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定本宋斤句集 冬 4
炭斗 鳥府も机邉の一つ句屑拾つ
懐爐灰 懐爐灰の善悪談んず老ひけらし
脚痛
湯婆 あるときは湯婆も憎しまゝならぬ
退院
日南ぼこ 我が家の朝の日南はたとへなき
長野同人より真綿着を贈られて
綿 てんとう虫のごとくに著よと背藍綿
焚火 旅なれの脚が焚火の端またぐ
足袋 川晴れし二階に足袋をつゞる哉
大根煮 大根煮夜陰の湯気を吸いにけり
亥の子餅 津の国の能勢人が説ふ亥の子餅
干菜 干菜して人また住めり庭の奥
煮凝り 煮凝りや鰈の腹を鍋に剝ぐ
牛鍋 一人子のひとり平鍋食ふべけり
北摂にて
兎汁 兎汁今夜は去ねぬ句會らし
狸汁 狸汁や燈に暌く街の數奇料理
牡蠣船 牡蠣船の屋根に 一 鉢 萬年青かな
牡蠣船の燈から川下百船す
葱汁 根深汁うごけぬ病ひにじり出て
マスク マスク外して使ひの言葉確かなり
隙間風 隙間風病みてわが鼻たかきかな
風邪 川舟の焚く火が寒し風邪ごもり