宋斤の俳句「早春」昭和十九年一月 第三十七巻一号 近詠 俳句
近詠
勝ちぬかん元日に思ふこの一事
初鳥その空さらに飛機渡る
退院
我家の朝の日南はたとへなき
冬の日は川面を二階障子照る
凍つる夜や葛湯の匕を舌に受く
病めば
ゆたんぽが足にさからひだぶだぶす
隙間風病みてわが鼻たかきかな
長野同人より眞綿着を贈られて
てんとう蟲の如くに著よと背藍綿
大根煮夜陰の湯気を吸ひにけり
冬の部屋深紅の花が一輪す
石叩霜の筏を轉々と
冬のはれ鳶川に來て大いなる
川向ひ住まず冬燈幾夜亡く
枯れ草のさまも見たしと野を思ふ
熱あれば蕪のあつちやら舌によき
生駒より六甲すこし眠ろかな
年の内の燈圍ひくらすかな
早春本句會納會 十二月五日 於 本社
題「蝋梅」即景「冬の橋」
人ひとゝき舟ひとゝきの冬の橋
冬の橋に忙人の背を見送りつ
冬の橋孤なり夕照塔にあり
冬の橋渡りて島の淺きかな
水取り (二月堂にて)
凍泥に修二會へ参ゐる杉の下
村繼ぎに運ばるゝ霜の御松明
御松明卍字火の粉の巴なす
お水取り昨日に霜のお差懸
矢車
矢車の夜の空はのと舞ひにけり
矢車のかげ地にあるは舞ひにけり
矢車の音をきゝつゝ讀みすゝむ
昭和十八年の早春回顧より
一年は捷ちて過ぎたり初仕事
初東安易を蹴つて拜しけり
初日野にかゞやかし若者ら
近詠
勝ちぬかん元日に思ふこの一事
初鳥その空さらに飛機渡る
退院
我家の朝の日南はたとへなき
冬の日は川面を二階障子照る
凍つる夜や葛湯の匕を舌に受く
病めば
ゆたんぽが足にさからひだぶだぶす
隙間風病みてわが鼻たかきかな
長野同人より眞綿着を贈られて
てんとう蟲の如くに著よと背藍綿
大根煮夜陰の湯気を吸ひにけり
冬の部屋深紅の花が一輪す
石叩霜の筏を轉々と
冬のはれ鳶川に來て大いなる
川向ひ住まず冬燈幾夜亡く
枯れ草のさまも見たしと野を思ふ
熱あれば蕪のあつちやら舌によき
生駒より六甲すこし眠ろかな
年の内の燈圍ひくらすかな
早春本句會納會 十二月五日 於 本社
題「蝋梅」即景「冬の橋」
人ひとゝき舟ひとゝきの冬の橋
冬の橋に忙人の背を見送りつ
冬の橋孤なり夕照塔にあり
冬の橋渡りて島の淺きかな
水取り (二月堂にて)
凍泥に修二會へ参ゐる杉の下
村繼ぎに運ばるゝ霜の御松明
御松明卍字火の粉の巴なす
お水取り昨日に霜のお差懸
矢車
矢車の夜の空はのと舞ひにけり
矢車のかげ地にあるは舞ひにけり
矢車の音をきゝつゝ讀みすゝむ
昭和十八年の早春回顧より
一年は捷ちて過ぎたり初仕事
初東安易を蹴つて拜しけり
初日野にかゞやかし若者ら
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