早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句 「早春」昭和二年五月 第三巻五号 近詠 

2020-07-31 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句 「早春」昭和十六年五月 第三巻五号 近詠

梨のはな散る爪さきの潦 にわたずみ

魚棚や水をおぼろに烏賊の墨

水彼方海市は知らず夢の雨

鹿の子の刈生の崖に腰たかく

花過ぎてみなかみ月の涼しけれ

野や水や卯の花腐し霽れにけり

行く春や梢よりでて雲しろし

早春社四月本會 兼題「朧」 席題「花の草」

若草に靄の流れて夕すすむ

夜に染めて燈れり春の草

峰立ちて空の朧に星散れり

匂ふ夜の朧を滑る舟長し

櫻宮例會

あたゝかに乾く落ち葉の手水鉢

白藤例會

水上へ鳥ゆくばかり麓かな

北例會

山の空星浮き来る雲雀なく


宋斤の俳句 「早春」昭和二年四月 第三巻四号 句会

2020-07-30 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
早春社三月句会  兼題 「桃の花」 席題 「雀の子」「シャボン玉」

桃落花歩けば裾に移りけり

島之内句会

東の空の寒きに伏しおがみ

北例会

南天の實や借蔵へ庭を往く

神戸例会

春光に枯れしげりたる芒哉

白藤句会

寒菊のゆれゐて外は庭廣し

日の藪のそこら去来し鳥交る

安治川例会

汀なる春の霞の久しけれ

三月例会

囀りや霽れて帆の往く沖の方

打出句会(灘)

囀りや籠や駕屋休ませ駕の中


お知らせ:『早春俳句集」第1号 永尾宋斤選 直原林山書伯装幀 六月刊行 一圓五十銭 

「早春」1100号の歩み 令和二年7月 2020

2020-07-27 | 早春社のあゆみ
早春1100号のあゆみ

祖父 永尾宋斤が大正十五年二月に創刊した「早春」 
今年二月 創刊九十五周年を迎え、七月通巻1100号を発刊しました。






大正15年2月永尾宋斤早春社を結成。
  創立大会を大阪梅田露の天神社で開催し、
  月刊俳句雑誌「早春」を創刊発行する。
昭和9年3月子規句碑を曽根萩の寺に建之。
昭和19年3月第二次俳誌統合により早春も三月号以って停刊のやむなきに至る。
昭和19年5月主宰永尾宋斤永眠。
昭和21年B月神田南畝早春主宰となり、
  復刊記念大会を箕面市竜安寺にて開き、
  翌9月復刊第一号を発行する。
昭和24年11月「定本宋斤遺句集」を早春社より発行。
昭和26年11月宋斤句碑を豊中市東光院、萩の寺に建之。
昭和27年10月「早春句集第一輯。季題別選集」発行。
昭和30年12月「早春句集第二輯・作家選集」発行。
昭和31年5月宋斤十=同患に当り宋斤墓碑を萩の寺に建之。
昭和34年2月関西俳句雑誌連盟が結成され、これに加入して現在に至る。
昭和37年3月早春四百号記念大会を今橋クラブにて開催。
昭和40年9月「早春作家選集・第四輯」発行。
昭和43年11月宋斤句碑を尼崎南長洲八幡宮に建之。
昭和46年5月早春五百号記念大会を池田の不死王閣にて開催。
昭和48年1月「早春作家選集・第五輯」発行。
昭和48年6月宋斤句碑を大和室生の松平華館庭に建之。
昭和50年11月早春創官五十周年記念祝賀会を池田市民会館にて開催。
昭和50年5月南畝米寿祝賀会を池田市民会館にて開催。
昭和50年5月「俳人永尾宋斤」藤本阿南著発行。
昭和50年2月主宰神田南畝永眠。
昭和58年3月早春社主宰に藤本阿南就任。
昭和58年11月阿南主宰就任披露祝賀会を大阪中津の東洋ホテルにて開催。
昭和60年9月早春創立六十周年記念祝賀会を東洋ホテルにて開催。
昭和60年12月「早春作家選集・第六集」発行。
昭和63年5月主宰藤本阿南急逝。
昭和63年6月岡本香石早春主宰就任。
平成元年2月宋斤祖師生誕百年、岡本香石主宰就任祝賀会を東洋ホテルにて行う。
平成4年3月淡路国渭寺に早春誌友十三名の句碑を建之。
平成4年9月主宰香石健康を害し、岡野洞之主宰就任。
平成7年7月「早春作家選集第七集」七十周年記念式を行う。
平成17年7月「早春作家選集第八集」発行。
  八十周年及通号九二○号記念式を行う。
平成17年9月顧問直原玉青永眠。
平成20年1月主宰岡野洞之健康を害し渡辺乾魚副主宰就任。
平成21年1月前主宰感謝新主宰披露祝賀会を伊丹シティホテルにて開催。
  遮辺乾魚主宰就任。
平成22年11月元主宰岡本香石永眠。
平成24年1月「早春作家選集第九集」発行。
  早春1000号記念祝賀会を伊丹シティホテル
平成29年2月石田輝海代行就任
平成29年4月主宰渡辺乾魚永眠
平成30年7月南杏子主宰就任
平成31年1月前主宰代行石田輝海感謝、新主宰南杏子披露
  祝賀会を伊丹シティホテルにて開催
令和2年1月早春社HP開設
令和2年2月早春創刊95周年
令和2年7月「早春作家選集・第十集」発行
  創刊95周年及通巻1100号記念




