安全は自分で守る」という憲法以前のことであり、本来なら日本が独立を回復した時点で独立国にふさわしい憲法を改めて制定すべきだったのだ。それを怠ってきたため、集団的自衛権を巡っての混乱が生じていることを、
まず読者にはご理解いただきたい。
結論から言えば、日本はすでに自衛隊という「個別的自衛権」を有しており、日米安全保障条約によって日本が他国から攻撃されたときはアメリカが日本の防衛のための軍事的行動に出てくれることに、いちおうなっている。「一応」と書いたのは、アメリカは自国が攻撃された場合を除いて、他国を軍事的に支援するためには議会の承認を取り付ける必要があり、議会が承認する場合はアメリカの国益に反しない場合だけである(自国が攻撃されたときは議会の承認を取り付けている余裕はないから大統領の独断で軍事行動に出ることができる。日本の場合、そういう状況を想定した規定はないが、おそらく緊急閣議で自衛隊出動を決めることになると思う)。
だから、アメリカが攻撃された場合(アメリカが他国と戦争した場合、ではない)、自衛隊が軍事的支援できるようにすることは、日米安全保障条約の片務性の解消につながり、日本が攻撃を受けた場合にアメリカが軍事的支援を行ってくれる確率は大幅に高まる。だからアメリカの「集団的自衛権の行使」に日本が応じられるようにすることは非常に重要だが、そのためには憲法の改正が絶対必要要件になる。(続く)
その原因を作ったのは、おこがましい言い方になることを百も承知でいえば、読売新聞読者センターの方が「有象無象の読者のブログなんか」と切り捨てた、私のブログである。
私は過去何度も「集団的自衛権についての政府見解は間違っている」と、ブログで主張してきた。最後にダメ押しをしたのが今年1月6日に投稿した『安倍総理の集団的自衛権行使への憲法解釈変更の意欲はどこに…。積極的平和主義への転換か?』で、従来の政府の集団的自衛権についての見解の間違いを国連憲章の検証によって明らかにした記事である。そのさわりの部分を再度、要約して述べておく。
国連憲章では、国際間に紛争が生じた場合、加盟国に対して、話し合いなどの平和的解決を義務付けている。しかし当事者(当事国)同士や第三者を交えての話し合い、また国連が設けているさまざまな制度を利用しての話し合いでも解決に至らなかった場合に、紛争解決のためのあらゆる手段をとる権能を国連安保理に与えている。
その場合、国連安保理には、まず『非軍事的措置』すなわち経済制裁、ビザ発行の制限強化、外交的措置など軍事力によらないあらゆる措置をとる権能を与えられている(国連憲章第41条)。直近の例では、クリミア自治共和国が行った住民投票(国民投票と言えなくもない)は無効であるとする決議を安保理が行おうとしたケースがある。
また安保理による『非軍事的措置』の行使によっても国際紛争を解決できなかった場合には、やむを得ず、国連安保理に『軍事的措置』によって紛争解決する権能も認めている(国連憲章第42条)。
ところが、国連安保理事国(現在は14か国)のうち米・英・仏・露・中の5か国が特別の権利を持っており、安保理決議に対して拒否権を行使できることが認められている。先のクリミア自治共和国がウクライナから分離独立の是非を問うた住民投票に対して安保理が無効の決議を行おうとしたが、14か国のうちロシアが拒否権を行使したため圧倒的多数が賛成しながら、決議に至らなかったことは読者諸氏もご承知であろう。
ちょっと話が横道にそれるが、中国にウイグル自治区が存在する。中華民国(台湾政府)は「ウイグル自治区は我が国の新疆省であり、自国の領土の一部である」と主張している。もしウイグル自治区が中国からの分離独立を求めて住民投票を行おうとすれば、当然中国は武力弾圧にかかる。クリミア自治共和国の住民投票はロシア軍による軍事的支配下で行われたわけではない。実際、
ロシア軍はクリミアで銃弾の一発も撃っていない。
