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早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句 「早春」昭和二年十一月 第四巻五号 近詠 俳句

2020-08-25 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく

宋斤の俳句 「早春」昭和二年十一月 第四巻五号 近詠

鯖蛤に冬が来るなる山雨かな

峠から渡舟も真下秋ひろし

旬のほかにあそばず空の土の秋

墓きざむ人と語らひ草もみじ

堀の外のもの賣うたひ秋のはれ

すがれ葉を花屋がしごく雛頭花

懸崖の一鉢しろし菊の中

  子規忌 於曽根萩の寺  兼題「萩」

白萩の散るには早く咲き咲けり

つまさきにちりちり日透き萩たわゝ

  良夜舟行  大物庵

あながまと出おくれゐたり月見船

ふかふかと水に音なし月見船

  早春社十月本會

新月をもちて暮れるつ秋の雲

杉のそら鳴鳴き去って小雨かな

岸松に散りて来て白し秋の雲

  早春社神戸例會

秋時雨遠くの尾根にふり見ゆる

  早春社尼崎例會

渡り鳥野の音もなく暮れにけり

  市民句會

秋の風野辻に石平かに

野の色の鳴子は空にひびきけり

  

宋斤の俳句 「早春」昭和二年十月 第四巻四号 近詠 俳句

2020-08-23 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句 「早春」昭和二年十月 第四巻四号 近詠 俳句

近詠

風鐸に落つるは霧の雫かな

下の家はよべの嵐の栗や

句のほかにあそばす空の土の秋

墓きざむ人と語らひ草もみじ

堀の外のもの賣りうたひ秋のはれ

すがれ葉を花屋がしごく雌頭花

縣崖の一鉢しろし菊の中

  
  本興寺蟲干拝観 八月一日

寺涼し太しき廚の樞かな

塔中や深くたれたり青すだれ

 早春社九月本會

懸崖や海へ出あそぶとんぼ哉

丘の樹に燈のまどまどや夕月夜

 早春社初島例會

碪やんで窓の燈たゞに更くる哉

  攖寧抄 大物村事務所

天の川田園の橋高きかな    天の川

鶉 朝風の萱を分かるに鶉鳴く 鶉

 早春社櫻宮例會

草浅くなって紫苑の小庭哉

紫苑も燈に往来する蛾ありけり

溢れ蚊に小魚を焼く煙かな

 早春社尼崎例會

茣蓙敷いて要の花をうしろ哉

 早春社神戸例會

艸いきれ風にあるもの山帰来








  

宋斤の俳句 「早春」昭和二年九月 第四巻三号 近詠 俳句

2020-08-17 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句 「早春」昭和二年九月 第四巻三号 近詠 俳句

はつ秋の落葉はげしきさくら哉

むし十句旦夕になりにけり

野の家の四五より秋の水通し

水の底米がこぼれて朝の蟲

砧盤蟲のあがりて髭接し

ながながと消もて行くや秋の雲
 
あかつきを霧たちにけり萩がもと

八朔や朝の茄子に手をぬらす

夜あそびに蟲の畑をふんで行く

踊子の落ちて行くなる渡舟哉


 早春社七月例會
蓮池に街がしまひの家裏哉

蓮池へ蚊帳たれ下がり干されけり

 早春社北句會
据へに行く灸信心土用かな

簀の子より風ありそめて宵涼し

 早春社尼崎句會
野の一路湖見えてより明やすき

短夜や蛙鳴く江を竹責

 生駒山納涼句會
頂や秋ひしひしと日の匂ひ

なほもある上は艸山秋麓

 打出句会
深溝の病葉浮けて澄みにけり

 大物庵句會
新涼や夜目に花ある堤草


宋斤の俳句 「早春」昭和二年八月 第四巻二号 近詠 俳句

2020-08-14 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句 「早春」昭和二年八月 第四巻二号 近詠 俳句

夜の海に西瓜食わんと漕ぎ出でぬ

投げ花火して人聲や原ひろく

煙硝の匂ひはあまし花火殼

陶床のあつさあつめて芝の上

雀来た蜂来てあつし石灯籠

みちみちのあつさにこまかや涼み䑓

渺々の水前にして蝉の晝

蝉涼し泉湧く邊は夏わらび

草いきれ柑子の花のちりながら

  早春社六月本會
夏木立庭となりきて梅楓

寺の庭夏木立して雀哉

川下や更けて何くむ橋涼み

  早春社七月本會
村中に海透き雲の峰低し

泊船に夕飼のけむり喜雨はげし

  打出句會
橘の花の匂ひに夏かすみ

瀧の音遠く老鶯頻りけり

  夏夜句座
宮の燈をうしろに蚊火の一二軒

松風や朝の蚊やりの焚きくづれ

  紅詠社

桑畑の中沈む月通し鴨


  

宋斤の俳句 「早春」昭和二年七月 第四巻一号 近詠 俳句

2020-08-10 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句 「早春」昭和二年六月 第四巻一号 近詠

瀧の宮明け易き燈の繼がれけり

唇をうつし泉を吸いにけり

寺縁に寝て蟬暑し蟬涼し

百合あまり高き匂いや蛇のあと

夏遭摘まれし高き蝶々かな

羽少し尻にはみ出し金亀蟲

夏行寺池に金魚の一つ浮く

  太融寺句座
夏の空寺の大樹は銀杏かな
 
  乾丘會主催三句集
杉の花雲のびて来て雨ふれり

  池田牡丹座
山池や雨のにごりにむらつつじ

寺しづか楓の花に山も風

  川上規允氏送別句會
九鬼の浦は南風吹いて規允ある

  早春社五月句會
かきつばた腐つる日南の羽蟻かな

晝たれて蝶蜂来たる青すだれ

  早春社六月句會
蚊やりして人々門に入江町

あじさいの花月にあり時鳥

百合の香の漲ぎるほどに人を夜を

  早春社島之内例會
あかつきや水車の水に花あやめ

短夜や浦さして行く五位の聲

  紅詠社四月會
舷の手に散る夜のおそざくら

  島道素石氏来庵句座
つばくらも夏になりたる袷かな