Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

路上の商談

2018-09-27 11:29:58 | ラジオ亭便り
アルバイト先が横浜の市街地にある。長者町と言って江戸時代に吉田勘兵衞という人が埋立地を開墾して新田を開いた「吉田新田」のエリアに属している。長者町と称するからにはその名の通り、新田開発で儲けた長者屋敷がどこかにあったらしい。伊勢佐木町から石川町へ南北に連なっている「横浜駅前根岸通り」の幹線道路が走っていて地形的には戦後の横浜の繁華街の面影が残っている。

その大通りを歩いて信号待ちしていたら年輩の方から道を尋ねられた。ボート競技の発券場を教えてほしいということだ。目の前の長者町1丁目を左に曲がれば寿町側に大きなビルがあるよと答えた。そこでは全国の競艇レースが実施状況をモニター画面で眺められるモダンな賭博場になっているらしい。礼を言った老人とその場で離れたが気になることがあった。

その老人が赤い長尺物の臙脂色した釣り具を抱えていたからだ。このところ、はぜの試し釣りに出かけても貧果に泣くことが多い。釣りに行く服装でもないと思いながら尋ねてみた。「どこかで竿でも出すのですか?」すると答えが返ってきた。釣り具店の「 高価買取」の宣伝につられて購入価格の高かったカーボンロッドの磯竿を見積もってもらいに行ったらしい。その見積り額を聞いて呆れたとのことである。「700円だよ!」袋の中身を取り出してその磯竿を見せてくれた。購入時の値段は2万5,000円したらしい。私などが持っている駄物竿などに比べれば遥かに風格のある品物だ。

傷みもない綺麗な4メートル位の竿である。それなら私が倍の引き取り価格に送料分くらい乗せるので譲ってくれと申し出てみた。竿のヘタリを確かめてからの商談でこれは快諾となった。ちょうど10日くらい前に金沢福浦の岸壁で同じくらいの磯竿で小アジの投げサビキ釣りをしている人がいた。羨ましいことに入れ食いの目撃である。それから格好の磯竿があればと夢想していたらこういう路上商談の奇跡が起こった次第だ。帰ってから現代生活の渦中に生きている知人にその変なハプニング話を披瀝した。答えは「メルカリの進んだ形態ですね」である。

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