早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

定本宋斤句集  夏 8

2018-07-22 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集





定本宋斤句集  夏 8

枝 蛙  萬葉に真昼風なく枝蛙
蛍    螢の飛ぶに歩るきて身のはなし
蛍の夜  蛍の夜近思の情けに女あり
夏の蝶  夏の蝶ゆきずりびとに失せにけり
蝸 牛  石竹の土に蝸牛の乾きかな
蟻    膝のぼるひもじき蟻と思ひけり
班 猫  班猫によきほどついて渓くだる
紙 魚  閃力紙百年紙魚に犯されず
金龜虫  羽少し尻にはみ出し金龜蟲
五器かぶり 大所帯夜はさかんに五器かぶり

定本宋斤句集  夏 7

2018-07-20 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集





定本宋斤句集  夏 7

花 水  花水女は作りほくろかな
    住吉御田植神事 (二句)
御田植  降る雨を植女花笠美目透きて
     夜も日笠御田戻って廓練り
祇園舎  祇園舎や攝待水に朱ヶの椀     
楠公忌  楠公忌五幾の若葉に降る雨●
     河内路の樟若葉なり菊水忌
茅の輪  濱砂をあるいて潜る茅の輪かな
    博労町難波神社の御所氏子となる
夏 祭  移りきて今日の祭りの氏子かな
夏 行  夏行寺池に金魚の一つ浮く
夏の島  月の出へ雲掻く翼夏の鳥
    保津を下りて
老 鶯  老鶯や保津しばらくは水緩く
時 鳥  時鳥去って百鳥朝となる
鷸    鷭鳴くや巨椋の蓮におくれ来て 
鳥の子  父と来る日母と来る日の鴉の子
     口開いて雨を食いける鳥の子
青 鷺  鷺飛んで雨は漁翁に霽れにけり
剖葦鳥  剖葦鳥や船の中にも阿迦の波
蝠 蝙  蝙蝠の寒し今宵の星すくな
鹿の子  鹿の子の雨踏んでゐる蹄かな
蝉    山中や晝の湯殿に蝉涼し


定本宋斤句集  夏 6

2018-07-20 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集





定本宋斤句集  夏 6

蘭 湯  蘭湯に海のあかるさましにけり
生 節  節生の木目みだしぬ杉の箸
葛 餅  葛餅を食って原稿せはしけれ
     鮓をおす女に山は夕立かな
   彌助鮓屋に憩ふ
     鮎鮓や暖簾くぐって裏は山
     深うみにほどけ沈むや酢の飯
柳川鍋  柳川や諸事ちんまりと燈の下に
甘 酒  鉾町やとある凹みに甘酒屋
ソーダ水 ソーダ水噴散眉を涼しうす
籐椅子  籐椅子に見て船住ひ具さ哉
磁 枕  寝もやらず膝邊つめたき磁枕哉
浴 衣  浴衣着てもたるる橋の片てすり
竹 伐  温泉の欄を竹伐る人のうかゞひね
土用灸  土用灸人が教ふる枇杷療法
走馬灯  藍染の宵より吊す走馬灯
裸    我が腕の膏薬無念裸かな