宋斤の俳句 「早春」昭和二年十一月 第四巻五号 近詠
鯖蛤に冬が来るなる山雨かな
峠から渡舟も真下秋ひろし
旬のほかにあそばず空の土の秋
墓きざむ人と語らひ草もみじ
堀の外のもの賣うたひ秋のはれ
すがれ葉を花屋がしごく雛頭花
懸崖の一鉢しろし菊の中
子規忌 於曽根萩の寺 兼題「萩」
白萩の散るには早く咲き咲けり
つまさきにちりちり日透き萩たわゝ
良夜舟行 大物庵
あながまと出おくれゐたり月見船
ふかふかと水に音なし月見船
早春社十月本會
新月をもちて暮れるつ秋の雲
杉のそら鳴鳴き去って小雨かな
岸松に散りて来て白し秋の雲
早春社神戸例會
秋時雨遠くの尾根にふり見ゆる
早春社尼崎例會
渡り鳥野の音もなく暮れにけり
市民句會
秋の風野辻に石平かに
野の色の鳴子は空にひびきけり