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早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

定本宋斤句集 春12

2018-03-26 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集

定本宋斤句集  春 12

春 蝉    春蝉や木の間一条の雲照って
       春蝉に磴のぼる脚おとろへぬ
梅      梅遅く渡舟の水のにごり哉
       蓬々の一徑梅に遠きかな
     祝 知恩院門跡百二歳
白 梅    ことほぎてたゞ白梅を仰ぐ哉
桃の花    桃の花渉れる水ときめて往く 
     建武中興六百年記念 昭和九、三、一三 
櫻      建武むかし今日と咲くなる櫻かな
     長野艸々居
花      花に来て炬燵に膝を入るるかな

定本宋斤句集 春 11

2018-03-12 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集



定本宋斤句集 春 11


白 魚   くちびるに触るるを吸いぬ白魚汁
初 蝶   初蝶に逢ふてたのしもひとりゆく
蝶     款乃に岸は芦間の蝶々かな
      蝶を見ず峰入衆の白衣また
      片蝶の水に春き去りにけり
      
せせり蝶の道化の顔や放ちやる
猫の戀    うちの猫男となりし雨を往く
春の蝿 水仙の乱れに入りぬ春の蝿
鮎の子 鮎の子の寸餘が口を結びたる
若 鮎 若鮎のすゞしく全き春

定本宋斤句集 春 10

2018-03-04 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集



定本宋斤句集 春 10


        雀の宿
雀の宿   雀の宿の網行燈も巣なりけり
春の鳥   みな鳴いて梢に出たり春の鳥
鳥帰る   御僧の眉しづかなり鳥帰る

        松代車中
雲 雀   見凝らすや川中島に立つ雲雀
      この堤伏見京まで雲雀空

        琵琶湖船遊
鷺     巌の鳥鷺の外なき白き散る
龜鳴く   亀鳴くや柳重たく大おぼろ  
桜 貝   ひとの掌に羨みあるや櫻貝
春の貝   舌出して夢見ているや春の貝
蛤     蛤の閉じたる中のたつき哉
櫻     掘の下厨に引かれて蜷の水
諸 子   初諸子諦めたる口に紅ふくみ
櫻うぐひ  丹生三社詣でゞ泊まり花うぐひ
飯 蛸   飯蛸や紅梅すでに散り失せて
蝌 蚪   巴してコップの底の蝌蚪ふたつ


定本宋斤句集 早春社刊

定本宋斤句集 春 9

2018-03-03 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集



定本宋斤句集 春 9

壬生念佛   壬生念佛雲うらうらと淡きゆく
       十萬人のひとりに待てり 壬生念佛
般若寺    般若寺いでゝ廓の宵ともし
西吟忌    風こまやかに花に直ぐなり西吟忌

        淡路に嘉兵衛忌を修す
嘉兵衛忌   嘉兵衛忌の淡路島空雁北す
春の雁    吟行子みな仰ぎつる春の雁
       いく雁の雲には入らぬ羽打ち見ゆ
鶯      鶯を頂上に聴き山暑し
鳥の巣    鳥の巣にちるものありて水の上
燕      水村の空ひろく来し燕かな
 
         大原三千院
大 原    大原や山吹に飛ぶつばくろめ
       囀りや清冽顔に押しあつる
       囀りや花か木の芽か雨匂ふ
       貝の夢に鳥の囀り通ふかな
島交る    人はみな野良に啞なり鳥交る
 


定本宋斤句集 早春社刊