粗末なものでも息子からもらったプレゼントを母は心から喜んでくれました。
申し訳なく情けない少年朴竜。だって万引きしたものだから。いっそ、こんなもの要らないと捨ててほしいくらい。
それから母は家にいる時はおばさんパーマに毎日何本かの髪留めを付けてくれていました。今思い出せばちびまる子ちゃんのお母さんの髪型と同じパーマでした。
母は毎日、お兄ちゃんからもらった髪留めは使いやすく本当に便利。お兄ちゃんは親思いで優しい子だね~と声をかけてくれました。
その度に万引少年の心はちくちく痛むのです。
その髪留めはその後、私が社会人になるまで大事に大事に使われるんです。
僅か30円の盗んだモノを母はずっとずっと大切に使ってくれていて、たまに思い出したように、小学校の時プレゼントしてくれた髪留め嬉しかったよ~と言ってくれるたびに心が張り裂けそうになるのでした。
20年前に長く勤めていた証券在社を辞める際に退職金で纏まったお金が入ってきました。
それで実家に新しい冷蔵庫、電子レンジやテレビを買い揃えました。
その後に勤めた会社を5年勤めて辞める際も退職金でユニットバスを設置してあげました。結構な金額でした。
私とすると少年朴竜時代の母親への申し訳ない思いを拭い去りたくての買い物でした。
数年前の夏に今の職場に職を得てホッとして帰省した時には少し呆けてきたは母は昔を懐かしむように、
お兄ちゃんからもらった髪留め嬉しかったよ。ありがとうね~と今でも繰り返すのでした。
オッさん朴竜はその度に
お母さんごめんね
お母さんごめんね
と心の中で呟くのでした。
あれから45年経っても
あの髪留めは万引きしたものなんだよ、
とは絶対に言ってはいけないんだなと改めて思い、それを知らぬままに母は優しい息子のプレゼントを抱いて旅だったのでした。