早春社 令和二年二月創刊95周年記念 「早春作家選集 第十集」刊行

2020-07-18 | 早春社のあゆみ
早春社から 令和二年二月創刊95周年記念して 「早春作家選集 第十集」が刊行されました。


 早春は、大正十五年二月永尾宋斤祖師に因って創刊されました。
これまで歴代主宰神田南畝・藤本阿南・岡本香石・岡野洞之・渡辺乾魚各先生方が継承されて来られました。
祖師の掲げた三是「自然讃仰」「郷土敬愛」「人生未到」の精神を守り、今日まで早春作家の誇りを持ち伝統を引き継いで参りました。
 平成二十四年、早春一千号を記念に「第九集」を刊行いたしました。
その後社会情勢も推移し、早春作家の高齢化も進み、そこで百周年を待たず、五年前倒しという結論となりました。
然り、令和元年八月、プロジェクト立ち上げ工程を進めて来ました。
 以て、令和二年七月、九十五周年を記念に早春作家選集「第十集」を上梓する運びとなりました。
同じく七月には、通号一千百号ともなり、この上ない二重の喜びでございます。
これは偏に先輩の先生方、会員一同の熱意の結集であります。
ご家族の賛同も賜り心より感謝申し上げます。
今後百周年に向かって舵を確と取ってまいる所存でございますので、ご理解とご協力を切にお願い致します。
最後になりましたが、企画並びに編纂にあたられた特別委員・編集委員・青木印刷各位に深く御礼申し上げます。

