白内障手術…「失敗しない名医」は「白内障以外が専門」という意外事実(幻冬舎ゴールドオンライン) - Yahoo!ニュース
白内障は80歳代になればほぼ100%の確率で発症する病気です。症例の多さゆえに治療技術の進歩が早く、いまや日帰りで受けられる安全な手術方法が確立されました。しかし、同じ白内障手術であっても「どこで受けても同じ」と言うわけではありません。最善・最良の手術を受けるためには、どうすれば良いのでしょうか。眼科医の筆者が解説します。
白内障は、世界では「失明原因No.1」の病気だが…
白内障は、80代以上では、ほぼ100%の人が罹患すると報告されているほど、誰もが発症する可能性のある病気です。世界では、約2000万人もの方が白内障によって失明しており、失明原因の第1の疾患となっています。一方、日本では、眼科医療の進歩によって失明に至る人は非常に少なくなっています。白内障手術の件数は年々増加しており、現在では年間約140万件超(厚生労働省平成29年社会医療診療行為別統計)と、数多く行われています。 白内障により一度濁ってしまった水晶体を、元の濁りのない状態に戻すことはできません。そのため、視界がかすんだりして見えにくくなり日常生活に支障が出てくるようになったら、根本治療としての手術を行います。手術では、濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズに交換します。白内障以外に目の病気や異常がなければ、通常は手術の翌日からよく見えるようになります。 ただ、手術後の経過には個人差があります。人工のレンズを入れると、水晶体の濁りが取り除かれ、光がよく通るようになります。そのために少しまぶしく感じるかもしれませんが、徐々に慣れてきます。 手術は日帰りで受けることができ、当日はゴーグルをつけてご自身で歩いて帰宅することが可能です。あとは、目をぬらさないようにするために、入浴を控えることとぐらいで、特別なことをする必要はありません。翌日は通院してもらいますが、その後はしばらくの間、炎症抑制・感染予防のための点眼薬を1日に4回つけるだけです。 ただ、白内障が進行してからの手術など、難しい手術だった場合には、回復までに時間がかかることがあります。 また、眼内レンズでの新しい見え方に慣れるまで時間がかかる方もいますが、最終的には、数日から数週間で、ほとんどの方がよく見えるようになります。焦らず、ゆっくり慣らしていきましょう。選んだレンズによっては、1日の大半を裸眼で過ごすことも可能です。メガネを新調する場合には、可能なら1ヵ月ほど時間を空けてから検討することをおすすめします。
同じ白内障手術でも「医師・病院選び」で大きな差
手術を受けることを決めたら、次に行うことは、医師・病院選びです。白内障手術を左右する要素はいくつかあります。まず患者さんの希望が非常に重要になります。白内障手術は、「どんな見え方になりたいか」「どういう生活を望んでいるのか」という患者さんの選択、それに医師のアドバイスや手術、両方が噛み合って初めて成功するものだからです。 白内障手術は今やたくさんの施設が行っていますし、手術をすれば視界がクリアになることは間違いありません。現代の白内障手術は、より安全に行われるのが前提であって、患者さんの希望を汲み取り、それに見合う技術をいかに提供できるかという時代になってきています。つまり、白内障手術はどこで、誰がやっても同じではないということです。 担当した医師の経験や技術、人柄までもが、白内障手術には反映されるといっても過言ではありません。本当に良い医師に出会うことができれば、患者さんが迷うことのないように、その医師が導いてくれるはずです。 世界保健機関(WHO)憲章にも書かれていることですが、健康とは、「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being /ウェルビーイング)にあること」をいいます。視機能が十分保たれているかどうかで、人生の充実度は大きく変わってきます。人生100年時代になり、寿命も長くなっているわけですから、年齢なりの変化を受け入れつつも、不便を感じる部分については我慢することなく、医療を積極的に活用するべきです。 幸い、加齢性白内障は進行がゆっくりであることがほとんどです。患者さんは医師や医療機関を選ぶ時間があります。慌てる必要はないのですから、じっくりと検討していただきたいと思います。
