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阿佐ヶ谷にあるユニークな席数50席の小映画館でかっての名匠成瀬巳喜男監督の「鰯雲」を観る。ちょうど駅北口のJR高架下にはダイヤ街という我がラジオ亭にも通じるラフな内外装が特徴の零細なカフェや個性酒房が結構な数で軒を連ねている一角がある。帰りはここに寄ることにする。
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成瀬巳喜男監督の初カラー化作品は1958年の製作でタイトル字幕を見ていると、音楽は既にステレオ録音が採用されている。ストーリーは神奈川のかっての農村部厚木が舞台だ。現地ロケになる映画ということで、厚木の近在や愛甲郡半原等の往時の神奈川山村風景を眺めたいという願いがようやく叶った。没落気味な中農一族の戦後的心性と土地経済の改変模様がテーマだ。のちに核家族化は日本の大きな問題になるが、それを予兆する映画でもある。これに成瀬風メロドラマ的淡彩模様を添えるのが中農一族の分家を健気に支える戦争未亡人役の淡島千景と新聞記者役の木村功という当時の躍進スターである。
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自分に照らしてこの映画を観ると、中村鴈治郎と清川虹子が夫婦を演ずる中農一家には小学上級生くらいの子がいる。その子くらいの都市型下層庶民の子が当時の自分だったという感慨に耽りながら映画を観る。分家の姑役、飯田蝶子、別分家の嫁役、賀原夏子、その娘役、水野久美、中農一家の長男、小林桂樹、嫁候補、司葉子、その未亡人母親、杉村春子、壮年事業家の遣手2号さん、新珠三千代、農協中間職員、加藤大介、若年期によく見た娯楽映画のお馴染み俳優なので顔と演技挙措がすぐに蘇ってきて楽しい。但し子供時代にみていたら活劇要素は希薄で、農村的四季の流れと心の風景はとても理解ができなかっただろう。年は取るものだと映画を観ながら思った。
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農業が割に合わない時代になりつつある時の保守的家意識に固執する当主の滑稽的苦渋を中村鴈治郎が力演している。一家の跡取りで結婚をまじかに控える小林桂樹が 婚約者の司葉子とつましい新生活を柔和に指向するシーンにも戦後的清新を感じる。小林桂樹が町場へ短期間出稼ぎに出る。下宿先の部屋でカーテン生地を手縫いする嫁候補、司葉子の横顔シーンが現れる。とても良いシーンで成瀬映画はそうした微細な叙情視線の集積で成り立っていると感じる。
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やはり幼少時の既視感に登場する生活事物はふんだんである。マツダのオート三輪、小林桂樹の農作業前掛けに印刷された「品川練炭」のロゴマーク、半原の在へ嫁取り話に出かける淡島千景のカップルが乗車するボンネットバスは「神奈川中央交通」だ。それらもカラー彩色の面目躍如だが、ことに旬の美を滴らせているアップシーンにおける淡島千景の額や首筋、颯爽とした背姿の映えた新珠美千代女将のうなじなどにも、その余得は十分に伝わっている。
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映画鑑賞の後はダイヤ街「黒猫茶房」でカレー昼食して付近を散策する。
今週のご案内
6月12日(月)13時〜19時 平常営業 6月13日(火)13時〜19時 平常営業 6月14日(水)休業
6月15日(木)〜18日(日) 13時〜19時 平常営業
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成瀬巳喜男監督の初カラー化作品は1958年の製作でタイトル字幕を見ていると、音楽は既にステレオ録音が採用されている。ストーリーは神奈川のかっての農村部厚木が舞台だ。現地ロケになる映画ということで、厚木の近在や愛甲郡半原等の往時の神奈川山村風景を眺めたいという願いがようやく叶った。没落気味な中農一族の戦後的心性と土地経済の改変模様がテーマだ。のちに核家族化は日本の大きな問題になるが、それを予兆する映画でもある。これに成瀬風メロドラマ的淡彩模様を添えるのが中農一族の分家を健気に支える戦争未亡人役の淡島千景と新聞記者役の木村功という当時の躍進スターである。
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自分に照らしてこの映画を観ると、中村鴈治郎と清川虹子が夫婦を演ずる中農一家には小学上級生くらいの子がいる。その子くらいの都市型下層庶民の子が当時の自分だったという感慨に耽りながら映画を観る。分家の姑役、飯田蝶子、別分家の嫁役、賀原夏子、その娘役、水野久美、中農一家の長男、小林桂樹、嫁候補、司葉子、その未亡人母親、杉村春子、壮年事業家の遣手2号さん、新珠三千代、農協中間職員、加藤大介、若年期によく見た娯楽映画のお馴染み俳優なので顔と演技挙措がすぐに蘇ってきて楽しい。但し子供時代にみていたら活劇要素は希薄で、農村的四季の流れと心の風景はとても理解ができなかっただろう。年は取るものだと映画を観ながら思った。
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農業が割に合わない時代になりつつある時の保守的家意識に固執する当主の滑稽的苦渋を中村鴈治郎が力演している。一家の跡取りで結婚をまじかに控える小林桂樹が 婚約者の司葉子とつましい新生活を柔和に指向するシーンにも戦後的清新を感じる。小林桂樹が町場へ短期間出稼ぎに出る。下宿先の部屋でカーテン生地を手縫いする嫁候補、司葉子の横顔シーンが現れる。とても良いシーンで成瀬映画はそうした微細な叙情視線の集積で成り立っていると感じる。
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やはり幼少時の既視感に登場する生活事物はふんだんである。マツダのオート三輪、小林桂樹の農作業前掛けに印刷された「品川練炭」のロゴマーク、半原の在へ嫁取り話に出かける淡島千景のカップルが乗車するボンネットバスは「神奈川中央交通」だ。それらもカラー彩色の面目躍如だが、ことに旬の美を滴らせているアップシーンにおける淡島千景の額や首筋、颯爽とした背姿の映えた新珠美千代女将のうなじなどにも、その余得は十分に伝わっている。
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映画鑑賞の後はダイヤ街「黒猫茶房」でカレー昼食して付近を散策する。
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6月12日(月)13時〜19時 平常営業 6月13日(火)13時〜19時 平常営業 6月14日(水)休業
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