℃-uteメンバーが日本武道館でコンサートをやりたがっていると聞いた時に思い出した事がある。今から七年半前、日本武道館で行われたモーニング娘。コンサートに℃-uteが前座として出演した日の事。
当時℃-uteは正式にグループ名が付いたばかりで、まだ持ち歌もカバーしかなかった。そんなメンバーをハロプロヲタに認知してもらうために、2005年秋に東京都内で行われたハロプロ関連のコンサートに℃-uteは前座で出演することになった。
今で言えばモベキマスのヲタが研修生には疎いのと同じように、当時のハロプロヲタは℃-uteについてそれほど詳しくない人が多かった。まだハロプロにエルダーがあった時代の話だ。
そんな頃に前座で各コンサートに出演するという事は一種のアウェイ参戦みたいなもので、会場によって受け入れられ方は違ったけれど、モーニング娘。のファンは温かく℃-uteを迎えた。当時のモーニング娘。は年々人気が下がっていたが、ステージはどんどんクオリティアップを図っていた時期であった。トークは台本からアドリブが入るようになり、セットリストも趣向が凝らされるようになり公演時間も長くなっていた。そんなモーニング娘。の人気をアップさせたい人々は、ひたすらに一体感のある空間を会場に作る事に気持ちを込めていた。
拍手で迎えられた℃-uteは自分達の持ち味をわかりやすく武道館を埋めた大勢のモーニング娘。ファンに提示した。
鈴木愛理の歌声。村上愛のダンス。萩原舞のコミカルぶり。
その武道館の翌週、東京厚生年金会館ではBerryz工房のコンサートが予定されていた。石村舞波卒業コンサートであるからチケットは完売。ハロプロのこの年の秋の大きな話題の一つである。
そんな時期に同時進行で℃-uteは前座仕事をしている。さすがにBerryz工房の前座はやらなかったが、メンバーは地道に日々を重ねていたのだ。武道館に立ったという勲章を胸に。
昨年、あるインタビューで℃-uteメンバーは「デビュー当時みたくまたショッピングセンターを回りたい」と語った。彼女達は未だに自分達はまだまだな存在であると自覚しているのだろう。そして、℃-uteは実際にオープンスペースでイベントを行なっている。
どんなに人気が上がっても、どんなに実力が上がっても、忘れてはいけない場所というものが誰にでもあるように、℃-uteは「あの日、武道館のステージに立った未熟な私達」を頭の片隅に置きながら歌い踊り続けている。