定本宋斤句集 秋 10
草の架 草の架散りて城阜に小祠のみ
月見草 垣の外は夜の若者月見草
芒 秋知れど猪名野の芒呉れしかな
芒 仁和寺をわきみちへ出て古すすき
蕎 蝶いまだ凍てずも蕎麦の
龍謄 龍謄や明けてうするゝ水の音
女郎花 野の寺の遠く浮かびて女郎花
眼病
野菊 朝のほど視力うれしき野菊かな
野菊 咲き張りて出水のぞける野菊かな
草の香 草の香に世の更けきたる一間かな
草の花 草の花束道露を拂ひけり
草紅葉 墓きざむ人と語らひ草もみじ
零餘子 嘘でなき程に零余子よ棧庭は
零餘子 採るほどもなき零余子なり桐を巻く
加賀竹の浦
松露 旅に居る採りし松露が机上かな
破芭蕉 義仲寺の掘伸ばす芭蕉破れけん