さて、クリミア自治共和国のウクライナからの分離独立を求め平和的に行われた住民投票を無効と決めつけた米欧安保理事国は、ウイグル自治区が中国からの分離独立を求めた住民投票を行おうとした時、無効の決議を行おうとするだろうか。間違いなく米欧安保理事国はウイグル族の「民族自決権行使」を支持する決議を行おうとするだろう。当然、中国は拒否権を発動するが…。
さて日本政府も日本のマスコミもロシアの「武力干渉」を非難し、クリミア自治共和国政府が行った分離独立の住民投票を無効と主張したが、ウイグル自治区の住民が同様の行動に出たとき、同じ論理でウイグル族の民族自決権を否定するだろうか。
日本のマスコミは、そういうことを「自己矛盾」と思わない存在だということを、読者は肝に銘じておいた方がいい。
さて本筋に戻る。国連憲章第42条『軍事的措置』は、国連軍を想定していることは明白である。しかし、クリミア自治共和国のウクライナからの分離独立を問う住民投票を無効とする決議案が、ロシアの拒否権によって採択されなかったようなケースを、国連憲章は当然想定していた。そのため、国連のあらゆる機能や安保理に与えた「神の如き権能」によっても国際紛争が解決できず、国連加盟国が他国によって武力攻撃された場合に、本来は軍事的解決を図ってはいけないのだが、やむを得ず軍事力の行使によって他国からの武力攻撃を防いでもいいですよ、ということを定めたのが国連憲章第51条の『自衛権』なのである。
では、国連憲章第51条が認めた「自衛権」にはどんなものがあるか。「個別的又は集団的自衛の固有の権利」なのである。ここまで平易に解説すれば、「個別的自衛権」が日本の場合は自衛隊による軍事力の行使であり、「集団的自衛権」は日本と同盟関係にある国や国益を共有する友好国に対して軍事的支援を要請する権利であることは中学生でもわかるだろう。
では集団的自衛権についての従来の政府解釈はどうだったか。
「密接な関係にある国が攻撃を受けた場合、日本が攻撃されたと見なして自衛隊が武力行使する『権利』(?)で、固有の権利として認められてはいるが、憲法9条の規定があるため行使できない」
という、だれが考えてもおかしな解釈である。
憲法9条は、国際紛争を解決するための手段として武力を行使することを禁じてはいるが、日本が独立を回復した時点で独立国としての責任や義務(自分の国や国民の安全は自分で守る」という憲法以前のことであり、本来なら日本が独立を回復した時点で独立国にふさわしい憲法を改めて制定すべきだったのだ。それを怠ってきたため、集団的自衛権を巡っての混乱が生じていることを、
まず読者にはご理解いただきたい。
結論から言えば、日本はすでに自衛隊という「個別的自衛権」を有しており、日米安全保障条約によって日本が他国から攻撃されたときはアメリカが日本の防衛のための軍事的行動に出てくれることに、いちおうなっている。「一応」と書いたのは、アメリカは自国が攻撃された場合を除いて、他国を軍事的に支援するためには議会の承認を取り付ける必要があり、議会が承認する場合はアメリカの国益に反しない場合だけである(自国が攻撃されたときは議会の承認を取り付けている余裕はないから大統領の独断で軍事行動に出ることができる。日本の場合、そういう状況を想定した規定はないが、おそらく緊急閣議で自衛隊出動を決めることになると思う)。
だから、アメリカが攻撃された場合(アメリカが他国と戦争した場合、ではない)、自衛隊が軍事的支援できるようにすることは、日米安全保障条約の片務性の解消につながり、日本が攻撃を受けた場合にアメリカが軍事的支援を行ってくれる確率は大幅に高まる。だからアメリカの「集団的自衛権の行使」に日本が応じられるようにすることは非常に重要だが、そのためには憲法の改正が絶対必要要件になる。(続く)
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