早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

定本宋斤句集  冬 1

2018-11-09 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集




定本宋斤句集  冬 1

立冬    古甌にけふのおもひや冬立つ日
初冬    初冬や窓邊ひと往く傘あかり
冬     母よりの手紙に冬のきたりけり
      てくさりの茂りに冬のきはまれぬ
      はこべらの来る冬越すと生えそめし
    淡路三熊狭山
      城の冬松かさ人形賣りにけり
      野の乾き冬の雲雀の低くゆく
      筏解いてその一本に冬の人
冬の果   眞夜の川寂々積みて冬果てぬ
     難波の綱引き
暖冬    冬あたゝかに百貫の縄龍となる
    御所拝観、小御所
冬ぬくし  良へ小御所と拝し冬ぬく
      冬ぬくゝ南天漂と疎なりけり
短日    短日の夜になれば往く句會あり
寒さ    川波に照らされて往く人寒し
小春日   小春日の二階の客を忘れ居り
霜月    捨て犬におろかなじまれ霜月夜
冬ざれ   冬ざれの野に焚く煙いくところ
夜半の冬  夜半の冬一聲鳩が鳴く時計
寒     霧の燈の寒ゆるみたる河の面
      寒晴れて川は鳶の日鷗の日
      宿墨に水を足しては寒二句
      鳥籠の空を重ねて韓日南
大寒    大寒の月西となり藪がしら
寒凪    足の上に來し落葉かな寒の凪
十二月   十二月地に日さぐもの風にあり    
      原稿紙字桁のウヘを年走る

定本宋斤句集  秋 11

2018-11-09 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集





定本宋斤句集  秋 11

加賀竹の浦
      上野にて繪の秋を見ず敗荷かな
末枯    末枯に日は去りながら極みけり
松茸    松茸C鰯市場今日しも秋見する
    地厚庵茸山へ同行の雁山、竹支等を共に」案内さる
      秋蘭を下り丸木橋茸山へ
柿     柿のころ客各々が故郷いふ  
      卓の上の柿のはだえに夜のしずか
      柿實るをみては故郷がほしきかな
無花果   無花果に秋を生まれて蝿稚き
萬年青の実 萬年青の実冬にまみれて肥ゆるかな
椿の実   明けわたり時化はさほど椿の實  
柘榴    枝ざくろそれも挿し添え秋の花
金柑    金柑の田舎なつかし日の寒さ
吾亦紅   そよぐなる地にかげのしつ吾亦紅
   萩の寺にて<2句>
萩     萩の中かげは裸に寒きかな
      萩の中往きもどりてや六日月
コスモス  コスモスを剪り貧れり病快き
      霽るゝ雨朝のぬけゆく秋ざくら
    栂 尾
紅葉    渓わたる紅葉秀の中寺の屋根    
      紅葉踏み石ふみ僧のうしろより
黄落    黄落を踏みゆくほどに冬らしも
木槿    子どもらにうれしき出水木槿垣
栗     烈火して一夜の驕り茸と栗
葡萄    葡萄山のあろじ静かに百姓す
木の實   木の實敷きて山は月日をこのままに
      夕べ踏む我が家のかどの木の實かな
柳ちる   池水に柳ちるなり燈のかぎり
鳥瓜    鳥瓜と覚えておかむ憐れ咲く

            秋 完