大掃除も済み、オーディオ書斎もそれなりに新年らしいレイアウトにして満悦しているところである。アナログレコードプレーヤーの2台による再生音で、この年末年始休み期間を楽しむことにした。気兼ねする家人がいないことは寂しくもあり反面で嬉しいことでもあるから人生は不可思議だと思っている。老いてからの青春が断片として一時的に甦生する時間である。
一台は西ドイツ時代のエラックミラコード、もう一台がイギリスガラード301だ。スピーカーは座間へ到来して二年目を迎えるイギリス、バイタボックスの12インチ同軸2ウエイ型バスレフボックスというようやくサウンドが落ち着いてきたコンビである。ガラードはこの1週間という臨時ステイだから、今日も冬ごもりしながら4時間ほどアナログレコードをかけ続けてしまった。
ガラードとGE社モノラルバリレラ針のサウンド傾向は少し高域が硬めだ。フィッシャーアンプとの間にかましたフォノイコライザーの癖が乗っているのかと思う。一昨日はレコードプレーヤーの達人が持参してきた初期オルトフォン社の通称「エッグ」というカートリッジの端正ながら彫琢感の深い音像の素晴らしさに驚嘆する。今日は1枚だけクラシックLPへ脱線した。グレングールドがまだ脱コンサート宣告をする前のバーンスタイン指揮、ニューヨークフィルと共演したベートーベンのピアノ協奏曲ト長調OP58の米コロムビア盤のグレーカラー、シックスアイズラベルのオリジナルレコードである。B面のアンダンテ・コン・モート、ビバーチェといった後半の楽章を移ろいながら、グールドの奏でる幽暗なピアノ音があの「エッグ」カートリッジだったら、また違う次元を聴かせるのか、等と夢想しながら本家のジャズへ戻ることにした。
ジュリー・ロンドンのリバテイ盤「ハー・ネーム」ジョニー・ハートマンのベツレヘム盤「シングス・フロム・マイ・ハート」ディック・ヘイムズのキャピトル盤「ムーン・ドリームス」等は終生の愛すべきオリジナルLPだから、こちらもあちらも鳴らすべき壷を心得て満足の再生音を奏でてくれるもので期待に沿ってくれている。意外にも今日良かったのが器楽系のジャズサウンドだ。
酔っ払い人生によって実生活は破綻はしたが、後世の我々に「サンクス・フォー・メモリー」のようなバリトンサックスの美しく妙なる曲を残していったサージ・チャロフバンドのオランダプレスなどの再版ものがけっこうな迫力を奏でる。ハンク・ジョーンズがドナルド・バード等を迎えたサボイ盤などもエディ・ジョーズのウオーキングベースの強いアクセントは、小豆カラーのセカンドプレスながらさすが、バン・ゲルダー録音というジャズらしい野生を含んだ奔出性が溢れているではないか。バリレラカートリッジと50年代ジャズの時代質感万歳!という至福を覚える瞬間を堪能したから、明日はエラックミラコードの交換針を差し替えて同じソースを感覚的に検証してみようと企んでいるところだ。
今年もよろしくお願いいたします