早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

早春 「早春」昭和十七年五月 第三十三巻五号 近詠 俳句

2024-07-29 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
早春 「早春」昭和十七年五月 第三十三巻五号 近詠 俳句

 近詠
この堤伏見京まで雲雀空

蒔きしものかたゞ草の芽か箱の土

若竹を左右に登つて門の跡

春暁の雲いとけなし野をのぼる

藤棚の下に皓齒を遺し去る

海風を眞面の岡に花果つる

塀を來てはづれの小畑春のこる

書中句に戻るとありしわか葉窗

春蝉に磴のぼる脚おとろへぬ

林中に歩のとゞまらず夏近し

園丁に憑く蝶すでに暑きかな 

残鶯に渓下りるみち岐れたり

廣庭のこの家の子等がよめ菜摘む

瀧それは筧を落ちて若楓

敵機來待つなく仰ぐ松緑

空襲警報いとまは鳥に蘩蔞やる

陽炎におもふや戰地ジャバの土

街中や 棕櫚花咲きて醫の構へ

行春の砂を城址に蹴りて居つ

草の絮散りて城阜に小祠のみ

頬杖を佛したまひ若葉寒む

夏あさく低き燕の光り踏む

霞照る五月島山二里の沖

滴りの草を握れば拳濡る

舗道は映える雨水兵に夏らしも

五月山朝雲一朶ひろがりつ

薫風や里人楠氏の城を指す

















蘩蔞