早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句 「早春」昭和三年二月 第五巻二号 俳句

2020-09-26 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句 「早春」昭和三年二月 第五巻二号

   寒中小景

しづかりや雪やれ蓮に降りぬるゝ

枯桐に鳥きて去って日南かな

無花果の寒さはくねる水のかけ

足の上に来し落ち葉かな寒の凪

霧の燈の寒ゆるみたる河の面

煮凍りや鰈の腹を鍋にさす

大寒や壺中の金魚水染めて

早春社神崎句会

たかたかと石段露の落ち葉かな

四五軒が交々焚きて千菜風呂

 編集所偶会

三日なる机の上の乱れかな

 打出句會

野の枯れの道に傾く鳥居哉

稲雀夕日ちりちり森にあり

 河音爽府君入営留別句會

入営の家や旦の掃き清め

地に木葉ちる入営を送りけり
 

宋斤の俳句 「早春」昭和三年一月 第五巻一号 俳句

2020-09-18 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句 「早春」昭和三年一月 第五巻一号 俳句

  安谷吟座

樹の中にちらつく鳥を冬としつ

折って来て柚の香めでつ冬はじめ

コスモスや門の往来のなほくれず

夜になるを散うするゝや時雨雲

夕暮れて一番さきに雛寝たり

暮れきってしまへば冬や水の音

墨磨って夜に音なし菊のはな

障子しめてものみな冬の蟲遠し

夜の冷に柿をむかれてゐたりけり

柚子の實がぬらしぬ道の邊に


  早春社本會納会

冬の蝶の晴れ見て人の立ちつくす

冬の蝶峡中しろく往きにけり

冬の蝶人のそびらにまとひけり

句座の眼の時折たれも草枯れに

門衛のあそぶ枯艸日南哉




宋斤の俳句 「早春」昭和三年一月 第五巻一号 年頭嘉儀

2020-09-18 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句 「早春」昭和三年一月 第五巻一号 年頭嘉儀

元朝や天の彩り地のしらべ

元旦やさめわたりたる門の草

明けてくる元日濱のまさごかな

佳き墨を矢立に沁まし年の春

初日いま青海のはての見えぬより

初日さすや千尋の底の魚屑に

初凪や細江にかゝる家の橋

御振りの山邊かすみと霽れにけり

おもひなく火桶にたる三日かな

初賣りの五六駄いさむ雪の坂

縫初や木綿ながらに匹を裁つ

ながめ居て楪葉にたつ紅の色

初山やふかき徑のあるを往く

井華水梅山茶花のかたわらに

才蔵は太夫の袖の小男よ

潮の水汲むや辰巳の橋の下


宋斤の俳句 「早春」昭和三年一月 第五巻一号 巻頭 韻

2020-09-18 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句 「早春」昭和三年一月 第五巻一号 巻頭 韻

その俳句詠みて眼に静かなるべし。
詠じて朗々たるべし。
想ひ、句のなかに満ちて、句の外にでざるを要す。
しかして、句の外に溢れ、漲るものは韻り。

宋斤の俳句 「早春」昭和二年十二月 第四巻六号 近詠 俳句

2020-09-06 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
 
宋斤の俳句 「早春」昭和二年十二月 第四巻六号 近詠 俳句

枯草之稱 近詠

草枯れの廣きはてなる鳥あがる

枯草や紅の去にたる茎の斑の

枯れくさの日南晴れ晴れ空の無し

村の音かれ草原を平らかに

枯れ草の水にぎやかや夕来たる

かれくさの岬に立ちて水の天

枯れはてゝ直ぐなる草に我ならぶ

草枯れて戸口のぞくはほの親たし

あめつちのやすむすがたに草の枯れ

草かれに臥てのけぞって雲は往く

枯草のなかにも萠ゆる浦の日々

霧ぬくゝ枯れたる草の潤へり

行き消ゆる人等にしげし草の枯れ

枯草を彼も往くなる背をぬくゝ

かるゝ草朝に稱へつ盧を出づる

  楓の宵  広島

久仁来て楓の宵の蚊を叩く

島山の夏にとまりて開く梟

欄に立てば句ができ青楓

茂る麓の方へ燈多し

滴りをうしろに立つに夜の蝉

葉桜を燈に見上げ散歩かな

  蘇芳君を訪ふ

門涼みそれが蘇芳でありし哉

夜をあるく軍港町の残暑哉

公園や水平のあるく夏の宵

  早春社十一月本會

裏坂や松に時雨の一草廬   

山茶花や冬の初風海へふく

  水曜会(尼崎)

家の間にちりこむばかりの柳かな

  打出句會

木犀や空十月のおぼろ月   

  市民俳句會

鵙はれて家内なかるゝ山の水

  初島俳句會

暮れかての雨の田の色山の色