「最善・最良の手術」を受けるポイントは3つだが…
では、どうすれば自分にとっての「満足のいく目」を手に入れられるのでしょうか。 白内障手術で良い結果を得るためには、大きく3つのポイントが挙げられます。1つ目は医師の技術(手術の精度)、2つ目が手術を受けるタイミング、3つ目は眼内レンズ選びです。 白内障手術は、今やさまざまなところで行われています。ここ20年ぐらいの間に、その技術は大きく進歩しました。水晶体の代わりとなるレンズは多種多様なものから選べるようになり、手術や検査に用いる機器、メス、顕微鏡などの道具も、より精密で高度なものへと進化し続けています。このスピードについていくことは、眼科医でも大変なことです。常に新しい情報を取り入れ、技術を身につけ、手術の技を磨かなければ、時代の変化にはついていけません。何より、患者さんに最善・最良の手術を届けることができません。 白内障手術は、そうした医師の日々の研鑽や技術があり、さらに道具や機械の性能が関係し、入れ替える眼内レンズにも多数種類があって…と、多くの要素が絡み合う手術です。レンズの選び方によっては、乱視や老眼や近視も治せる可能性がありますし、手術を受けるタイミングも非常に重要です。
白内障手術の成否は「医師選び」が9割
手術の成否は「9割は医師選びで決まる」と言っていいくらい、執刀医と医療機関は慎重に選んでほしいと思います。正直なところ、執刀医による知識と技術の差は大いにあるといえます。 患者さんはあまりご存じないことが多いのですが、白内障手術は、濁ったレンズを取り除き、人工のレンズに入れ替えれば成功という評価になります。いい換えると「視界が明るくなれば合格点」ということです。こだわりのない患者さんは、見え方が多少希望通りにならなくても「こういうものか」と思うかもしれません。 通常、白内障手術は生涯に一度行えば十分ですから、患者さん側には医師の技術やレンズの使い勝手を比較する機会がありません。大きなトラブルがなければ、手術は成功となり、手術後の目で残りの人生を過ごすことになります。 日本には国民皆保険制度があり、白内障手術は保険診療で受けることができます。保険診療の範囲内であれば、どの医療機関で手術を受けても、手術にかかる費用は同じですし、建前上は標準的な治療が受けられるようになっています。ならば、あなたの目のこと、そして術後の生活や人生までを一緒に考えてくれ、提供し得る最善の手術をしてくれる医師を選ぶべきです。 保険でも最良の手術はできます。新しい目に生まれ変わるという意味でも、患者さんはその先の人生を医師に託すのですから、患者さんには「現時点でのベストな手術」を提供したいと僕は考えています。医療機関や執刀医を選ぶ際のポイントは次のような点です。 ●日常的に白内障手術をこなしているか ●新しい機械を積極的に導入しているかどうか ●医師が眼内レンズの知識を十分に有しているか、レンズの品ぞろえはどうか 眼科医とひと言でいっても、まぶた、角膜、結膜、ドライアイ、視神経、白内障、緑内障…、とさまざまな専門分野があります。また、手術を行う医師、手術をしない医師がいます。そのうち、白内障手術だけを行っている医師もいれば、僕のように最も難易度の高い網膜硝子体手術を専門とし、白内障手術と網膜硝子体手術を同時にこなす外科医もいます。
専門分野が「網膜硝子体」のドクターなら間違いナシ
一つはっきりと言えることは、網膜硝子体分野が専門のドクターは、白内障手術を行う医師のなかでも一線を画しています。眼科手術のなかでも最も神経を使う分野であり、白内障手術でトラブルが起きたときなどは、網膜硝子体手術の知識がないと対応できないことがあります。経歴を見たときに、網膜硝子体分野を専門に掲げているドクターは、実力も知識も十分にあるといえるのです。 開業までの2年間ほどフリーランスの眼科外科医でしたが、手術の依頼が途絶えませんでした。それはなぜかというと、やはり手術を安心して任せられる技術があり、難しい目の手術が必要になったときや、予期せぬトラブルが起きた場合に再手術を引き受けられる外科医が少ないからです。 中原 将光 中原眼科 院長