大山やその背後に連なっている山を覆う雲は秋らしい淡い筋状の雲ではなくもくもくと隆起する夏雲のようだ。月に一度の検診日は気温も高いので座間から伊勢原まで友人からもらいうけた原付2種のスクーターを走らせることにした。病院へは朝一番の予約となっていたが、今日は珍しく診察時間のうんざり待機がなかった。午前10時前には処方薬をもらって病院を後にする。蒸すような好天になってしまったが、バイクは風を切るので心地がよい。県道の相模原、大磯線を走って国府津付近にまで足を伸ばそうという気分になった。バイクをもらいうけて以来の長い距離である。このバイクは本来は50ccなのだが、一癖もっていて凝り性な友人はこれをボアアップキットによって排気量を増やしている。数値上では70ccになって、申請も正規にしてあるから公道を走る場合の50cc規制には触れないから、50cc特有の緩慢性や法規制を逃れて走ることができる。もともと50ccにしては小さいボディに大きな7Psという公称出力を持っているバイクだ。前に持っていたHONDAのスーパーカブ90ccなどよりも鈍重な頭打ち感がない。速度的には50キロメーター付近のやや暴れ気味なトルクが図太くて痛快である。メーター表示はなんと60キロが上限なのだが、そこを振り切るのはおちゃのこさいさいという走行ペースである。アクセルグリップを不用意にブーストしようものなら前輪が浮き上がる気配だ。停止が意のままのせいか、二宮の梅沢海岸、大磯の生沢付近の豊かな田園地帯などいつもは見逃す場所に停留できるという幸せをもたらしてくれた。
国府津にあるカフェ「邪宗門」ではオーディオのイベントのお願いをしようと思って境内を訪れたが、あいにく檀家さんを集めた法要が行われていた。その法要ではどなたか、男性テノール歌手がマイクなしで「千の風になって」を朗々と歌い上げていた。西湘バイパスの橘インター付近には海沿いのNEXCO休憩所がある。ここで相模湾から吹いてくる南風をしばらく浴びて釜揚シラス丼600円を食べる。釜揚げシラス50円分くらいが乗っているだけの創意も工夫も感じられない素っ気ないメニューだが、前夜7時以来の絶食を満たしてくれる。食後はすぐ脇の東海道沿いにある「ホワイトオーク」でコーヒータイムとなる。本日のよく吹きあがってストレスなき70ccのツーリングの総走行はしめて100キロとなった。