祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています
定本宋斤句集 夏 5
蚊 火 乙訓の薮の小すそに蚊火の家
メーデー メーデーの大軍去って橋柳
ひと時の街の空気や労働祭
日 傘 汝が影の無くて日傘のまるさかな
汗 汗の衣を樹に干し入るや旅座敷
川 床 川床や燈もさらさらと宵浅き
納涼台 樟の葉の空にこまかな涼み台
青 簾 鮎宿のおぼえの二階青すだれ
温 泉 温泉の山のあるはむかしに掛簾
枕本簾透く日に残されぬ
巫子涼む簾や奈良はよきところ
蠅叩き 蠅叩き夜半の畳に有閑す
端 居 端居して主客故郷を等しくす
心 太 食うものに燈火が透く心太