  令和二年七月吉日
                                南 杏子


祖師 永尾宋斤 大正15年2月〜昭和19年5月永眠

天朝や天のいろどり地のしらべ
早春や枯れたるものに光あり
雲の峰きそふと芭蕉を巨木とし
新涼や氏家芭蕉を巨木とし
古日記閉じたり生きる日を餘し

二代主宰 神田南畝 昭和21年8月〜昭和58年2月

歳旦やうべ天地に盈つ大日
牡丹の奕奕蝶をつつみける
山脈は萬緑こぞり潔し
かなかなや山は安堵に暮れ初むる
寒濤の迅忌き一つを見放さず

三代主宰 藤本阿南 昭和58年3月〜昭和63年5月

はるかなるもののよろしき初景色
ふるさとの霞に仏ごころかな
行水のわが胸板へ星飛べり
能衣裳大きく展ず菊の燈に
星霜のままの冬枯れ大和寺

四代主宰 岡本香石 昭和63年6月〜平成4年8月

山稜は染をひろげて初日の出
硯海に余寒の水をつぎたせり
夏蝶が孤独まぎらす石佛
秋鯖や漁夫ははがねの皺きざむ
枯れを行く山頭火にはなりきれず

五代主宰 岡野洞之 平成4年9月〜平成20年12月

元朝や国道まっすぐにして広し
棟梁の弾く墨糸春の昼
ぼうたんの散るも運命の遅速かな
石榴爆ぜ笑ひ佛が口開く
燈台に風来て縋る冬北斗

六代主宰  渡辺乾魚 平成21年1月〜平成29年2月 

神苑を蔽ふすなはちはち初明かり
早春や目を閉じあたり美しき
蝸牛いづくへ行くも夕澄める
十三夜にはかに動く雲のあり
巨大なる雪嶺ただ燦遠伊吹

元顧問 直原玉青 平成17年9月 永眠   『早春』の表紙を飾っている南画の第一人者。 禅僧。

句画禅の寺とす願ひ初読経
一亭に春の眺望禅寺背に
水牛を遊ばし童子昼寝せる
秋山に画館禅堂句碑の道
画僧もて継ぐべき牡丹寒肥す

師の一語  南 杏子  主宰 平成三十年七月〜

初比叡山襞しるき縹色
千体を飾る雛に哀史あり
咲き満ちて花は命を輝かす
新茶濃く淹れ正心を貫けり
縞馬の縞に涼しさもらひけり
美ら海へいろとりどりの夏帽子
箱庭に故山の見ゆる水車小屋
敗戦忌母のゐそうな美容院
残暑なほ反りをゆるめぬ太鼓橋
だまし船持つ指燈下親しめり
大空の端ふくらまし鶴来たる
今日と言ふ一ㇳ日に感謝茸飯
願掛けの草鞋に籾のひとつあり
山村に生まれて老いて菜種蒔く
極月や忘れてならぬ師の一語

薪能  石田輝海 代行 平成二十九年二月〜平成三十年七月

注連縄で結ぶ絆の夫婦岩
仮設地に言訳ほどの注連飾
垂直に飛び立つ春のオスプレイ
付いて来し子猫に餌を与へけり
碁敵に新茶の封を切りにけり
春眠の五線はみだす高鼾
薪能ゆるりと動くシテの影
羅に包む女将の胸の内
サングラス外して父に戻りけり
睡蓮や泥に咲けども仏花
炎天に令和の影の蹲る
満月や男小泉新次郎
爽やかやオバマの折し鶴一羽
犬猿の仲を取り持つ温め酒
短日の昼を灯して骨董屋




宋斤の俳句 「早春」昭和二年四月 第三巻四号 近詠 江口吟行

2020-07-07 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句 「早春」昭和十六年四月 第三巻四号 近詠 俳句

囀や清冽顔に押しあつる

燕の来てうれさや糞おとす

枇杷の花くすみ枯れたる長閑哉

野火飛びて石工の足にふまれけり

春雨の山はるゝより棚かすみ


朔宵篇

入濱のすたれに海蘿丈にけり

ほつれより水が筋引く種俵

江口吟行 
 吹田 高浜神社ー伊藤友禅工場ー首洗池ー小女郎稲荷ー瑞光寺ー江口の森ー君の堂ー江口の渡しー淀川堤ー魚満楼にて句会ー双口町 

吟行や朝の心に東風受くる

友禅のこの家しるべに春の旅

野の道の池由来あり柳芽を

雲雀なほ空に寒しや雲もなく

由縁り来し江口の空や鳥雲に

みなみなが春寒き塚をなつかしみ

渡し舟までぞろぞろ歩き草若し

我かけのうつれば藻艸生ふ見ゆる

草萠を踏み離れ来て街の風