早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

定本宋斤句集  秋 10

2018-10-27 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集




定本宋斤句集  秋 10

草の架   草の架散りて城阜に小祠のみ
月見草   垣の外は夜の若者月見草
芒     秋知れど猪名野の芒呉れしかな
芒     仁和寺をわきみちへ出て古すすき
蕎     蝶いまだ凍てずも蕎麦の
龍謄    龍謄や明けてうするゝ水の音
女郎花   野の寺の遠く浮かびて女郎花
     眼病
野菊    朝のほど視力うれしき野菊かな
野菊    咲き張りて出水のぞける野菊かな
草の香   草の香に世の更けきたる一間かな
草の花   草の花束道露を拂ひけり
草紅葉   墓きざむ人と語らひ草もみじ
零餘子   嘘でなき程に零余子よ棧庭は
零餘子   採るほどもなき零余子なり桐を巻く
     加賀竹の浦
松露    旅に居る採りし松露が机上かな
破芭蕉   義仲寺の掘伸ばす芭蕉破れけん

定本宋斤句集  秋 9

2018-10-10 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集





定本宋斤句集  秋 9

貫青の叔母の家に冬尊と三人往きて世話になる
竹の春   祭客となりて小庭の竹の春
      竹春となる粧ひを磧みづ
菊     菊剪れば花にあつまる勢ひあり
    木津川しもの渡船場にて
      渡船場の地蔵縁日夜店菊
    家前に菊を購う
      菊を見る目なければ白そ快さ
      今朝露に値にさげすみし菊ながら
残菊    残菊のさきほつれたるながながし
稲     稲を知らず工場の煤けすゞめかな
畦豆    畦豆に佇ちて故郷をいふ人ぞ
薯     病めば土のむやみに戀し薯の土
    上京野火止あたり
芋     武蔵野や芋枯れにまた一丘す
黍   道秋や黍のかなたの夕炊き
唐黍    唐きびの風失はでに日のほむら
南瓜    夕人のくるをはばみて南瓜蔓