https://news.yahoo.co.jp/byline/nakayamayujiro/20170530-00071539/
太っている人にやりづらいのは採血だけでなく、点滴も同じです。点滴は採血をするような細い手の静脈に管を入れることが普通なので、脂肪に埋もれているとやっぱり入れづらいのです。
最低でも8万円以上は高くなってしまうのです。これは、上に書いた身長と体重のバランスよりもさらに太った人の場合です(BMI>35)。身長が165cmの人で95kg、170cmでは101kg以上になります。
正確に言えばここで値段が高くなるというのは、麻酔の料金が上がるのです。つまり国が「太っている人の麻酔は大変だから、お金を多めにつけますよ」と言っているという意味に他なりません。
では麻酔をかける際に、太っている人だと何が難しいのか。これは非常にたくさんあるのでキリがないのですが、一部をあげれば「麻酔のために使う、患者さんに入れる管を入れる難易度が上がる」ことが挙げられます。例えば全身麻酔であれば、口から気管という空気の通り道に人差し指くらいの太さのチューブを入れますが、これがまずとても入れづらい。さらに背中からいれる「硬膜外麻酔(こうまくがいますい)」と呼ばれる痛み止めの管は、痩せている人に比べるとはるかに入れづらいのです。痩せた人には6cmくらい刺せば入れられる管が、太っていると10cmくらい必要になることもあるほどです。
血管はとっても豊富な脂肪に包まれています。痩せている人であれば透けて見えるような血管も、太った人は厚い厚い脂肪の中を少しずつ切り進んで探さねばなりません。まるで「宝探し」のようなものです。当然血管を傷つける可能性も高まりますし、手術にかかる時間も長くなります。
それ以外にも、あらゆるところで脂肪がせり出してくるために胃や腸などの重要な臓器が見えづらくなります。見えづらいということは、傷つける危険が増すということです。
こんな理由で、外科医にとっても太った患者さんは手術が難しくなるのですね。筆者の感覚でいえば、30分や1時間は痩せた人より手術の時間がかかってしまいます。