私は
自らの母に
ご利益ありと考え
霊山の麓に
母と共に
観音様を見に行った。
5月。
鮮やかな山吹色のヤマブキが
繊細に枝垂れていた。
小さな御堂。
そこに鎮座する見目麗しい観音様。
否。
それは母そっくりの
丸々とした仏様ではないか。
私は
天来の閃きによって
悟りを得た。
愚かな男性諸君は
身近な母
あるいは女性を蔑み
どこか遥か昔に観音様のような女性が
いたに相違ないが
自らの母ではない
と決めつけていないか。
帰りに
路傍の椅子に端坐する
丸い母の姿。
春の陽光に照らされた御姿は
後光が差した観音様であった。
完
高橋作