久し振りに小説を読みました。ニコニコさんの親友(EPOMさん)お勧めの一冊で、宮部みゆき著「蒲生邸事件」。<o:p></o:p>
序章として、「ススメ ススメ ヘイタイ ススメ」とあり、おやっと思いました。ストーリーの中心となる二・二六事件を暗示した言葉だったようです。<o:p></o:p>
読み始めた時は、不思議な小説だと思いました。久し振りに小説を読むこと。著者が推理作家と思っていたところ、タイムスリップというSF的要素が入っていたことへの戸惑い。事件につながるプロローグがやや長く感じたこと。<o:p></o:p>
読み終わっての感想は、「面白かった」です。彼女の他の作品も読んで見たいと思いました。<o:p></o:p>
平成4年2月26日、高校生尾崎孝志が時間旅行者平田次郎と、56年前の昭和11年2月26日の二・二六事件が勃発した日にタイムスリップする。場所は、二・二六事件が勃発した麹町・永田町に近い蒲生邸。陸軍大将蒲生憲之の自決に遭遇し、その謎を追うことになる。<o:p></o:p>
時間旅行者平田次郎が語る。「歴史が先か人間が先か。永遠の命題だな。だけど私に言わせれば結論はもう出てるよ。歴史が先さ。歴史は自分の行きたいところを目指す。そしてそのために必要な人間を登場させ、要らなくなった人間を舞台から降ろす。だから、個々の人間や事実を変えてみたところでどうにもならない。歴史はそれを自分で補正して、代役を立てて、小さなぶれや修正などをすっぽりと呑み込んでしまうことができる。ずっとそうやって流れてきたんだ」というあたりから、俄然興味がわいてきて、一気に読み終えました。<o:p></o:p>
孝志が、父親の太平に語る。「俺ね。過去を見てきたの。それで判ったんだ。過去は直したってしょうがないものだし、未来のことを考えて心配したって無駄なんだってことがね。なるようにしかならないんだから。だけど、だからこそ俺、ちゃんと生きようと思ってさ。言い訳なんかしなくていいようにさ。そのときそのとき、精一杯やろうってさ。だから父さんは学なんかなくっても、そのときそのとき精一杯やってきたんだからいいんだよ」 この言葉は、著者が一番書きたかったこと、伝えたかったことではないかと思いました。
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