https://news.yahoo.co.jp/articles/3058d1480c87992eb87413af2cbe69dd104f9c27
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各都道府県の最高地点を見比べると、茨城県、埼玉県、千葉県の数値が高いことがわかる。逆に数値が低いのは、山梨県、長野県、滋賀県、奈良県などだ。 J-SHISのマップで関東平野の増幅率を見ていくと、数値がとくに高くなっている地域が、川沿いに帯状に広がっていることがわかる。具体的には荒川、中川の周辺地域、利根川の中流域だ。 「かつて、これらの河川は流域沿いに深い谷を作っていました。そこに、海水面の上昇によって海水が入り込み、入江を形成しました。そして、上流や海から運ばれた大量の泥や砂が入江に堆積していきました。それが “揺れやすい地盤” の正体です。多摩川も大きな河川ですが、こちらは軟弱な地盤が比較的、厚くない地域です。むしろ、鶴見川流域の増幅率のほうが大きくなっています」 埼玉県の増幅率最高地点は、大落古利根川と江戸川に挟まれた場所。茨城県の最高地点は、利根川の支流に面し、本流にも近い場所だ。東京都の最高地点は、荒川と中川の中間地点。神奈川県では、鶴見川が流れる新横浜駅の周辺に、増幅率が2.5を超えるエリアが広がっている。 「日本は、大きな河川の河口付近に街が発達してきた歴史があります。湿地帯が広がっていた濃尾平野の中心にある名古屋市周辺や、かつては海だった大阪市周辺も、増幅率が高い傾向にあります」
名古屋市では、名古屋駅の東側にある名古屋城周辺では、増幅率は低い。しかし駅の西側はほぼ全域で増幅率が高く、その範囲は岐阜県、三重県にまで広がっている。 大阪府でも、大阪城近辺の地盤は非常に強固だ。北端に大阪城があり、そこから南に向けて細長く伸びる上町台地の増幅率は、1.3~1.4とかなり低い。しかしその周辺は、増幅率が2.0を超える場所がほとんど。とくに台地の東側の城東区から、東大阪市、守口市、門真市にかけての増幅率は高い。 大阪府の最高地点は、大阪城から北東へわずか2kmの場所だ。また、淀川周辺の増幅率は総じて高く、それは京都府にまで続いている。京都府の最高地点は、宇治川(淀川の中流名)と桂川に挟まれた場所にある。 福岡県で目につくのは、たびたび氾濫を起こしてきた大河川・筑後川の周辺だ。その下流域に広がる筑紫平野では、大川市や柳川市、さらには佐賀県佐賀市なども含め、ほぼ全域で増幅率が高い。福岡県の最高地点である大刀洗町は、その筑後川の中流域にある。 北海道では、札幌市を含む石狩平野のほぼ全域で増幅率が高い。そのなかでも、札幌の北部、丘珠空港の北側周辺には増幅率が2.3を超えるエリアが広がっている。 ただし、表層地盤は地下30mほどで計算されたものであり、その増幅率がそのまま、建物の揺れに比例するというわけではない、と横山氏は説明する。
「表層地盤の増幅率は、一戸建てやそれほど大きくない建物には大きく影響します。しかし、大型の建造物は、表層は軟弱地盤でも、地下の強固な支持層に基礎が打ち込んであり、耐震構造などの対策が施されているので、受ける影響は変わってきます。 また、地震の周期にも左右されます。増幅率はあくまで表層地盤の評価であり、その場所で今後、大きな地震が起きる確率は含まれていない点にも注意は必要です」 主要駅のなかで増幅率がワースト1、2となったのは、富山駅と秋田駅。だが、J-SHISの「30年以内に震度6強以上となる確率」では、富山駅が3.5%、秋田駅は3.0%と、かなり低い数値になっている。ちなみに「30年以内に震度6強以上となる確率」は、東京駅が5.6%、大阪駅が14.2%、名古屋駅が32.3%だ。 J-SHISの「表層地盤」は今年更新され、関東地方のデータはほかの地方よりも精度の高いものになっているという。 「たとえば渋谷は、『谷』という字が示すように谷底で、地震に弱いと考えられていました。しかし今回の更新により実測データが用いられたことで、じつは意外と揺れにくい地盤であることがわかったのです」 渋谷駅の地盤増幅率は1.23。新宿駅の1.52、上野駅の1.4よりも低い数値なのだ。参考までに、都内のおもな駅の増幅率は以下のとおり。 ・新橋駅=1.52 ・品川駅=1.33 ・池袋駅=1.46 ・錦糸町駅=2.43 ・新小岩駅=2.42 ・立川駅=1.11 このデータを、我々はどう生かしたらよいのだろうか。 「まずは、自分が住む場所にどんなリスクがあるかを知ることです。地盤増幅率が1.6を超えるようなら、家の建て替えとまでは言いませんが、耐震補強について考えたほうがいいでしょう。とくに古い家に住んでいるならば、要注意です。それから、家具の転倒防止対策は必須です。 地震保険の加入も検討したほうがいいでしょう。もしこれから家を購入する予定があるなら、真っ先にこのデータを調べるべきです。微動探査という、ピンポイントで増幅率を調査できる方法もあります。揺れやすい地域の戸建て住宅であれば、耐震等級3の家づくりが望ましいです」 増幅率が低い=地震があっても揺れない、というわけではない。近くで大きな地震があれば、増幅率の低い地域でも被害を受けやすい。データを参考に、備えを怠らないことが、我々には重要なのだ。