早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

早春 「早春」昭和十七年 四月 第三十三巻四号 近詠 俳句

2024-03-13 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
早春 「早春」昭和十七年四月 第三十三巻四号 近詠 俳句

近詠

暁け霞八十八百嶋に晴るる今

日の本の東風よ同族同祖聴け

ものゝのみな春なり畔を入學兒

一堂を僉り萍生ひ初る

野戻りの猫柳持つ手の誇り

春堤工場ぬちに響く音

大東亜ついづ生まるゝ風ひかる

インドネシア舊土に安く春南風

摘み草の野は寒かりし胼藥

摩耶昆布すみれ咲くべに垂らし賣る

鶯の琴花の莟を啄ふ隙に

薄風邪の癒らで雁を送る夕

春晝や落花を食って魚肥ゆ

竹秋の伏見詠みたる古句の味

花の夜やべたと手に貼る淺井膏

鳥交む大地に細雨にしとりとし

雲見る眼地に落したる陽炎へる

菜飯炊く胡蘿萄もよし骰子刻み

小鏡餅の水餅をしつ黴を抓く

奇しきまで野井の澄見よう龍天に

白椿ふかく來て庭のよろしさは

あかつきの林檣飛べり島の蝶

街ぬくゝ子等が舗道を描き汚し

植うる蒔く猫額の土餘すなく

彳めば鮠の散る水花の冷

憚らず雲に嚏す松手入れ

遮るはなく草萌に下春かな

   春の地理
照りくもり春の細瀧ゆれにけり

鳥籠のかゝれる軒に春の瀧

ともしびは遠く花より春の瀧

    葉櫻
葉さくらの丘まで來るや海猫は

葉櫻に村と離れて住める哉

葉櫻を砂ざらざらのベンチ哉

   二葉會十二月例會
事始め厨何かと人の數

冬の山夕深まりて檪なる

   二葉會一月例會
橙の掌にあまりたろさかな

寒椿野ぶかに棲みて日洽う












早春 大正十五年二月創刊号

2024-03-13 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく

『早春 大正十五年二月創刊号の 早春の句』を 改めて 紹介します。

早春の野にかげもてる小家かな

早春の凪ぎなる檪枯れ林

早春や鴛鴦たへずゐづくろひ

早春や家あり魞に人も見ゆ

早春の水面およげるこゑび哉

早春や野の艸すでに昂りて

早春や紫紺つばきの丸ろき葉の

早春や水仙咲くを富として

早春や枯れたるものに光あり

    早春や枯れたるものに光あり  
    この句は 早春社が 七回忌に 句碑に刻み 豊中 曽根の萩の寺に建立されています。

祖父宋斤の俳句は 手元に残された創刊からの「早春」から 一応全て拾い出し 現在リスト作成中です。
冊子が 途中 抜けている年もあり 古い同人のご家族に問い合わせしています。

今後は 『宋斤の俳語』 を 載せていきたいと思います。

早春は 大正15年(1925年)2月創刊 来年2025年には創刊100周年を迎え この3月通号1144号を迎えました。