早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

定本宋斤句集 冬 4

2019-01-21 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集






定本宋斤句集 冬 4

炭斗    鳥府も机邉の一つ句屑拾つ
懐爐灰   懐爐灰の善悪談んず老ひけらし
         脚痛
湯婆    あるときは湯婆も憎しまゝならぬ
         退院
日南ぼこ  我が家の朝の日南はたとへなき
         長野同人より真綿着を贈られて
綿     てんとう虫のごとくに著よと背藍綿
焚火    旅なれの脚が焚火の端またぐ
足袋    川晴れし二階に足袋をつゞる哉
大根煮   大根煮夜陰の湯気を吸いにけり
亥の子餅  津の国の能勢人が説ふ亥の子餅
干菜    干菜して人また住めり庭の奥
煮凝り   煮凝りや鰈の腹を鍋に剝ぐ
牛鍋    一人子のひとり平鍋食ふべけり
          北摂にて
兎汁    兎汁今夜は去ねぬ句會らし
狸汁    狸汁や燈に暌く街の數奇料理
牡蠣船   牡蠣船の屋根に 一 鉢 萬年青かな
      牡蠣船の燈から川下百船す
葱汁    根深汁うごけぬ病ひにじり出て
マスク   マスク外して使ひの言葉確かなり
隙間風   隙間風病みてわが鼻たかきかな
風邪    川舟の焚く火が寒し風邪ごもり

定本宋斤句集 冬 3

2019-01-19 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集




定本宋斤句集 冬 3

寒風    寒風や野奥の障子ほの燈る
北風    籠の鶸貧食しては北風に怖づ
虎落笛   虎落笛思ひ出すこと旅にあり
冬野    莖青きものこそ冬の野はぬくし
枯原    枯原の石に母なり乳飲ます
氷柱    大氷柱まどうに添水米を搗く
寒の水   寒の水龍の口より練り落つる
凍     凍つる夜や葛湯の匙を舌に受く
      友の死を聞く再ならず冬夜の燈
      蝋涙の手にこゞりけり瀧の宮
         能楽、室生重英の藤戸を観る
      凍つさまに藤戸の母が泣き跼み
         庚申昆布はその夜誰れ彼れに頒ち與へて福ありと即ち
         夜こんぶをよろこぶに通わせての意なり
火桶    夜ろこんぶ火桶まどひの爪割きに
      窮鳥を眼に弄び火桶かな
炭     聞ゆるは苅田に炭を切れるなり
炭團    灰剥いて朝の炭團を劬はりぬ


早春や枯れたるものに光あり 宋斤

2019-01-01 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集

俳句雑誌「早春」を大正15年2月に発刊した祖父宋斤の
残された二つの句集と俳誌「早春」創刊号から 宋斤の俳句と巻頭の俳語録
また宋斤の作品 書簡 記事 句碑など関係資料などを紹介しています。

平成最後の新年は素晴らしい日の出とともに始まりました。
昨秋主宰になられた南杏子様のもと「早春」は1082号を迎えました。

自然讃仰 郷土敬愛 人生未到 を三是とした祖父宋斤の俳句の紹介を進めます

 平成31年1月1日                       永尾 東