クラブボクシング@ゴールドジム湘南神奈川

普通、湘南辻堂といえばサーフィンなのにボクシングでひたすら汗を流すオッさん達のうだうだ話!

北国の万引き少年! 最終話

2020年12月26日 | ちっちゃいおっさん

粗末なものでも息子からもらったプレゼントを母は心から喜んでくれました。


申し訳なく情けない少年朴竜。だって万引きしたものだから。いっそ、こんなもの要らないと捨ててほしいくらい。




それから母は家にいる時はおばさんパーマに毎日何本かの髪留めを付けてくれていました。今思い出せばちびまる子ちゃんのお母さんの髪型と同じパーマでした。


母は毎日、お兄ちゃんからもらった髪留めは使いやすく本当に便利。お兄ちゃんは親思いで優しい子だね~と声をかけてくれました。


その度に万引少年の心はちくちく痛むのです。


その髪留めはその後、私が社会人になるまで大事に大事に使われるんです。




僅か30円の盗んだモノを母はずっとずっと大切に使ってくれていて、たまに思い出したように、小学校の時プレゼントしてくれた髪留め嬉しかったよ~と言ってくれるたびに心が張り裂けそうになるのでした。


20年前に長く勤めていた証券在社を辞める際に退職金で纏まったお金が入ってきました。


それで実家に新しい冷蔵庫、電子レンジやテレビを買い揃えました。


その後に勤めた会社を5年勤めて辞める際も退職金でユニットバスを設置してあげました。結構な金額でした。


私とすると少年朴竜時代の母親への申し訳ない思いを拭い去りたくての買い物でした。




数年前の夏に今の職場に職を得てホッとして帰省した時には少し呆けてきたは母は昔を懐かしむように、


お兄ちゃんからもらった髪留め嬉しかったよ。ありがとうね~と今でも繰り返すのでした。


オッさん朴竜はその度に

お母さんごめんね

お母さんごめんね

と心の中で呟くのでした。




あれから45年経っても

あの髪留めは万引きしたものなんだよ、

とは絶対に言ってはいけないんだなと改めて思い、それを知らぬままに母は優しい息子のプレゼントを抱いて旅だったのでした。





北国の万引き少年! 中編

2020年12月26日 | ちっちゃいおっさん

突然魔が差して万引きしてしまった朴竜少年。


四輪駆動車のように山の上にある家まで一気に駆け上がりました。


「室蘭」は坂と入江の多い土地「モルエラン」というアイヌ語から来た地名。




本当に坂ばかり、それも信じられないくらい勾配の坂はいくらでもありまして、近藤デパートから家までは傾斜10度の坂が400m続く試練のロード。


子供の頃から毎日登り下りしてると自然と足腰も強くなるというもの。


鎌倉山のロードワークなんて屁みたいなものです。




さて、追っ手が諦めるくらいのスピードで、追っ手が絶対登り下りきれない急傾斜の坂を登り切ホッとひと息。


ホッとひと息なんですが、なんでこんなことしたのだろうと後悔がムクムク起き上がります。誰かに見られていてチクられるのではないかとびくびくし始める小者の朴竜少年。


ポケットから盗んだ物を取り出し眺めます。


それは「ピン留め」「髪留め」って言うのでしょうか? 手のひらに納まるサイズのプラスチックケースに20本程度ほどの小さな髪留めが入っているもの。




値段はわずか30円。


わずか30円の髪留めを盗み、それを母にプレゼントしようとしたのでした。


盗んだなんて分からないだろうけど、そんなものをプレゼントしても母は可哀想。もしかしたら後からバレてしまったら、母は悲しむことになります。


よし、捨ててしまおう。証拠隠滅も兼ねています。




なかなか家に入れずに玄関でもぞもぞしていると、母が


「あんた、今、何時だと思ってんの!出たっきり帰ってこないで、宿題はやったの?全くこの子は!」と怒鳴り始めます。


私、捨てしまおうと思っていた「髪留め」でしたが、あんまり母が煩いので


「母の日のプレゼントを買いに行ったんだ。はい、これ。安いけど。」と万引きしてしまったものを渡してしまいました。


母はたいそう喜んで「あ~、そうだったのかい?なんも聞かずに怒ってゴメンね~」と泥棒息子に謝るのでした。




続く


北国の万引き少年 前編

2020年12月26日 | ちっちゃいおっさん
昭和47年、西暦1971年。朴竜少年10歳、小学校4年生。

昨年の国勢調査によれば北海道室蘭市の人口は約9万人。

朴竜少年10歳の頃は恐らくその倍の人口がいて、私がいた輪西町は新日鐵の正門が近かったこともあり、2万人も住んでいた商業地でした。

今は室蘭市の中でももっとも寂れたシャッター通りばかり。


そんな輪西町に近藤デパートがありました。

デパートと言っても藤沢のイトーヨーカドーみたいなものでしょうか。婦人服や雑貨を売るショボいショッピングセンターです。

その最上階にはゲームセンターがあって放課後や土日には粗末な風体の田舎のガキンチョで賑わうのでした。


或る日、朴竜少年は母の日のプレゼントを買いに近藤デパートへ行きました。

ポケットに幾らあったのかは覚えていませんが、大昔のことなので200円とか300円だったのだと思います。

朴竜少年、真っ直ぐにプレゼントを買えば良かったのですが、最上階のゲーセンに行ってしまったのです。

何処からか安く横流しされたような、粗末で薄汚れたスマートボールやピンボールやキャンディクレーンなど本当にアナログなゲームばかり。

一回が10円とか20円だったように覚えています。

お調子者の朴竜少年。一回で止めればよいものを、ポケットの残金を気にしながらも段々と熱くなっきて、あと1回、あと1回、これが最後と言い聞かせながら結局ポケットにあったお金を全部ゲームにつぎ込んでしまったのです。

母の日のプレゼントを買うお金までなくってしまい、自分の愚かさと情けなさに後悔の涙が出そう。

とぼとぼと肩を落とし最上階から階段を降り始めます。う~ん、何も買えないけど、とりあえず一階のファンシーショップを見るだけ見て見よう!



ふ~ん
色々あるんだなぁ。こんなの買ったら喜んでくれたのになあ

後悔先に立たず
馬鹿な朴竜少年

店内を見渡したところ、店員も客も誰一人いません。

朴竜少年、突然、手にした小物をポケットに入れて脱兎のごとく走り出しました。

そう、人生初の万引き、当然人生最後の万引きを犯してしまったのです。



続く